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胃癌外科におけるリンパ節郭清の始まりとその展開・17
1960年代以降(1)―腸リンパ本幹,大動脈周囲リンパ節
著者: 高橋孝12
所属機関: 1たむら記念病院外科 2亀有病院
ページ範囲:P.947 - P.961
文献購入ページに移動本連載の第14回では,1930年代の胃リンパ流の再検討としてRouvière,井上の研究を紹介しました.そこでは,これまでのMikuliczの郭清体系の膵上縁リンパ節群のなかから腹腔動脈リンパ節群が区別され,これが胃所属リンパ流の最中枢であると考えられるようになりました.Rouvièreと井上の理解する腹腔リンパ節群の同定,そこへの輸入リンパ管,そこからの輸出リンパ管にはかなりの相違があるのですが,両者の研究成果はほどなく1940~1950年代の系統的リンパ節郭清につながったことは前回述べたとおりです.そこで,1960年代以降では,理論の展開としてのさらなる胃リンパ流の研究・腹腔動脈リンパ節群よりさらに中枢に向うリンパ流の研究を見ていくことになります.ここでのキーワードは「腰リンパ本幹」「腸リンパ本幹」,そして「胸管」です.
Rouvièreと井上の腹腔動脈リンパ節群の同定とそこからの輸出管の様態はすでに,筆者の理解の範囲で図示しておきました(本連載第14回図7).そこでは胃リンパ流の検索法,リンパ管・リンパ節の描出法に2つの方向があったことを思い出してください.1つは後腹壁からの描出法であり,鬱滞した大動脈周囲リンパ管・リンパ節に色素液・水銀液を注入し,内臓器(胃・腸)からのリンパ管を染め出そうとするものです.もう1つは胃壁内から注入しそこからのリンパ管・リンパ節を描出しようとするものです.前者は中枢から逆行性の描出法であり,後者は末梢からの順行性の描出です.
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