臨床外科63巻10号

2008年10月発行

臨床研究

気管切開併設頸部食道手術後創感染例の気管切開チューブの支持―着脱容易なクリップ法

著者： 森脇義弘¹ 豊田洋¹ 小菅宇之¹ 岩下眞之¹ 鈴木範行¹ 杉山貢¹

所属機関： ¹横浜市立大学附属市民総合医療センター高度救命救急センター

ページ範囲：P.1411 - P.1414

はじめに

　頸部食道の異物嵌頓や医原性損傷で発症から長時間経過した症例では，術前からの食道の損傷や破綻と高度の炎症や感染のため損傷部縫合閉鎖は困難となり，縫合不全や手術創感染，長期呼吸管理の危険が高くなる．気管切開が必要になると，汚染手術創は気管切開チューブ（以下，チューブ）の支持テープ（リボン）の経路上に位置するため，毎日の汚染創処置の際にチューブ支持テープを外す必要が生じる．最近，マジックテープを用いた気管切開チューブ支持装具も製品化されているが^1～3），汚染すると洗浄は困難で廃棄せざるを得ない．当センターでは，頸部に頻回の処置を要する創がある症例のチューブ支持固定には，市販の封筒計量用具の小型クリップを応用し，支持テープの着脱を容易にしている^4～6）．今回，汚染の激しい頸部食道手術後の創感染例での本法の有用性と安全性を検証し，2，3の知見を得たので報告する．

参考文献

1）Dixon L, Wasson D：Comparing use and cost effectiveness of tracheostomy tube securing devices. Medsurg Nurs 7：270-274, 1998

2）Serra A：Tracheostomy care. Nurs Stand 14：45-52, 2000

3）長谷川真也：気管切開ここが知りたい1-Q2チューブの固定がうまくできない．Expart Nurse 20：40-41，2004

4）Moriwaki Y, Sugiyama M, Kosuge T, et al：Fixation of tracheostomy tube using detachable clip in patients requiring neck wound management. Intens Care Med 31：S124, 2005

5）森脇義弘，吉田謙一，松田悟郎，他：下行性壊死性縦隔炎に対する前方アプローチによる縦隔ドレナージ．日消外会誌 35：460-464，2002

6）森脇義弘，伊達康一郎，長谷川聡，他：全介助経管栄養中の高齢者の頸部食道異物（有鈎義歯）の1例．日臨外会誌 63：884-889，2002

7）Liew L, Gibbins N, Oyarzabal M：How I do it：securing tracheostomy tubes. Eur Arch Otorhinolarungol 265：607-608, 2008

8）Carlson J, Mayrose J, Krause R, et al：Extubation force：tape versus endotracheal tube holders. Ann Emerg Med 50：686-691, 2007