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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科61巻8号

2006年08月発行

雑誌目次

特集 急性腹症における低侵襲な治療法選択

急性胆囊炎に対するPTGBA,PTGBD,ENGBDの適応と限界

著者: 糸井隆夫 ,   祖父尼淳 ,   糸川文英 ,   栗原俊夫 ,   土屋貴愛 ,   石井健太郎 ,   辻修二郎 ,   森安史典

ページ範囲:P.1029 - P.1036

 要旨:急性胆囊炎に対するPTGBD,PTGBA,ENGBDの適応と限界について概説した.PTGBDは確実なドレナージ法であるが,患者のADLが制限される.また,出血傾向を有する症例や腹水,Chilaiditi症候群のような穿刺困難例などには適応とはならない.PTGBAは手技が簡便であるものの治療効果はPTGBDに劣る.また,PTGBDと同様に穿刺困難例には適応とはならない.一方,ENGBDでは穿刺困難例においても施行可能であるが,胆囊内挿管率とERCP後膵炎は大きな問題である.したがって,その適応は穿刺困難例でかつ手技成功率と偶発症発生に関して十分なインフォームド・コンセントが得られた症例に限定すべきである.急性胆囊炎の治療の基本は早期胆囊摘出術であるが,様々な理由により手術ができず,かつ保存的治療に抵抗性の症例では,これらの治療法の有用性と限界を十分に認識してドレナージを行う必要がある.

急性胆囊炎に対する早期腹腔鏡下胆囊摘出術

著者: 近森文夫 ,   国吉宣俊 ,   鍵山惣一 ,   国吉和重 ,   河島孝彦 ,   高瀬靖広

ページ範囲:P.1037 - P.1042

 要旨:急性胆囊炎診療ガイドラインでは,ハイリスク例を除外したうえで積極的に早期腹腔鏡下胆囊摘出術(LC)を適応していくことが推奨されている.その延長線上におけるさらなる工夫として経皮経肝胆囊ドレナージ(PTGBD)先行早期LCについて報告する.急性胆囊炎症例を,待機遅延LC施行21例(Ⅰ群),PTGBD非先行早期LC施行9例(Ⅱ群),PTGBD先行早期LC施行56例(Ⅲ群)に分け検討した.術中胆管造影成功率はⅠ群66%,Ⅱ群67%に対して,Ⅲ群98%と良好であった.LC平均手術時間はⅠ群154分,Ⅱ群116分に対して,Ⅲ群92分と良好であった.LC術後平均入院期間はⅠ群18日に対して,Ⅱ群9日,Ⅲ群9日と短く,全平均入院期間はⅠ群27日に対して,Ⅱ群14日,Ⅲ群15日と短かった.開腹移行率はⅠ群38%,Ⅱ群33%に対して,Ⅲ群は4%と低率であった.以上より,急性胆囊炎に対するPTGBD先行早期LCは積極的に推奨されるものと思われた.

穿孔性十二指腸潰瘍に対する保存的治療の適応と限界

著者: 大森浩明 ,   佐々木章 ,   池田健一郎 ,   川村英伸 ,   肥田圭介 ,   柏葉匡寛 ,   若林剛

ページ範囲:P.1045 - P.1050

 要旨:穿孔性十二指腸潰瘍(PDU)における保存的治療とは,絶食に加え補液,抗生物質,酸分泌抑制剤の投与を行うものである.保存的治療の選択には診断の確立は必須であり,緊急内視鏡検査の実施が望まれる.最初に十二指腸を観察し送気を可能な限り制限する.PDUの正診率はほぼ100%である.保存的治療の最適な適応は10~50歳代の症例である.臨床経過は,腹部所見,超音波検査による腹水量,血清アミラーゼ値,体温を経時的に観察し,1~2日後に保存的治療の可否を判断する.高齢者や腹水量が増加する症例では手術が必要である.血清IL-6値の推移から保存的治療の適応を考えると,腹水を認めない,高齢者を除いた症例に選択すれば,ほぼ確立した治療法として推奨される.

