臨床外科65巻1号

2010年01月発行

臨床報告

自己グリセリン浣腸を契機とした直腸穿孔に対して非観血的治療で軽快した1例

著者： 土屋康紀¹ 岡本政広¹ 東山考一¹ 塚田一博²

所属機関： ¹あさひ総合病院外科 ²富山大学大学院医学薬学研究部消化器・腫瘍・総合外科

ページ範囲：P.125 - P.129

要旨：今回，われわれはグリセリン浣腸（GE）・摘便による直腸穿孔に対して非観血的治療を選択した1例を経験したので，若干の文献的考察も加えて報告する．患者は58歳，女性．既往歴に特記すべきことはないが，普段から便秘傾向にあった．患者自身でGE（60ml）および摘便を施行した．以後，腹部膨満と腹痛の継続に加え，発熱・血尿を認めた．翌日に当科の外来を受診し，GEによる直腸穿孔と診断されて入院となった．入院時の身体・検査所見ではsystemic inflammatory response syndromeの診断基準を満たしていた．CTでは右側の直腸の外側のみにfree airと脂肪織濃度上昇を認め，下部消化管内視鏡検査では肛門縁より約5cmに損傷部位を認めた．触診でも圧痛部位は局所のみで軽度であり，絶食・抗生剤で経過観察することとした．翌日には発熱は軽快し，翌々日には局所の圧痛も消失した．以後の経過は良好であり，4か月が経過した現在も遺残腫瘍は認めていない．

参考文献

1）島田能史，松尾仁之，小林　孝：グリセリン浣腸により直腸穿孔と溶血をきたした一症例．新潟医学会雑誌 118：17-20，2004

2）大城望史，福田康彦，水沼和之，他：グリセリン浣腸後に直腸穿孔，直腸周囲膿瘍を来たした維持血液透析患者の1例．日本大腸肛門病会誌 61：127-131，2008

3）佐藤友威，鈴木俊繁，斉藤英俊，他：ホースを使用した自己浣腸による直腸穿孔の1例．臨外 59：1353-1355，2004

4）信原宏礼，横山雄二郎：自己浣腸による直腸破裂の1例．広島医学 53：605-606，2000

5）高橋章之，中野且敬，井岡二朗，他：胸部皮下気腫で発見された直腸穿孔による後腹膜炎の1例．日臨外医会誌 53：657-661，1992

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7）斎藤征史，兎澤晴彦，須田浩晃，他：グリセリン浣腸による直腸潰瘍及び穿孔の1例．消内視鏡 10：1325-1329，1998

8）杉原　尚：Glyceolによる赤血球溶血．臨血 24：1012-1019，1983

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10）五十州剛，渡辺興治，武藤ひろみ，他：グリセリン浣腸液が原因と考えられた血色素尿の1例．臨麻 15：1489-1490，1991

11）武田利明，石田陽子，川島みどり，他：グリセリン浣腸液と溶血に関するラットを用いた実験的研究　静脈内投与による溶血誘発について．日看研会誌 26：81-88，2003