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文献詳細

雑誌文献

臨床外科65巻1号

2010年01月発行

文献概要

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あとがき

著者: 跡見裕

所属機関:

ページ範囲:P.164 - P.164

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 われわれの世代だと,運動神経のよい者(今では死語か?)は野球をやることが多かった.中学校の校庭では軟式野球部員が実に颯爽と走り回っていた.そのうちの1人には近隣の高校から誘いがあったとのこと.うらやましくも誇らしく思ったものである.田舎の中学からただ1人入学した高校は昔の愛知一中であり,全国中等学校野球大会で優勝もしている.当然のことながら野球部はそれなりに健闘していた.高校2年の時だったか,夏の高校野球大会愛知県予選でいいところまで行ったことがある.勇んで応援に出かけたが,ころっと負けた.その時の捕手が,確か連合の高木前会長であった.

 大学の教養部の友人に野球部部員がいた.最初のオリエンテーションで意気投合したが,その後ほとんど姿を見ない.試験の前に突然現れて,また慌ただしく去っていく.つかまえて話をすると,練習,練習の日々とのことであった.同級生と語らってたびたび応援に行った.当然ながらベンチにも入れないようで,フィールドで彼の活躍ぶりを見ることはなかった.進学した学部が異なることもあり,その友人に会うこともなかった.

 東京6大学野球のリーグ戦は,前季の優勝校と最下位校が開幕戦で相まみえる.何年生の時だったかはっきりしていないが,秋の優勝校は慶應で,春が慶應と東大の戦いとなった.東大のエースは卒業後に中日ドラゴンズに入った井出である.1回戦は井出が投げて東大が勝った.2回戦をラジオで聴く.スイッチを入れると,東大の先発は驚く事なかれ,なんと友人ではないか.彼は4回まで慶應を押さえ,その後,井出が連投して慶應から勝ち点を挙げたのである.彼が野球部生活で最も輝いた時であった.

 最近,彼を交えて昔からの仲間でよくゴルフをするが,話題は慶應に連勝した時のことになる.ラジオの解説者が彼の投球を評して,「これだけ球が遅くて荒れていると,さすがの慶應も打てませんね」と言ったと私の記憶にある.彼はそれは違う,「球が速くて」と言ったはずと頑張る.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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