十二指腸潰瘍穿孔に対する腹腔鏡下手術

著者: 斉田芳久 ,   炭山嘉伸 ,   中村寧

ページ範囲:P.1051 - P.1056

 要旨:プロトンポンプ阻害剤の普及や内視鏡外科手術の登場により消化性十二指腸潰瘍穿孔の治療方法も大きく変化しており,より低侵襲でQOLの高い治療法として保存療法や腹腔鏡下手術が選択される時代になっている.腹腔鏡下手術の適応は,全身状態が良好で保存療法の適応外である十二指腸潰瘍穿孔である.開腹手術と比較して腹腔鏡下手術は術後の早期の回復とともに入院期間の短縮が得られるうえに術後の合併症率も低い.また,保存療法と比較しても経口摂取開始時期や入院期間の短縮が認められ,低侵襲な治療として確立しつつある.外科医としては,腹痛の早期軽減,早期回復,早期退院のためにも十二指腸潰瘍穿孔に対して腹腔鏡下手術を積極的に行う意義がある.

小児急性虫垂炎に対する保存療法の適応とinterval手術

著者: 黒岩実

ページ範囲:P.1057 - P.1062

 要旨:小児の急性虫垂炎はしばしば診断・治療の遅れから穿孔し,虫垂膿瘍を形成する.虫垂膿瘍を伴う虫垂炎への緊急手術は,それ自体が困難なうえに術中・術後の合併症を生じやすい.これらを回避するため急性期は抗生剤を中心とする保存療法で炎症をいったん沈静化させ,あとで手術が行われる場合がある(interval appendectomy:以下,IA).保存療法後のIAの適応には議論があるが,施行する場合には開腹手術よりも低侵襲で種々の利点をもつ腹腔鏡下IAが好ましい.3か月間の待機後に腹腔鏡下IAが行われた自験9例では,腹腔内の癒着も軽度であり,全例でIAが完遂できた.IAを行う際は,治療期間短縮とコスト削減をはかるために,初回入院時の積極的な膿瘍ドレナージ,抗生剤の経静脈的投与から経口剤への切り替えなどを行い,再入院時のIAはday surgeryに準じた腹腔鏡下IAが考慮されるべきである.われわれが行っているIAの手順,手技を紹介するとともに,IAに関する問題点につき文献的考察を加えた.

重症虫垂炎に対する腹腔鏡下手術

著者: 長谷川洋 ,   坂本英至 ,   小松俊一郎 ,   広松孝 ,   田畑智丈 ,   河合清貴 ,   夏目誠治 ,   青葉太郎

ページ範囲:P.1063 - P.1066

 要旨:われわれは重症虫垂炎に対して腹腔鏡下手術を第一選択の治療法とし行っており,現在までに64例に対して施行した.われわれの手術術式の詳細を紹介するとともに,その治療成績を開腹手術例と比較検討して報告する.治療成績では,手術時間は開腹例と差を認めず,鎮痛剤の使用回数は有意に少なく,離床までの日数,入院日数は有意に短かった.また,合併症,特に創感染の頻度も有意に低かった.以上の結果,総診療点数も有意に少なく,医療経済上の観点からも有用と思われた.条件が整えば,重症虫垂炎に対しては腹腔鏡下手術を第一選択としてよいと考えられる.

イレウスに対する保存療法の適応と限界

著者: 清水武昭 ,   新国恵也 ,   河内保之 ,   西村淳

ページ範囲:P.1067 - P.1072

 要旨:腹腔内臓器の疼痛は,(1)平滑筋の攣縮,痙攣,(2)腹膜,漿膜の伸展,(3)腹膜,漿膜への刺激物質(消化液,病原微生物など)による刺激,以上の単独か複合に起因する.病歴,腹部所見,薬剤に対する反応をみたうえで(1)~(3)を造影CTにて確認すると,緊急手術の適応か保存療法の適応かどうかを誤診することなく判別することが可能であった.その際,われわれの重症所見判定は有用であった.イレウス管治療は有用でその治癒率も高く,大部分は3日間の治療で解除された.そのため術前処置としても有用であり,イレウス管造影,CTイレウス管造影を駆使すると,ほぼ全例で確定診断が可能であった.

