icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床外科61巻7号

2006年07月発行

文献概要

臨床研究

食道癌周術期管理における好中球エラスターゼ阻害剤の有用性についての検討

著者: 三松謙司1 加納久雄1 小倉道一1 久保井洋一1 大井田尚継1

所属機関: 1社会保険横浜中央病院外科

ページ範囲:P.975 - P.979

文献購入ページに移動
はじめに

 食道癌の手術侵襲は大きく,ほかの消化器癌手術と比較して術後の肺合併症の頻度が高い.食道癌術後には血中サイトカインや好中球エラスターゼが高値で推移することが報告されており1),このため,術後の循環動態は不安定で,肺の酸素化能障害が誘発される.これに対して,手術手技を改良して侵襲を軽減しようとする試みや炎症性サイトカインを制御する試みもされている.特に,好中球エラスターゼは組織障害を引き起こすプロテアーゼの代表であり,急性肺障害と密接な関係があるとされている2).近年,好中球エラスターゼ阻害剤であるシベレスタットナトリウム水和物(エラスポール(R))の急性肺障害に対する有効性が示されている3)

 今回,われわれは食道癌手術において術後にエラスポール(R)を投与し,術後循環動態と肺障害の出現に影響を及ぼすか,その有用性を検討した.

参考文献

1)標葉隆三郎,里美 進:食道癌術後のサイトカインの変動.臨外52:583-589,1997
2)田坂定智,石原彰敏:好中球エラスターゼ阻害剤(ONO-5046;sivelestat)による急性肺障害の治療.呼と循51:1019-1025,2003
3)玉熊正悦,柴 忠明,平澤博之,他:好中球エラスターゼ阻害剤;ONO-5046・Naの全身性炎症反応症候群に伴う肺傷害に対する有用性と安全性の検討―第Ⅲ相二重盲検比較試験.臨床医薬14:289-318,1998
4)三松謙司,大井田尚継,加納久雄,他:縦隔鏡補助下食道抜去術を施行した低呼吸機能進行食道癌の1例.日外科連会誌29:867-871,2004
5)佐山淳造,標葉隆三郎,横田憲一,他:術前ステロイド剤投与による食道癌手術後生体反応の制御.日消外会誌27:841-848,1994
6)佐藤信博,肥田圭介,池田健一郎,他:食道癌手術侵襲に対するメチルプレドニゾロン術前投与の効果に関する検討.日消外会誌30:1831-1838,1997
7)肥田圭介,佐藤信博,池田健一郎,他:食道癌術後凝固線溶系に対するメチルプレドニゾロン術前投与の効果.日消外会誌31:2039-3045,1998
8)Shimada H, Ochiai T, Okazumi S, et al:Clinical benefits of steroid therapy on surgical stress in patients with esophageal cancer. Surgery 128:791-798, 2000
9)青笹季文,小野 聡,市倉 隆,他:食道癌手術における手術侵襲軽減目的としてのprotease inhibitor周術期投与の意義に関する検討.日消外会誌30:823-829,1997
10)後藤正幸,島 伸吾,米川 甫ほか:食道癌手術侵襲にたいするUlinastatinの効果に関する検討.日消外会誌23:2716-2722,1990
11)竹村雅至,大杉治司,李 栄柱,他:エラスターゼ阻害剤投与による食道癌術後の呼吸機能障害抑制.日腹救医会誌24:727-732,2004
12)小林 慎,原田 治,嶋谷 泉,他:胸部食道癌根治術周術期における好中球エラスターゼ阻害剤の使用経験.新薬と臨床53:110-113,2004
13)Tsukada K, Hasegawa T, Miyazaki T, et al:Predictive value of interleukin-8 and granulocyte elastase in pulmonary complication after esophagectomy. Am J Surg 181:167-171, 2001
14)小林 慎,目黒英二,早川善郎,他:食道癌根治術における低侵襲手術と周術期管理の工夫.道南医学会誌40:75-77,2005
15)池田健一郎,佐藤信博,肥田圭介,他:食道癌術後における輸液と経腸栄養を主体とした管理の有用性について.日消外会誌28:1621-1629,1995

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?