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文献詳細

雑誌文献

臨床外科63巻2号

2008年02月発行

文献概要

外科学温故知新・32

甲状腺外科

著者: 黒木祥司1

所属機関: 1黒木クリニック

ページ範囲:P.237 - P.242

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1 はじめに

 中国では甲状腺の機能の何たるかもまったく知られていなかった7世紀に,すでに甲状腺腫を甲状腺末で治療していたということであるが,漢方の慧眼には驚くほかない.「東方見聞録」を著したヴェニスのマルコポーロは1270年に中央アジアで甲状腺腫を見たことを記述している.このように古くから知られていた甲状腺腫であるが,科学的に記載されるのには19世紀まで待たねばならなかった.

 意外に思うかも知れないが,甲状腺疾患患者の数は単一臓器の疾患としては世界で最大であり,その大部分はヨード欠乏による甲状腺機能低下症である.わが国は,国民が海草類を好んで摂取するがゆえにヨードを自然に補い,ヨード欠乏症の存在しない例外的な存在である.海外ではヨード摂取量が十分ではなく,なかでもイラン,中国,チリなどでは食事性のヨード摂取量がきわめて少ないため,甲状腺ホルモンが合成できず,甲状腺機能低下症となっている例が著しく多い.

 のちに述べるように,欧米の文明諸国では20世紀中頃から食塩にヨードが添加されるようになって,ヨード不足による甲状腺疾患は激減した.しかしながら,ヨードを正確に供給してヨード欠乏症を克服したイギリスにおいても人口の15%は何らかの甲状腺疾患を持つと報告されている.また,長崎における調査では一般健康成人の17%に甲状腺疾患があったとされている.すなわち,人類の6~7人に1人は甲状腺に何らかの異常を持っているようである.

参考文献

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4)板倉英卋,直江史郎,原 正道:臨床家たちの奮戦記―病名に名を残した医師.メジカルセンス,2000,pp41-44
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6)網野信行,日高 洋,多田尚人:甲状腺疾患の治療―橋本病.臨と研74:1688-1693,1997
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8)清水一雄:甲状腺の鏡下手術とハーモニックスカルペルの応用.外科治療81:56-60,1999
9)日下部きよ子:アイソトープ治療.臨と研74:1704-1708,1997

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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