イレウスに対する外科治療―腹腔鏡下手術か開腹手術か

著者: 加納宣康 ,   北川美智子 ,   草薙洋 ,   三毛牧夫 ,   山田成寿

ページ範囲:P.1073 - P.1077

 要旨:急性腹症の領域でも腹腔鏡下手術が普及してきたので,最近の急性腹症に対する腹腔鏡下手術の普及状況およびその適応,意義について述べ,腹腔鏡下手術手技はあくまでも合理的な手術を行うための作戦に使えばよいという考え方を示した.さらにイレウスに対する腹腔鏡下手術の適応,限界などについて述べた.イレウスに対して手術を実施する場合は,腸管の拡張が軽快していてworking spaceを安全に確保できる単純性癒着性イレウス症例ではまず腹腔鏡下手術を適応してよいが,腹腔鏡観察による所見および手術の進行状況によって小開腹併用あるいは大開腹に移行するなど,適宜術式を合理的に変更していくことが重要である.

カラーグラフ 診療に役立つ肉眼像と組織像の理解―マクロからミクロ像を読む・8

肝悪性腫瘍

著者: 居村暁 ,   島田光生 ,   森根裕二 ,   吉住朋晴

ページ範囲:P.1013 - P.1026

はじめに

 各種の腹部画像診断法の目覚ましい発達とともに肝腫瘍の診断は最近著しく進歩している.それによって肝腫瘍の肉眼および病理形態像についても多くの新しい知見が得られた.特に,早期の微少な肝細胞癌の切除例の増加および超音波ガイド下での針生検法によって,かつてはほとんど知られていなかった肝癌の早期形態像の観察が可能になった.

 本稿ではおもに肝上皮性悪性腫瘍の手術標本での肉眼所見とその組織像を中心に症例を呈示し,その病態を含めて概説する.

外科の常識・非常識―人に聞けない素朴な疑問・32

虫垂炎にCT検査は必要か

著者: 須原貴志

ページ範囲:P.1079 - P.1081

 虫垂炎診断は触診のみで容易と言われているが,一方で切除例の20%前後で手術が不要である事実1)をわれわれ外科医は率直に反省し,理学所見や血液検査所見に加えて画像診断を駆使し,正確な診断に努めるべきである.

 しかし,ベッドサイドで簡便にできる超音波検査(以下,US)に比べて,かつては虫垂炎診断にCTを施行することについては否定的な意見は多かった.CTが医療現場に登場した当初は,骨盤部でartifactを生じやすいなど画像の鮮明さに難があった.1987年にBalthazerら2)は経口的に希釈バリウムを投与した状態で診断率76%としたが,これは逆に経口的に希釈バリウムを投与しない状態では,さらに診断率が下がるであろうことを意味した.一方で,理学所見や血液検査所見を主とした診断方法で20%前後が手術不要であったということは,裏を返せば,これだけでも8割方が診断できるということでもあり,虫垂炎診断能においてCTは必ずしも魅力的な検査とは言えなかった.さらに当時は装置の普及が不十分であり,かつ検査時間も比較的長かったため,虫垂炎診断のためにCTの検査枠をとることは罪悪視されていたとすら言える.

外科の常識・非常識―人に聞けない素朴な疑問・番外編

ピロリ菌は悪者か

著者: 安達洋祐

ページ範囲:P.1082 - P.1083

 ピロリ菌を発見したオーストラリアのMarshallとWarrenが2005年のノーベル医学生理学賞に輝いた(図1).本稿ではピロリ菌の歴史を振り返り,最新の論文でピロリ菌を見直してみる.

【消化性潰瘍】

 1983年6月4日のLancetに「活動性慢性胃炎の上皮に未確認変形桿菌」と題する2通の手紙が掲載された.1通目は当時45歳の病理医J Robin Warrenによるものであり,「過去3年間に135の胃生検標本から小さなS状桿菌を観察した」と述べ,細菌が胃に棲息することを示唆した.

病院めぐり

庄内余目病院外科

著者: 吉川雅輝

ページ範囲:P.1084 - P.1084

 当院は,山形県の日本海側に面する庄内平野のほぼ中央に位置し,平成17年7月に余目町と立川町が合併して誕生した庄内町にあります(同年に列車事故が起こり,テレビなどで紹介される機会が多くありました).

