文献詳細
書評
篠原 尚,水野惠文,牧野尚彦(著)「イラストレイテッド外科手術(第3版)膜の解剖からみた術式のポイント」 フリーアクセス
著者: 北川雄光1
所属機関: 1慶大・外科学
ページ範囲:P.1371 - P.1371
文献概要
さて,食道癌根治術を安全かつ確実に行うためには,大血管や気道系,神経系が複雑に交錯する縦隔解剖の理解が必須である.時として術野では見えない部分の解剖を頭の中に描きながら手術を進めなければならない.直接臓器を触知できない胸腔鏡下手術や,切除可能性が危ぶまれる化学放射線療法後のサルベージ手術の場合などは局所解剖の理解不足が重篤な臓器損傷に直結する.立体的な解剖をどう理解させるかは,食道癌根治術経験の少ない若手を指導する際には最も難しいところである.本書では,正常解剖を適切な角度から巧みに紹介した上で,必要な牽引,術野展開を加えた際の位置関係の変化を順次提示している.この手法が複雑な解剖を極めてわかりやすくしている大きな要因である.また,いつもながら最小限の描線で立体感,臨場感のあるイラストに仕上げる技術はまさに圧巻である.写実的なデッサンではなく明瞭なしかも一定のルールに基づいた線や点,色調の濃淡で立体解剖を巧みに描出する技術は驚愕に値する.
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