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外科の常識・非常識―人に聞けない素朴な疑問・32
虫垂炎にCT検査は必要か
著者: 須原貴志1
所属機関: 1下呂市立金山病院外科
ページ範囲:P.1079 - P.1081
文献購入ページに移動 虫垂炎診断は触診のみで容易と言われているが,一方で切除例の20%前後で手術が不要である事実1)をわれわれ外科医は率直に反省し,理学所見や血液検査所見に加えて画像診断を駆使し,正確な診断に努めるべきである.
しかし,ベッドサイドで簡便にできる超音波検査(以下,US)に比べて,かつては虫垂炎診断にCTを施行することについては否定的な意見は多かった.CTが医療現場に登場した当初は,骨盤部でartifactを生じやすいなど画像の鮮明さに難があった.1987年にBalthazerら2)は経口的に希釈バリウムを投与した状態で診断率76%としたが,これは逆に経口的に希釈バリウムを投与しない状態では,さらに診断率が下がるであろうことを意味した.一方で,理学所見や血液検査所見を主とした診断方法で20%前後が手術不要であったということは,裏を返せば,これだけでも8割方が診断できるということでもあり,虫垂炎診断能においてCTは必ずしも魅力的な検査とは言えなかった.さらに当時は装置の普及が不十分であり,かつ検査時間も比較的長かったため,虫垂炎診断のためにCTの検査枠をとることは罪悪視されていたとすら言える.
しかし,ベッドサイドで簡便にできる超音波検査(以下,US)に比べて,かつては虫垂炎診断にCTを施行することについては否定的な意見は多かった.CTが医療現場に登場した当初は,骨盤部でartifactを生じやすいなど画像の鮮明さに難があった.1987年にBalthazerら2)は経口的に希釈バリウムを投与した状態で診断率76%としたが,これは逆に経口的に希釈バリウムを投与しない状態では,さらに診断率が下がるであろうことを意味した.一方で,理学所見や血液検査所見を主とした診断方法で20%前後が手術不要であったということは,裏を返せば,これだけでも8割方が診断できるということでもあり,虫垂炎診断能においてCTは必ずしも魅力的な検査とは言えなかった.さらに当時は装置の普及が不十分であり,かつ検査時間も比較的長かったため,虫垂炎診断のためにCTの検査枠をとることは罪悪視されていたとすら言える.
参考文献
1)Birnbaum BA, Wilson SR:Appendicitis at the millennium. Radiology 215:337-348, 2000
2)Balthazar EJ, Megibow AJ, Hulnick D, et al:CT of appendicitis. AJR 147:705-710, 1986
3)須原貴志,森田敏弘,加藤弘樹,他:術前診断困難虫垂炎症例に対するヘリカルCTの有用性について.日臨外医会誌58:295-300,1997
4)Lane MJ, Liu DM, Huynh MD, et al:Suspected acute appendicitis:Nonenhanced helical CT in 300 consecutive patients. Radiology 213:341-346, 1999
5)須原貴志:虫垂炎(診断).安達洋祐,竹村博文(編);実践臨床外科.金原出版,2005,pp388-395
6)蛯澤記代子,石井敬基,高山忠利:カタル性虫垂炎は術前診断可能か?.外科治療92:1151-1152,2005
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