 平成3年8月に開院し,現在は一般病棟202床,療養病棟122床の324床のケアミックス型の病院となっており,日本医療機能評価機構認定病院,臨床研修指定病院です.

隠岐島前病院外科

著者: 星野和義

ページ範囲:P.1085 - P.1085

 当院は,島根県の日本海沖約40~80kmに浮かぶ4島からなる隠岐諸島のうち,西ノ島,中ノ島,知夫里島の3島,人口約7,000人を対象とした43床の病院です(療養型併設).常勤医は内科2名,小児科1名,外科1名で,近隣の2診療所と連携して,あと2名の内科医師が病院に出入りしています.眼科,耳鼻科,精神科,産婦人科,整形外科のパート診療が1~2週間に1回あります.常勤医師は筆者以外はすべて自治医科大学出身です.

 ところで,皆さんは離島の外科医師はどのような仕事をしていると考えていますか?「Dr.コトー診療所」のような波乱に満ちた毎日を送っていると考えているでしょうか?実際は,午前中は外来,午後は病棟回診,ときに検査,処置と,ほぼ平凡な毎日です.水曜日は,隣の知夫里島の知夫診療所に船で出張診療に出かけています.外来はほとんどが整形外科的な疾患で,関節注射や局所注射などを行っています.ただし,本格的に整形外科の研修をしたわけではなく,専門医に紹介することも多いです.なお,緊急時の搬送には平成8年からドクターヘリがあり,島根県立中央病院あるいは松江赤十字病院から医師がヘリコプターに乗って来て患者を病院まで搬送してくれるため,非常に楽になりました.

外科学温故知新・13

臨床試験

著者: 一瀬幸人

ページ範囲:P.1087 - P.1092

1 はじめに

本総説では新薬開発のための臨床試験(治験)に限ったものだけでなく,肺癌の治療に関し標準的治療を確立しようとしてわが国で行われた第Ⅲ相試験について概説する.臨床試験には国際的な話し合いが行われ(ICH-E8),第Ⅰ相から第Ⅳ相までが規定されており,それぞれ目的が決められてプライマリエンドポイントが設定されている.

 第Ⅰ相は,開発しようとするものが薬剤であれば,その想定される最大耐用量と推奨用量を決める.つぎに,第Ⅱ相試験においてその推奨用量における探索的な有効性を検討する.一般的にプライマリエンドポイントは奏効率であり,帰無仮説は「この治療の奏効率は閾値以下である」となる.観察されたエンドポイントのカットオフ値がその閾値以下ならば帰無仮説を採択し,開発を中止する.その帰無仮説を棄却でき,期待奏効率を担保できた場合,毒性などの有害事象の発現状況やfeasibilityなど考慮し,第Ⅲ相試験に進むか否かが総合的に検討され決定される.新治療が有効である可能性が高い場合,標準治療と比較することにより新しい標準となり得るかを検証する手段が第Ⅲ相試験である.この検証のため,通常はランダム化比較試験の方法がとられる.一般に新治療が標準治療に比べて生存において優ることを検証する優越性試験の型で行われる.すなわち,臨床的仮説の「新治療がどの程度,生存において標準治療に優れば新しい標準治療となり得るか」が問われ,そこから必要症例数が算出される.

 この第Ⅲ相試験を経て治療法が変わるのであるが,上記のステップを踏まえた試験はわが国では肺癌領域でいち早く行われたものの,それでも1980年代からであった.このため1990年代以降に発表された論文のうち,peer-reviewのある英文雑誌上に発表された論文を対象として概説する.

連載企画「外科学温故知新」によせて・4

創傷管理(1)―創傷管理に関するFlemingの論考:Flemingは創に対する消毒剤のadverse effectに言及していた!

著者: 佐藤裕

ページ範囲:P.1094 - P.1095

 フレミング(Alexander Fleming:1881~1955)のペニシリン(penicillin)発見に関しては多くの「セレンディピティ(serendipity)」が関与していることがよく知られている.なお,1928年にペニシリンを発見したフレミングは,ペニシリンの臨床応用の道を拓いたチェーン(E. B. Chain)とフローリー(H. Florey)とともに,1945年にノーベル生理医学賞を受賞した.

