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文献詳細

雑誌文献

臨床外科62巻4号

2007年04月発行

文献概要

胃癌外科におけるリンパ節郭清の始まりとその展開・14

1930年前後―三宅の『胃癌』その後とリンパ流の再検討

著者: 高橋孝1

所属機関: 1たむら記念病院外科

ページ範囲:P.521 - P.530

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【三宅の『胃癌』その後】

 1898年に始まったMikuliczの郭清体系が,その後欧米では大いに広まりをみせたことは前々回述べました.わが国でも三宅速のドイツ留学を契機としてそれが継承されたことは前回解説したとおりであります.しかし,Mikuliczの郭清体系を乗り越えるという意味でのリンパ節郭清の展開は,欧米でも日本でも1940年代に入ってからやっとその胎動をみることができるのです.これまでのMikuliczの郭清体系を超えていくためには,その道標となるべき理論,リンパ流研究が欠落していたからであります.未知の大海へ乗り出して行くための羅針盤がなかったのです.

 1930年を挟んで胃のみならず直腸のリンパ流への関心が高まりをみせ,それぞれの臓器のリンパ流研究では大きな成果が上がりました.直腸のリンパ流ではVillemin(1925年),仙波(1927年)の研究がGerotaの直腸リンパ流研究を超え,はるかに臨床に有効な成果をもたらしたことはすでに述べました(本連載第11回).胃リンパ流ではRouvière(1932年),松本(1933年),井上(1936年)の研究がPoirier,Pólya,Navratilの成果を凌駕し,より臨床的な知見をもたらしました.

参考文献

1)Parson L, Welch CE:The curability of carcinoma of the stomach. Surgery 6:327-338, 1939
2)三宅 速:胃癌切除の遠隔成績に就て.グレンツゲビート 7:84-94,1933
3)Berkson J, Walters W, Gray HK, et al:Mortality and survival in cancer of the stomach:a statistical summary of the experience of the Mayo Clinic. Proc Staff Meet Mayo Clinic 27:137-151, 1952
4)久留 勝,松島一雄,杉村泰夫,他:塩田外科教室ニ於ケル胃癌手術ノ成績.日外会誌 36:365-383,1935
5)久留 勝:膵臓部分切除ヲ兼ヌル胃癌切除ノ術式竝ニ適應ニ就テ.日外会誌 39:630-633,1938
6)Rouvière H:Anatomie des Lymphatiques de l'Homme.:Paris, Masson et Cie, 1932, pp294-334
7)井上與惣一:胃,十二指腸,膵臓竝ビニ横隔膜ノ淋巴管系統.解剖学雑誌 9:35-116,1936
8)Poirier P, Charpy A:Traité d'Anatomie Humaine. Tome Deuxieme. Les Lymphatiques. Paris, Massion et Cie, 1902, pp1181-1183
9)松本悌冶:廻盲部及ビ胃淋巴管系ノ研究.医学研究 7:917-1050,1933
10)文献6,pp424-428
11)久留 勝:獏のはらわた.日本臨牀社,1955,pp355-356
12)高橋 孝:直腸側方靭帯を考える―骨盤内筋膜構成と側方靭帯.消外 28:1687-1689,2005

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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