臨床外科64巻5号

2009年05月発行

特集 炎症性腸疾患外科治療のcontroversy

〔潰瘍性大腸炎に対する最適な外科治療とは？〕 全大腸切除術：1期手術か2期・3期手術か

1期手術の立場から

著者： 池内浩基¹ 内野基¹ 中村光宏¹ 松岡宏樹¹ 冨田尚裕¹

所属機関： ¹兵庫医科大学外科学講座下部消化管外科

ページ範囲：P.581 - P.586

文献概要

要旨：術式の進歩によって，潰瘍性大腸炎（ulcerative colitis：以下，UC）においても1期的な手術が可能になってきている．UCに対する1期的手術は2期分割手術と比べて在院日数の短縮や医療費の軽減に寄与している．また，術後合併症においても有意差を認める要因はなく，術後のパウチ機能率も同程度である．術後の排便機能は排便回数，便の漏れ，ガスと便の区別なども術後3か月で日常生活に不便がない程度に回復している．2期分割手術では人工肛門閉鎖を初回手術後3か月目の前後に行っていたことを考慮すると，対象症例の選択を十分に行えば，1期的な手術は安全に行うことができる術式であると思われる．デメリットとしては術後の肛門周囲の疼痛管理が必要なことがあるが，これは術後2か月を経過するとなくなる．

参考文献

1）小金井一隆，杉田　昭，木村英明：潰瘍性大腸炎に対する大腸全摘・回腸囊肛門管吻合術．消外 31：1513-1522，2008

2）Kusunoki M, Shoji Y, Yanagi H, et al：Current tends in restorative proctocolectomy. Introduction of an ultrasonically activated scalpel. Dis Colon Rectum 42：1349-1352, 1999

3）池内浩基，中埜廣樹，内野　基，他：潰瘍性大腸炎に対する術式の変遷とその予後に関する検討―3期分割手術から1期的手術へ．日本大腸肛門病会誌 58：239-245，2005

4）Ikeuchi H, Nakano H, Uchino M, et al：Safety of one-stage restorative proctocolectomy for ulcerative colitis. Dis Colon Rectum 48：1550-1555, 2005

5）Ikeuchi H, Shoji Y, Kusunoki M, et al：Clinical results after restorative proctocolectomy without diverting ileostomy for ulcerative colitis. Int J Colorectal Dis 19：234-238, 2004