臨床外科63巻6号

2008年06月発行

臨床報告

虫垂憩室炎の1例

著者： 柏木伸一郎¹ 寺岡均¹ 大平豪¹ 玉森豊¹ 新田敦範¹ 筑後孝章²

所属機関： ¹馬場記念病院外科 ²近畿大学医学部病理学教室

ページ範囲：P.853 - P.856

文献概要

はじめに

　虫垂憩室炎は急性虫垂炎と臨床像の類似した比較的稀な疾患である^1～3）．虫垂憩室は注腸検査などで偶然みつかるケースを除き，術前診断は困難である^4～7）．また，穿孔率が高いため臨床的に問題となることが多いことより，欧米では無症状の憩室に対しても手術適応とする考えが主流である．

　今回，われわれは急性虫垂炎の診断で手術を施行し，病理組織学的に虫垂憩室炎の診断に至った1例を経験したのでわが国における報告180例を集計し^3～9），若干の文献的考察を加えて報告する．

参考文献

1）Kelynack TN：A Contribution to the Pathology of the Vermiform Appendix. HK Lewis, London, 1893, pp60-61

2）Shapiro R, Freed JS, Reiner MA：Appendiceal diverticulum：An unusual but not uncommon entity. NY State J Med 86：155-156, 1986

3）星野則行：大なる仮性憩室を有する虫垂突起粘液囊腫の1例．東西医学 4：853-858，1937

4）宇野雄祐，岩瀬孝明，西浦和男，他：虫垂憩室の2症例．日消外会誌 27：2476-2480，1994

5）中山隆盛，新谷恒弘，白石　好，他：虫垂憩室炎の2例．外科 67：1766-1769，2005

6）中西英和，丸田守人，小西高義，他：虫垂憩室の5症例．日臨外医会誌 49：1445-1451，1988

7）日野恭徳，山城守也，嶋田裕之，他：高年齢者における大腸憩室症―連続剖検1,000例に基づく検討．胃と腸 15：871-876，1980

8）長谷川聡，森隆太郎，簾田康一郎，他：虫垂憩室症5症例．日臨外会誌 65：1592-1595，2004

9）濱州晋哉，横尾直樹，木元道雄，他：虫垂炎にて発症した虫垂憩室症の5例．日臨外会誌 64：120-125，2003

10）中山隆盛，白石　好，西海孝男，他：急性虫垂炎の検討．外科 67：1089-1094，2005

11）鶴田　豊，杉原重哲，外山栄一郎，他：腹腔鏡下切除術を行った虫垂憩室症の1例．臨外 60：1329-1331，2005

12）Deschenes L, Couture J, Garneau R：Diverticulitis of the appendix. Report of sixty-one cases. Am J Surg 121：706-709, 1971