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文献詳細

雑誌文献

臨床外科61巻9号

2006年09月発行

文献概要

外科の常識・非常識―人に聞けない素朴な疑問・33

虫垂の病理学的検査は必要か

著者: 八尾隆史1

所属機関: 1九州大学大学院医学研究院形態機能病理

ページ範囲:P.1247 - P.1249

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【はじめに】

 外科的に切除された様々な臓器の組織学的検索は日常的に行われているが,病理組織学的検索が不要ではないかと思われる臓器が臨床から提出されることもある.これまでは,虫垂には癌やカルチノイドなどの悪性腫瘍を併存することがあるため,外科的に切除された虫垂の病理学的検索は当然のように必須であると考えられてきた.しかしながら,急性虫垂炎で虫垂切除術が施行された場合,症状や白血球値などの検査値や肉眼像などの臨床的所見で十分であり,必ずしもすべての虫垂切除材料の病理学的検査は必要ではないのではないかという意見も聞かれる.また,ほかの手術の際に肉眼的に正常な虫垂が切除される場合もしばしばあるが,少なくともこれらの虫垂の病理学的検索は不要かもしれない.そして,今日の包括医療制度においては不必要と思われることは極力省略される傾向があり,改めて切除虫垂の病理学的検査の必要性が問われている.

 本稿では,虫垂にはどのような病変が存在するか,それらの臨床病理学的意義について概説し,虫垂の病理学的検査の必要性について考えてみたい.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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