 この「セレンディピティ」とは,ある仮説に基づいた研究や実験の過程で「はじめから意図してではなく,偶然に重大な発見をすること.ないしそういう才能」と定義される言葉であり,語源的には,セレンディップ(Serendipは現在のスリランカの古名)の3人の王子が,行く先々でうまい具合に数々の思いがけない幸運に巡り会いながら帰還するというお伽話に由来している.これらフレミングのペニシリン発見にまつわるセレンディピティについては他書に譲るが,これは「棚からぼた餅」的な思いがけない幸運というようなものではなく,「偶然は準備のできている人のみを助ける」ないし「観察の場では,幸運は待ち受ける人の準備状態や心構え次第である」というパスツールの言を借りるまでもなく,科学的に重要な発見につながる幸運に巡り会うには,深い専門的な知識と洞察力の裏付けが必要であるのは言うまでもない.

元外科医,スーダン奮闘記・4

一時帰国

著者: 川原尚行

ページ範囲:P.1097 - P.1099

一時帰国まで

 ガダーレフ州ガランナハル村を中心とした巡回診療が,なんとか形になってきたかなという頃,日本に一時帰国しなければならなくなった.私の団体であるロシナンテスが内閣府にNPO法人として認可される時期がきたのである.NPO,NGOと理解できない点があると思うので,説明したい.わが国にはNGO(非政府組織)を認定するものは存在しない.よく考えれば,非政府組織を国が認定するのもおかしなものである.日本ではNPO(非営利組織)を認定している.事務所が1か所であれば,その事務所がある都道府県から,2か所以上であれば内閣府から認定を受ける.ロシナンテスは北九州に本部を,東京に支部を置いているため,内閣府に必要書類を提出していた.それが認可される見込みというのである.

 さらに,日本寄生虫学会から招待講演を依頼されたのである.外科医が寄生虫学会というのもおかしいと思われるであろうが,私は寄生虫学会に所属している.外務省に入省してまもなく,マラリアに関しての研修を群馬大学の寄生虫学教室の鈴木守教授にしていただいた.鈴木先生とは,その縁で帰国のたびにご挨拶に伺っていた.鈴木先生は1980年から10年間,私が現在いるスーダンでマラリア・コントロール・プロジェクトのチームリーダーだった先生である.スーダンでも鈴木先生の名はいまだに轟いている.その鈴木先生から,ぜひとも寄生虫学会マラリア・サテライト部会で講演をしてくれという依頼がきた.弘前大学寄生虫学教室の神谷教授の主宰で開かれる学会であったのが,昨年に神谷教授が突然お亡くなりになり,その弔い合戦の意味もあるので,ぜひ私にというのである.そのマラリア・サテライト部会が始まったのは,スーダンでマラリア・コントロール・プロジェクトが開始されたのがきっかけであったというのである.奇遇であり,恩師からの依頼である.これは帰国しなければならない.

胃癌外科におけるリンパ節郭清の始まりとその展開・6

Billroth―1881年―からMikulicz―1898年―まで(2)

著者: 高橋孝

ページ範囲:P.1101 - P.1111

【体表癌での観察(3)乳癌―Moore,Halsted】

 1881年のBillrothによる胃癌胃切除の成功以後の胃癌外科に戻る前に,もう1つの体表癌である乳癌の外科の動向をみてみましょう.当時の胃癌外科の背景を知るためであります.

 近代以前の昔から,乳房に「しこり」を認めると,それと同時にあるいは時をおいて腋窩にも「しこり」をみるようになるのはよく知られたことでした.中世の頃から,乳房の「しこり」と腋窩の「しこり」両方の摘出に成功すれば患者はしばらくの間元気に過ごすことができることも知られていました.

臨床研究

当院における成人鼠径ヘルニア根治術の比較検討

著者: 中木村繁 ,   高橋周作 ,   廣瀬邦弘 ,   佐治裕 ,   今野哲朗

ページ範囲:P.1113 - P.1116

はじめに

 当院では2005年1月から本格的に成人鼠径ヘルニアに対する第一選択の術式としてKugel patchによる手術を取り入れた.今回,2005年以前に施行していたmesh plug法,PHS(Prolene(R)Hernia System)法とKugel patch法を比較検討し,文献的考察を交えて報告する.

