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文献詳細

雑誌文献

臨床外科61巻7号

2006年07月発行

外科学温故知新・12

緩和医療

著者: 濱辺豊1

所属機関: 1淀川キリスト教病院外科

ページ範囲:P.949 - P.954

文献概要

1 はじめに

 緩和医療について考えているときに,胃癌で術後再発した患者が「再発したら家族にはすべて隠さずに話そうと決めていたし,また,この病院で手術をしてもらったのはホスピスがあるので再発したときには優先して診てくれると考えたから」と言われたのを印象深く思い出した.癌は死亡原因の第一位で,年間30万人以上が死亡しており,最期の時を迎えて肉体的・精神的苦痛から解放するための緩和医療については避けては通れない問題である.最近,緩和ケア病棟で医療を受ける機会が多くなったが,患者は手術を受け,さらに外来で長期に経過を診てきた外科医に信頼を寄せているため,再発後のケアも希望することも多いと思われる.

 1990年,WHOが発行した“Cancer Pain Relief and Palliative Care”1)では,癌医療における終末期医療を含む新しい医療の考えを緩和医療と呼ぶように提言しており,このなかで「緩和医療とは,治癒を目指した治療が有効でなくなった患者に対する積極的な全人的ケアである.痛みやそのほかの症状のコントロール,精神的,社会的,そして霊的問題の解決が最も重要な課題となる.緩和医療の目標は,患者とその家族にとってできる限り可能な最高のquality of life(QOL)を実現することである.末期だけでなく,もっと早い病期の患者に対して治療と同時に運用すべき点がある」と定義している.

 当院にはホスピスが併設されており,新しい考え方や治療法で診療が行われているが,私たち外科医は緩和医療について勉強する機会が一般に少ないのではないかと思われる.本稿では,緩和医療について歴史と現状,身体的・精神的・社会的苦痛の緩和,家族のケアなどについてまとめる機会を得たが,これが緩和医療を考える上の一助になれば幸いである.

参考文献

1)世界保健機関(編):がんの痛みからの解放とパリアティブ・ケア.金原出版,1993
2)恒藤 暁:最新緩和医療学.最新医学社,2005
3)(財)日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団:ホスピス・緩和ケア白書2004.2004
4)池永昌之,恒藤 暁:延命処置の限界と緩和医療の進歩.日内会誌:85:1988-1993,1996
5)Ripamonti C, Mercadante S, Groff L, et al:Role of octreotide, scopolamine butylbromide, and hydration in symptom control of patients with inoperable bowel obstruction and nasogastric tube:a prospective randomized trial. J Pain Sympton Manage 19:23-34, 2000
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7)Woodruff R:Palliative Medicine. 4th ed. New York, Oxford University Press, 2004, pp53-172
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9)柏木哲夫:ホスピスとサイコオンコロジー.精神医療23:437-477,1997
10)Cameron J, Parks CM:Terminal care evaluation of effects on surviving family of care before and after bereavement. Postgrad Med J 59:73-78, 1983
11)Eve A, Higginson IJ:Minimum dataset activity for hospice and hospital palliative care service in the UK 1997/98. Palliative Med 14:395-404, 2000
12)Buckmann R:How to Break Bad News:A Guide for Health Care Professionals. Johns Hopkins University, Baltimore, 1992, pp65-171
13)Kearney M:Palliative medicine:just another speciality?. Palliat Med 6:39-46, 1992

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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