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文献詳細

雑誌文献

臨床外科64巻12号

2009年11月発行

文献概要

臨床報告

ヘルニア腫瘍を合併した進行胆囊癌が疑われた1例

著者: 坂口博美1 藍澤喜久雄1 松下明正1 熊木俊成1 久保周1 春日好雄1

所属機関: 1長野県厚生連長野松代総合病院外科

ページ範囲:P.1623 - P.1627

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要旨:患者は70歳,男性.左鼠径ヘルニアの診断で紹介された.通常のヘルニアと異なり,鼠径部に2.0×1.5cmの無痛性,非還納性の硬い腫瘤を触知し,血液検査では胆道系酵素の上昇とCEA,CA19-9の上昇を認めた.CT検査では鼠径管内の腫瘤影および胆囊頸部とその近傍の肝臓に腫瘤影を認めた.ほかに悪性腫瘍を示唆する所見はなく,胆囊癌の鼠径部転移を疑った.診断確定のため手術を施行したところ,腫瘤をヘルニア内容とする鼠径ヘルニアであった.摘出した腫瘤は病理組織学的には腺癌であった.以上から,ヘルニア腫瘍を合併した進行胆囊癌の疑いと診断した.ヘルニア囊に腫瘤を触知するときは,悪性腫瘍または悪性腫瘍の腹膜播種巣を考慮して術前診断を進める必要がある.

参考文献

1)Nicholson CP, Donohue JH, Thompson GB, et al:A study of metastatic cancer found during inguinal hernia repair. Cancer 69:3008-3011, 1992
2)Kunio T, Yasushi T, Tetsu A, et al:Malignant mixed mullerian tumor of the ovary growing into an inguinal hernia sac:report of a case. Surg Today 33:797-800, 2003
3)Yoell JH:Surprises in hernia sacs. Diagnosis of tumors by microscopic examination. Calif Med 91:146-148, 1959
4)日本胆道外科研究会(編):胆道癌取扱い規約.第5版.金原出版,2003
5)志田 大,吉見富洋,小形幸代,他:胆管細胞癌の転移性鼠径ヘルニア囊腫瘍の1例.日消外会誌 33:1816-1820,2000
6)近藤 哲:序 進行胆囊癌の進展様式.消画像 1:619-625,1999

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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