臨床報告・1

術後大腿膿瘍をきたした閉鎖孔ヘルニアの1例

著者: 牧野孝俊 ,   稲葉行男 ,   滝口純 ,   林健一 ,   渡部修一

ページ範囲:P.1117 - P.1119

はじめに

 閉鎖孔ヘルニアは痩身の高齢女性に多く,CT診断法の確立により術前診断が比較的容易になった疾患の1つである1,2).しかし,診断に苦慮する場合も少なくなく,大腿膿瘍に発展し,それをきっかけに診断された報告例も散見される3~6).今回,われわれはCTにて診断・手術し,術後に大腿膿瘍をきたした閉鎖孔ヘルニアの1例を経験したので報告する.

腺癌と共存した胃内分泌細胞癌の1例

著者: 吉田徹 ,   小原眞 ,   八島良幸 ,   佐藤耕一郎 ,   加藤丈人 ,   菅井有

ページ範囲:P.1121 - P.1123

はじめに

 胃内分泌細胞癌は胃癌の約0.1%にみられる稀な組織型であり1),予後不良な疾患である.今回われわれは,腺癌病変が共存した胃内分泌細胞癌を経験したので報告する.

ダブルバルーン内鏡鏡で診断したblind pouch syndromeの1手術例

著者: 瑞木亨 ,   佐田尚宏 ,   安田是和 ,   永井秀雄 ,   山本博徳

ページ範囲:P.1125 - P.1129

はじめに

 消化管吻合に伴う合併症として,盲囊や空置腸管に種々の病的変化をきたす吻合病であるblind loop syndromeがあるが,このうち盲端となっている腸管に潰瘍形成や出血を生ずる病態を特にblind pouch syndromeと呼称する.

 今回われわれは,小腸小腸の側々吻合術後30年以上経過してから下血で発症し,ダブルバルーン内視鏡で確定診断され,経過観察中に出血性ショックを呈し緊急手術を施行したblind pouch syndromeの1例を経験したため,文献的考察を加えて報告する.

検診で指摘された小膵癌の1例

著者: 花園幸一 ,   今村博 ,   末永豊邦 ,   新原亨 ,   西俣寛人 ,   愛甲孝

ページ範囲:P.1131 - P.1133

はじめに

 各種画像診断や検査手技の向上により,径2cm以下の小膵癌の早期発見がされるようになってきた.今回われわれは検診での腹部超音波検査で発見され,内視鏡的逆行性膵管造影の所見が診断に有用であった小膵癌の1例を経験したので報告する.

上腹部白線ヘルニアの1例―Composix(R) Kugel Patchによる修復術の経験と術式の工夫

著者: 大谷裕 ,   因来泰彦 ,   杉山悟 ,   清水康廣

ページ範囲:P.1135 - P.1138

はじめに

 白線ヘルニアは腹壁ヘルニアの1形であり,腹壁の正中を構成する白線の間隙から発生する.諸家の報告によると,海外での発症頻度は比較的高いが1,2),わが国では稀である3).今回われわれは,左季肋部皮下腫瘤を主訴に発見された白線ヘルニアの1例を経験した.当症例では修復術にComposix(R)Kugel Patchを用いたが,白線ヘルニアの修復術に対して同様の方法を行ったとする報告例は自験例を含め2例のみである.また,若年発症という点でも稀な例である.白線ヘルニアの報告例の検討とともにその概要を報告する.

S状結腸癌に併存した膵漿液性囊胞腺腫の1例

著者: 宮内隆行 ,   余喜多史郎 ,   矢田清吾 ,   倉立真志 ,   山崎誠司

ページ範囲:P.1139 - P.1143

はじめに

 膵漿液性囊胞腫瘍(SCT)は比較的稀な良性腫瘍で悪性化はきわめて稀とされており1),手術適応に関して統一した見解はない2~4).また,膵外悪性腫瘍との併存はきわめて稀である.最近,S状結腸癌に併存したSCTの1例を経験したので報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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