文献詳細
連載企画「外科学温故知新」によせて・9
―[Roux-en-Y]吻合の創始者― César Roux(1857~1934)
著者: 佐藤裕1
所属機関: 1北九州市立若松病院外科
ページ範囲:P.105 - P.107
文献概要
消化器外科領域の再建に際して広く繁用されているルー(Roux-Y)吻合を創始したCésar Rouxは1857年のスイス生まれで,「Roux(ルー)」という名前からうかがい知れるようにフランス移民の家系出身である.ベルン大学医学部を卒業後,数千例にも及ぶ甲状腺切除手術の実施などの功績により,のちに第1回ノーベル医学賞を受賞して世界的な名声を博することになる外科学の泰斗コッヘル(Theodor Kocher)のもとで助手となって外科医としての第一歩を踏み出し,1880年から3年間にわたってKocherから薫陶を受けつつ研鑽を積んでいった.さらにRouxは,師Kocherの助言を受けてドイツに遊学することとなり,BillrothやVolkmannなどその当時の外科学の大家と交友した(図2).そして,そのようなその当時の諸大家との交友を通じて見識を広めていき,1887年にローザンヌ大学の外科学教授に迎えられたのである.折しもRouxが教授に就任した頃は,Listerの防腐法やそれから発展していった無菌法,さらにMortonらが開発した麻酔法などが徐々に外科臨床に浸透していき,外科とくに腹部内臓外科が新時代を迎えようとしていた時代であった.
参考文献
掲載誌情報