icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床外科65巻10号

2010年10月発行

勤務医コラム・17

授業というより講談

著者: 中島公洋1

所属機関: 1慈仁会酒井病院外科

ページ範囲:P.1399 - P.1399

文献概要

 看護学校の講師を引き受けた.大先輩から,「中島くん,アンタもいい年だから,自分のことばかりじゃなくてこういう仕事もやってみなさい」とのお言葉を頂戴し,「ハハ~ッ」とお引き受けしたのだ.

 始めてみると知らないことばかりで,自分で自分にあきれる.ほんの何年か前までmajorな手術をたくさんやって何でもわかっているつもりになっていたのに,いざ生徒の前に立つと,何にもわかっていないと知った.「なぜ赤血球には核がないの?」「血液の付着したガーゼは何廃棄物?」「DNAとRNAの違いは?」……生徒に尋ねられてウッと言葉につまる.いつもお茶を濁してばかりで我ながら情けない.今日も,感染予防と隔離の話から,昔の癩病の話へと飛び火し,ついには松本清張の「砂の器」や,関ヶ原前夜における大谷吉継・石田三成の友情について,延々と熱く語ってしまった.勉強の話のときは机に突っ伏して眠っている生徒が,私の話があらぬ方向へ熱を帯びてきた途端に,ムクッと起き上がって聴いている.いかん,授業というより講談になっている…….こんなことでは試験も脱線しそうで恐い.「先生,へんな問題出したら大ブーイングやからね」と生徒に念押しされ「ハイ」と答える私.どっちが先生なのか?

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら