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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科65巻11号

2010年10月発行

雑誌目次

特集 外科医のための大腸癌の診断と治療

著者: 渡邉聡明

ページ範囲:P. - P.

 現在,わが国では大腸癌が増加傾向を示しており,癌による死因の臓器別分類のなかでも,男女ともに上位を占めている.したがって,大腸癌の早期診断および治療の重要性が増しているが,一方,近年の大腸癌の診断・治療では様々な進歩が認められており,適切な診断・治療を行うためには,これらの変化を十分に理解し,それらを臨床現場にフィードバックして診療にあたる必要がある.そこで今回,最新の知見を含めた現在の大腸癌診療に必要な情報をコンパクトにまとめ,この1冊で日常臨床に必要な情報が得られるような特集を組んだ.

 具体的には,わが国における大腸癌の疫学,病理学的あるいは分子生物学的にみた大腸癌の発生,診断面では,進歩が著しい画像強調診断を含めた内視鏡診断,3D-CT,MR colonographyなどの最新の放射線診断,腫瘍マーカーなどについて取り上げ,さらに,炎症を背景とした大腸癌や遺伝性大腸癌など,通常の大腸癌とは異なる特殊な発癌過程をたどる大腸癌についても紹介していただいた.

1.大腸癌の基礎

大腸癌の疫学

著者: 笹月静 ,   津金昌一郎

ページ範囲:P.2 - P.7

■生活様式の欧米化と日本人の大腸癌の関連性は分析疫学研究の結果を待たなければならない.

■大腸癌の国内評価はいまだ十分ではない.

■大腸癌予防のためには喫煙と飲酒を避けなければならない.

大腸癌の病理

著者: 落合淳志

ページ範囲:P.8 - P.15

■大腸癌の病理について,「大腸癌取扱い規約」(第7版補訂版)をもとに,大腸癌の病理組織,肉眼像,およびその取り扱いに必要な情報,生検組織分類であるグループ分類とヴィエナ分類との違いを記載した.

■早期癌の深達度は患者治療の判定に用いられることがあり,病変の肉眼型によって癌の深達度の測定法が異なることに注意する必要がある.また,リンパ節転移に関わる組織像として脈管侵襲および簇出がある.

■グループ分類はこれまでの病変の異型度から病変の質の診断に用いることになった.一方,ヴィエナ分類は国際的に病理診断の共通性を示すためのカテゴリー分類であり,それぞれの国における病理診断とは異なる.

大腸癌の組織発生と発育進展様式

著者: 味岡洋一

ページ範囲:P.16 - P.21

■大腸癌の組織発生には,(1)腺腫の癌化,(2)de novo発癌,(3)鋸歯状ポリープの癌化,(4)炎症性発癌の4つの経路がある.

■炎症性腸疾患を併存しない大腸癌の多くは表面型M癌を初期病変とする可能性が高い.

■炎症性発癌では,平坦または周囲との境界が不明瞭なM病変を初期病変とする可能性が高い.

分子生物学からみた大腸癌の発生

著者: 山本英一郎 ,   鈴木拓 ,   豊田実 ,   今井浩三

ページ範囲:P.22 - P.27

■大腸癌の発生においてはジェネティック,エピジェネティックな異常が密接に関連する.

■新たな発癌経路としてのserrated pathwayが提唱されている.

■癌幹細胞を標的とする画期的な治療法の開発が期待されている.

2.大腸癌の診断

通常内視鏡―通常内視鏡による早期大腸癌の診断

著者: 河野弘志 ,   鶴田修 ,   前山泰彦 ,   野田哲裕 ,   長田修一郎 ,   有田桂子 ,   長谷川申 ,   中原慶太 ,   光山慶一 ,   安元真希子 ,   秋葉順 ,   佐田通夫

ページ範囲:P.30 - P.37

■大腸腫瘍性病変において,腺腫・癌鑑別の質的診断に関しては陥凹や二段隆起,色調不均一などの所見,特に陥凹の有無に着目して診断を行う.

■癌の深達度診断に関しては,病変の伸展性や病変表面の性状,病変周囲正常粘膜の伸展不良所見などの有無に着目して診断を行う.

■確定診断に迷う病変に対しては積極的にNBIやpit pattern観察,超音波内視鏡などの検査手段を用いて診断を行う.

色素内視鏡

著者: 佐田美和 ,   小林清典 ,   迎美幸 ,   横山薫 ,   小泉和三郎

ページ範囲:P.38 - P.44

■色素散布を行う前に,病変部に付着した残渣や粘液を除去しておく必要がある.

■色素内視鏡にはコントラスト法と染色法がある.

■色素内視鏡は大腸癌の存在診断のみならず,範囲診断や質的診断にも有用である.

拡大観察―pit pattern,NBIを含めて

著者: 工藤進英 ,   和田祥城

ページ範囲:P.45 - P.53

■色素拡大内視鏡:大腸のpit patternは,I型,II型,IIIL型,IIIS型,IV型,V型の6つに分類される.V型はさらにVI型,VN型に亜分類され,癌腺管の増殖によってpitが不規則になった状態がVI型,さらに癌の粘膜下層への深部浸潤によってdesmoplastic reactionが露出した状態がVN型である.

■NBI拡大内視鏡:大腸のvascular patternは,normal,faint,network,dense,irregular,sparseの6つに分類される.Irregular patternは隆起型,sparse patternは陥凹型の癌,特にSM深部浸潤癌に特徴的な所見であるが,治療方針の決定の際にはpit pattern診断を併用することが望ましい.

■拡大内視鏡観察の方法:拡大観察の際には,病変固有の特徴を捉えながら,遠景から近景へ拡大率を徐々に上昇させて計画性のある観察を行うことが重要である.

画像強調診断―NBI,AFIなど

著者: 岩館峰雄 ,   服部三太 ,   蓮池典明 ,   佐野亙 ,   一柳明弘 ,   生本太郎 ,   小高雅人 ,   佐野寧

ページ範囲:P.54 - P.63

■NBI,AFIの発見率の向上についてはcontroversialであり,さらなる検討が必要である.

■NBI,AFIは腫瘍/非腫瘍の鑑別や大腸腫瘍の質的診断(腺腫/癌)に臨床応用できる可能性が十分にある.

■今後はNBI,AFIの効果とlearning curve,inter-intra observer variabilityなどの関係を検討していく必要がある.

超音波内視鏡検査

著者: 大竹陽介 ,   吉永繁高 ,   山口裕一郎 ,   斎藤豊

ページ範囲:P.64 - P.70

■超音波内視鏡検査は手技が煩雑なため,複数の検者が協力し,ディスカッションしながら走査を進める.

■深達度診断を決定する画像が得られたら,その後,数回反復して走査を行って再現性を確かめる.

■第三者がみても納得できるような画像の描出を心がける.

CT colonography

著者: 飯沼元 ,   荒井保明 ,   村松幸雄 ,   森山紀之

ページ範囲:P.71 - P.82

■マルチスライスCTを用いたCT colonographyは安全に実施することが可能であり,検査の処理能力に優れ,診断法の標準化が可能である.

■CT colonographyの多彩なデジタル画像表示の組み合わせによって効果的な大腸癌術前診断が可能である.

■デジタル前処置やCADの精度向上によって,CT colonographyは大腸スクリーニングにおいても重要な診断法になると予想される.

MR colonography

著者: 細沼知則

ページ範囲:P.83 - P.87

■MR colonographyはCT colonographyと違い,放射線の被曝がない.

■Fecal tagging法を用いたdark lumen MR colonographyの実際を述べる.MR colonographyは検査前にバリウム造影剤を経口摂取し,腸内残存物の信号を低下させる方法である.

■スクリーニングの精度と問題点を述べる.10mm以上のポリープでは感度と特異度はそれぞれ93%と96%であった.5mm以下のポリープは検出し得なかった.

MRI検査

著者: 三宅基隆 ,   飯沼元 ,   荒井保明 ,   森山紀之 ,   杉村和朗

ページ範囲:P.88 - P.95

■MRIは大腸癌診断において直腸癌の診断に用いられる.

■High-resolution MRIは原発巣の評価みならず骨盤内の詳細な情報を提供できるため有用である.

■拡散強調画像や高磁場装置である3.0T MRI装置の臨床への導入が進み,直腸癌診断における有用性が報告されつつある.

3D-CT angiography―腹腔鏡下大腸癌手術に対する術前シミュレーション

著者: 松木充 ,   稲田悠紀 ,   金澤秀次 ,   中井豪 ,   立神史稔 ,   鳴海善文 ,   近藤圭策 ,   田中慶太朗 ,   奥田準二 ,   谷川允彦

ページ範囲:P.96 - P.104

■腹腔鏡下大腸癌手術を安全かつ迅速に施行するうえで3D-CT angiographyは術前マッピングとして有用であり,われわれはこれを“virtual CT laparoscopy”と呼んでいる.

■CTなどによるサイズや形態に基づいた従来のリンパ節診断には限界があり,今後,MRIリンパ節特異性造影剤であるsuperparamagnetic iron oxide(USPIO)などによる機能評価が注目される.

■将来,リンパ節特異性造影剤を用いたMRIによる精度の高いリンパ節診断がvirtual CT laparoscopyに付加されるとテーラーメイドのリンパ節郭清も可能になり,より低侵襲な腹腔鏡下手術に寄与するものとして期待される.

PET,PET/CT

著者: 村上康二

ページ範囲:P.105 - P.113

■CTやMRIが形態を画像化するのに対して,FDG-PETは腫瘍の糖代謝の活性を画像化する診断法である.

■FDG-PETには生理的集積が多いので,読影では集積の強さだけでなく分布や形状にも注意する.

■PET,PET/CTは原発巣の評価というよりも,転移巣や再発巣,重複癌の発見などに有用性が高い.

腫瘍マーカー

著者: 八島玲 ,   大木進司 ,   小山善久 ,   竹之下誠一

ページ範囲:P.114 - P.120

■臨床の現場で頻用されている大腸癌の腫瘍マーカーを基礎的なバックグラウンドも含めて紹介する.

■大腸癌に関連するガイドラインにおける腫瘍マーカーの取り扱いについても解説する.

■血清p53抗体値などの新しく保険適用になった腫瘍マーカーも紹介する.

3.特殊な大腸癌の病態と治療方針

家族性大腸腺腫症

著者: 小泉浩一

ページ範囲:P.122 - P.131

■100個以上の腺腫性ポリープを認め,APC遺伝子変異が認められれば家族性大腸腺腫症と確定診断されるが,鑑別すべき疾患がある.

■治療の原則は大腸全摘術である.ポリープの数と大きさによっては,当面は手術的治療を待機できる可能性がある.

■大腸病変以外に,術後のデスモイド腫瘍や十二指腸腫瘍が高頻度に発生する.全身疾患としての管理が必要である.

リンチ症候群

著者: 松原長秀

ページ範囲:P.132 - P.139

■診断には,まずベセスダ診断基準をもとに疑い患者を拾い上げる.

■つぎに,保険収載されたMSIテストで陽性であれば遺伝子検査を行う.

■関連癌の発見には臨床症状を逃さないことが重要である.

遺伝カウンセリング

著者: 武田祐子

ページ範囲:P.140 - P.146

■遺伝カウンセリングは,若年性,多重性,家族集積性という特徴を示す遺伝性腫瘍の癌の対策に不可欠である.

■遺伝カウンセリングは遺伝性腫瘍の診断と,生涯にわたる世代を超えたフォローアップに有用である.

■癌の遺伝カウンセリングでは遺伝学だけではなく,癌の臨床に関する専門知識が必要である.

Colitic cancer

著者: 松田圭二 ,   渡邉聡明

ページ範囲:P.148 - P.156

■潰瘍性大腸炎は大腸癌のハイリスク群であり,特に罹病期間と罹患範囲が主なリスクファクターである.

■Dysplasiaの存在は前癌病変としての意義のみならず,癌のハイリスクグループとしても重要な意味を持つ.

■サーベイランス大腸内視鏡検査は,dysplasiaを見つけ,進行癌に至る前に治療を行うという戦略である.

痔瘻癌

著者: 池内浩基 ,   内野基 ,   松岡宏樹 ,   坂東俊宏 ,   竹末芳生 ,   冨田尚裕

ページ範囲:P.157 - P.162

■痔瘻癌の早期診断は困難であり,疑わしい症例では麻酔下での繰り返しての生検が必要である.

■遠隔転移は少ないとの報告もあり,局所の制御が重要となるため,広範囲切除が必要である.放射線化学療法が併用されることもある.

■クローン病の肛門管癌では直腸型癌と痔瘻癌に分けて取り扱うことが必要である.

4.大腸癌の内視鏡治療

SM癌の治療方針

著者: 田中信治 ,   金尾浩幸 ,   大庭さやか ,   濱田康彦 ,   中土井鋼一 ,   寺崎元美 ,   岡志郎 ,   茶山一彰

ページ範囲:P.164 - P.171

■cSM癌では,摘除生検としての内視鏡治療の適応のある病変を術前に判別することが重要である.

■癌は一括摘除が原則であり,分割EMRを施行する際はpit pattern診断などで癌部と腺腫部分を鑑別する必要がある.

■内視鏡摘除pSM癌の追加切除に際しては,リンパ節転移リスクと患者背景を総合的に評価して患者とともに方針を決定する.

ポリペクトミー,内視鏡的粘膜切除術

著者: 山野泰穂 ,   吉川健二郎 ,   木村友昭 ,   澤谷学 ,   高木亮 ,   原田拓 ,   阿部太郎 ,   徳竹康二郎 ,   奥宮雅代 ,   中岡宙子 ,   鈴木亮 ,   佐藤健太郎

ページ範囲:P.172 - P.179

■大腸内視鏡治療は,適応病変,安全性,保険収載などの面から考えて,従来から行われているポリペクトミーやEMRが主流であり,この傾向は将来とも変わらない.

■すべての内視鏡医がポリペクトミーやEMRを標準的レベルで行えているわけではなく,適応から安全に施行する実手技,術後偶発症までを十分に理解する必要がある.

■正確な内視鏡診断のもと,治療の実際ではデバイスの選択,位置どり,局注,スネアリングなどについて理論に基づいた理解をする必要がある.

■正しい病理組織診断を行えるように標本の取り扱いに注意をし,また,術者自身が病理結果を確認しなければならない.

内視鏡的粘膜下層剝離術

著者: 森田圭紀 ,   豊永高史 ,   東健

ページ範囲:P.180 - P.188

■ESDによって,EMRでは切除が困難であった大型大腸病変も一括切除することが可能となったが,技術的難易度は高い.

■大腸ESDの適応は大腸ESD標準化検討部会を中心に検討されているが,直腸病変が最もよい適応である.

■今後,大腸ESDの均てん化に向けて,トレーニングシステムの確立や機器開発などさらなる努力が必要である.

5.大腸癌の外科治療 ■外科治療総論

直腸癌手術に必要な骨盤内解剖

著者: 絹笠祐介

ページ範囲:P.190 - P.196

■直腸癌の手術において根治性と機能温存の両立をはかるためには,温存すべき自律神経と直腸周囲の膜構造の理解が必要不可欠である.

■手術で損傷しやすい神経は下腹神経および骨盤内臓神経,骨盤神経叢とその臓側枝である.

■神経温存のメルクマールとなる筋膜は下腹神経前筋膜およびDenonvilliers筋膜である.

術後の直腸肛門機能検査

著者: 山田一隆 ,   緒方俊二 ,   佐伯泰愼 ,   福永光子 ,   高野正太 ,   田中正文 ,   霜村歩 ,   高野正博

ページ範囲:P.197 - P.204

■術後排便機能障害の病態として,便貯留嚢,括約筋機能,直腸肛門反射,便排泄機能の低下が挙げられる.

■臨床症状による評価は,排便回数とともに便失禁をKirwan's grade評価やWexner's scoring評価で行う.

■直腸肛門機能検査として,直腸肛門内圧検査,直腸感覚検査,肛門管感覚検査,排便造影を経時的に行う.

直腸癌に対する化学放射線療法と外科治療

著者: 石原聡一郎 ,   野澤慶次郎 ,   松田圭二 ,   渡邉聡明 ,   井垣浩

ページ範囲:P.206 - P.211

■化学放射線療法の主たる目的は術後局所再発の減少である.

■術前化学放射線療法の主な適応は治療前T3,4の下部直腸癌である.

■化学放射線療法を終了したのち,6~10週後にTME(TSME)を伴う手術を行う.

大腸癌に対する術後サーベイランス

著者: 上野秀樹 ,   橋口陽二郎 ,   神藤英二 ,   長谷和生

ページ範囲:P.212 - P.218

■切除断端が陰性であれば,stage 0のサーベイランスは不要である.

■Stage I~IIIでは,術後5年間を目安とした定期的なサーベイランスを行う.

■原発巣の部位や進行度による再発様式の特徴を考慮したmodalityの選択が重要である.

大腸癌外科治療への分子生物学の臨床応用

著者: 竹政伊知朗 ,   三森功士 ,   水島恒和 ,   池田正孝 ,   山本浩文 ,   関本貢嗣 ,   土岐祐一郎 ,   森正樹

ページ範囲:P.219 - P.227

■大腸癌に対する治療法は多様化しており,今後は分子生物学を臨床応用した個別化医療が求められる.

■個別化医療とは,患者の特性に応じて最大の治療効果と最小の副作用が得られる治療を実践することである.

■特性診断には臨床病理診断,OMICS,遺伝子多型解析に環境要因を加えた相互的解析が必要である.

■開腹手術

回盲部・結腸右半切除術

著者: 廣純一郎 ,   楠正人

ページ範囲:P.228 - P.234

■右側結腸の授動は,Toldtのfusion fasciaと後腹膜下筋膜の層を剥離する.

■Henleの胃結腸静脈幹は,牽引による血管損傷が起きやすく止血困難なため,牽引には十分に注意する.

横行結腸切除術

著者: 堀江久永 ,   熊野秀俊 ,   宮倉安幸 ,   安田是和

ページ範囲:P.235 - P.239

■上腸間膜動脈系は,下腸間膜動脈系と比較し走行変異が多いため,リンパ節郭清,腸管切除範囲決定時は注意が必要である.

■中結腸静脈にも変異が多く,胃結腸静脈幹に流入する場合や中結腸静脈が複数本存在する場合もある.

■腸管吻合部の緊張は術後のトラブルの原因となるため,両彎曲部の授動が重要である.

左半・S状結腸切除術

著者: 吉永敬士 ,   掛地吉弘 ,   佐伯浩司 ,   森田勝 ,   前原喜彦

ページ範囲:P.240 - P.246

■横行結腸,S状結腸は可動性のある臓器であるが,下行結腸は後腹膜に固定されており,その授動には正確な解剖学的知識が必要である.

■悪性腫瘍の手術では大腸癌取扱い規約にあるように,その支配動脈との腫瘍の位置関係で術式が決まる.

■下腸間膜動脈からの分岐にはバリエーションがあるので,分岐のパターンおよび頻度を熟知しておく必要がある.

低位前方切除術

著者: 樋口哲郎 ,   小林宏寿 ,   榎本雅之 ,   飯田聡 ,   石川敏昭 ,   石黒めぐみ ,   加藤俊介 ,   植竹宏之 ,   杉原健一

ページ範囲:P.248 - P.255

■S状結腸,直腸の剥離授動:骨盤内という視野のとりにくい術野のため,十分な外科解剖知識・経験が必要となる.正しい剥離層で剥離授動していくことが,安全な手術,術後機能障害の回避,また術後局所再発を減らすための正しい腫瘍学的切除範囲を行うことにつながる.

■吻合:切離,吻合に使用するリニア・ステイプラーおよびサーキュラー・ステイプラーにはデバイスごとに特性があるので,それぞれの特徴を理解して正しく使用することが,縫合不全を予防するうえで大変重要である.

括約筋切除による肛門温存手術

著者: 赤木由人 ,   白水和雄 ,   衣笠哲史 ,   石橋生哉 ,   田中克明 ,   白土一太郎 ,   龍泰彦 ,   吉田武史 ,   五反田幸人 ,   弓削浩太郎

ページ範囲:P.256 - P.263

■歯状線から口側にある腫瘍の肛門側進展はきわめて低率で,挙筋群や外肛門括約筋への浸潤は少ない.

■癌の浸潤が内肛門括約筋を超える(T3,T4)と疑われたら,部分的あるいは広範囲の外肛門括約筋切除(ESR)を行うが,切除後の病理診断では浸潤は小範囲にとどまっていることが多い.

■腹腔側からは直腸壁と肛門挙筋群との境界が不明であるが,腹腔側から1cmでも剥離をしておくと,後の経肛門操作が非常に容易となる.

■結腸肛門吻合は狭骨盤,肥満,分厚い腸間膜,大きな脂肪垂の症例では,腸管がスムースに肛門管を通過せず,圧迫による血流障害が起こりやすく縫合不全の確率が高くなる.

腹会陰式直腸切断術

著者: 平井孝 ,   金光幸秀 ,   小森康司

ページ範囲:P.264 - P.270

■開腹および会陰操作では,術野の展開が最も重要である.骨盤内直腸の剥離には,各種の幅および長さの鉤を使い分けて,術野を展開し,剥離を進める層と切離する組織を直視下に視認して操作を進めることが最も重要である.

■骨盤臓側筋膜,自律神経の含まれる尿管下腹筋膜,壁側筋膜,Denonvilliers筋膜,直腸仙骨筋膜,挙筋上腔,perineal body,恥骨直腸筋,neurovascular bundleを解剖のポイントとして,出血の少ない,層に沿った切除を行うことで,癌遺残の少ない手術が期待できる.

進行直腸癌に対する骨盤内臓全摘術

著者: 舟田知也 ,   稲田涼 ,   山本聖一郎 ,   藤田伸 ,   赤須孝之 ,   森谷冝皓

ページ範囲:P.271 - P.277

■骨盤内臓全摘術は,適切な手術適応と正確な手術手技により,進行・再発直腸癌を根治できる唯一の治療法である.

■手術に際しては術者,助手,看護師のいずれも十分な知識と経験が要求される.

■術後の管理は非常に重要で,注意深く慎重に管理するべきである.

大腸全摘術―潰瘍性大腸炎,家族性大腸腺腫症

著者: 飯合恒夫 ,   亀山仁史 ,   野上仁 ,   畠山勝義

ページ範囲:P.278 - P.284

■大腸全摘,回腸嚢肛門(管)吻合術は,10cm程度の大きさの小開腹でも施行可能である.視野が十分とれないときは,安全性を考慮し,創の大きさにこだわる必要はない.

■直腸の剥離は,直腸癌に対する直腸間膜切除のラインよりやや浅め(直腸寄り)に行うと自律神経を損傷しない.

■回腸嚢肛門(管)吻合に緊張がかからないようにするためには,小腸間膜の十分な剥離操作が重要である.

側方郭清術―予防的側方郭清と治療的側方郭清

著者: 小山基 ,   森田隆幸 ,   村田暁彦 ,   坂本義之 ,   諸橋一 ,   袴田健一

ページ範囲:P.285 - P.291

■合理的かつ効果的な側方郭清を行うためには,骨盤内の局所解剖の理解が不可欠である.

■腹膜外アプローチにより,閉鎖神経や内腸骨動脈とそれらの分枝を確認しながら側方リンパ節転移の有無を確認する.

■骨盤神経叢に直接浸潤がある例や側方転移が明らかな例では,骨盤神経叢と内腸骨動脈の血管を合併切除する.

J-pouch,Coloplasty

著者: 松岡弘芳 ,   正木忠彦 ,   植木ひさよ ,   小林敬明 ,   佐藤和典 ,   杉山政則 ,   跡見裕

ページ範囲:P.292 - P.295

■吻合部が肛門縁4cm以内では,J-pouchまたはcoloplastyによるパウチオペレーションを行う.

■J-pouchは長さ5cmほどの小さめのパウチにする.

■Coloplastyでは,新直腸内腔確保のためGambee縫合にて形成を行う.

■腹腔鏡下手術

回盲部切除術

著者: 花井恒一 ,   前田耕太郎 ,   升森宏次 ,   松岡宏 ,   勝野秀稔

ページ範囲:P.296 - P.304

■限られた空間のなかで,術者と助手が連携して術野展開し,良視野をつくる.

■2次元画像下で解剖学的な理解とメルクマールを作成し,2次元画像の欠点を補う工夫をする.

■遊離癌細胞散布を最小限に抑える操作を遵守すること.

右半結腸切除術

著者: 猪股雅史 ,   白下英史 ,   衛藤剛 ,   安田一弘 ,   白石憲男 ,   北野正剛

ページ範囲:P.305 - P.311

■腹腔鏡下右半結腸切除術の剥離授動では,回結腸動静脈幹,後腹膜下筋膜,十二指腸水平脚,上腸間膜静脈がランドマークである.

■Surgical trunkの郭清では,中結腸動静脈系のバリエーションが多く,術前画像による血管走行の把握や術中の安全な血管剥離・露出の工夫が必要である.

■安全な吻合のためには,後腹膜からの腸管の十分な授動と副右結腸静脈の腹腔内での切離,小切開創からの速やかな機能的端々吻合が重要な手技である.

横行結腸切除術

著者: 西澤雄介 ,   伊藤雅昭 ,   小林昭広 ,   杉藤正典 ,   齋藤典男

ページ範囲:P.312 - P.318

■横行結腸癌に対する腹腔鏡下結腸切除術は高難度であり,習熟度を十分に考慮して適応を決定すべきである.

■郭清操作は繊細さが要求されるので術者は左右自由な2本の鉗子が必要であり,術者の鉗子が術野展開に使用されてはならない.

■郭清に際しメルクマールとなる構造物は十二指腸水平脚とTreitz靱帯を結ぶ仮想線である.

左半・S状結腸切除術―そのコツとピットフォール

著者: 大塚幸喜 ,   板橋哲也 ,   木村聡元 ,   箱崎将規 ,   加藤久仁之 ,   藤井大和 ,   片桐弘勝 ,   梅邑晃 ,   木村祐輔 ,   新田浩幸 ,   肥田圭介 ,   水野大 ,   佐々木章 ,   若林剛

ページ範囲:P.319 - P.325

■腹腔鏡下大腸癌手術のなかでS状結腸癌に対する手技は,日本内視鏡外科学会技術認定医試験の大腸部門でのテーマとなっており,最も基本的な手術として認識されている.

■その手技には開腹手術とは違う腹腔鏡手術特有のコツやピットフォールが存在し,それを実践できるか,または回避できるかで手術時間や出血量,さらに合併症や偶発症に大きく関係する.

低位前方切除術

著者: 奥田準二 ,   田中慶太朗 ,   近藤圭策 ,   浅井慶子 ,   茅野新 ,   山本誠士 ,   谷川允彦

ページ範囲:P.326 - P.335

■低位前方切除ではステイプラー(echelon60 GOLD)を挿入する右下腹部ポートをできるだけ尾側に位置させることが重要となる(ストレートステイプラーでも下部直腸に直交してかけやすくなる).

■左右の挙筋上腔を広く展開し,骨盤内臓神経(S3,4)および骨盤神経叢本幹を損傷しないように,直腸間膜寄りで側方靱帯を処理して下部直腸を肛門管直上まで十分授動する.

■肛門管近傍の超低位での直腸切離例では直腸間膜が薄くなって間膜処理が不要になるが,低位前方切除例の多くでは適切な直腸間膜処理が後の均一で確実なsingle-fireでの直腸切離につながる.

術前化学放射線療法後の低位前方切除術

著者: 黒柳洋弥

ページ範囲:P.336 - P.341

■術前化学放射線療法の施行症例で,組織の線維化のために剥離層が不明瞭になっている場合では,あたかも彫刻するように切開剥離して,通常症例と同様のランドマークを確認していくことが重要である.

■ランドマークとしては,上下腹神経叢~下腹神経~骨盤神経叢~Neurovascular bundle,精嚢・Denonvillier筋膜,肛門挙筋筋束などが挙げられる.

■場所に応じた適切な視野展開のもとで剥離を行い,多く出てくる滲出液を適宜吸引しながら,できるだけクリーンでドライな視野を確保する.

内肛門括約筋切除術―特に進行直腸癌に対する術前治療後の肛門温存について

著者: 堤荘一 ,   浅尾高行 ,   桑野博行

ページ範囲:P.342 - P.346

■内肛門括約筋切除術:下部直腸から肛門管に存在する直腸癌に対して,内肛門括約筋切除を伴う腹肛門式直腸切除術が行われるようになった.

■術前温熱化学放射線治療:局所進行直腸癌に対して術前治療を行い,down stage後に肛門温存手術を行っている.

■腹腔鏡下直腸切除術:術前治療を行うことにより直腸の安全な剥離面と切離断端の確保が可能であり,術後局所再発の制御が可能と考えられる.

直腸切断術

著者: 野村明成 ,   長谷川傑 ,   川村純一郎 ,   河田健二 ,   肥田侯矢 ,   坂井義治

ページ範囲:P.347 - P.358

■狭空間深部の拡大視を共有できるという腹腔鏡手術の利点を最大限に活用するためには,術者と助手の協調操作による“2面間の適切な緊張の維持”と“切離線・剥離面の提示”が不可欠である.

■直腸固有筋膜と自律神経系を隔てる境界膜である下腹神経前筋膜,そしてDenonvilliers筋膜が,“今どこを剥離しているか”を認識し適切な剥離層を選択するためのランドマークである.

■会陰操作は,直腸前方の視野が良好であるJack-knife位で行う.先に肛門側から口側に向けて外肛門括約筋の外側(腹側)で肛門管前方の剥離を行い,次に口側から直腸前方剥離層を連結させる.男性では尿道バルーンカテーテルを,女性では内診を手掛かりにして,尿道や腟壁の損傷を回避する.

大腸全摘術―潰瘍性大腸炎,家族性大腸腺腫症

著者: 内藤正規 ,   佐藤武郎 ,   小澤平太 ,   池田篤 ,   小倉直人 ,   小野里航 ,   中村隆俊 ,   渡邊昌彦

ページ範囲:P.359 - P.363

■愛護的な鉗子操作を心掛けて,視野確保のために体位変換を利用する.

■大腸の剥離・授動を十分に行ってから結腸間膜を処理することで,他臓器損傷を回避する.

■骨盤内の神経を確実に温存するために,直腸の剥離を,直腸固有筋膜と下腹神経前筋膜の間の層で行い,左右の膀胱直腸間隙に連続させる.

側方郭清術

著者: 福永正氣 ,   永仮邦彦 ,   菅野雅彦 ,   李慶文 ,   須田健 ,   飯田義人 ,   吉川征一郎 ,   伊藤嘉智 ,   勝野剛太郎 ,   大内昌和 ,   平崎憲範 ,   津村秀憲

ページ範囲:P.364 - P.373

■腹腔鏡下側方郭清術は一部の施設で導入している段階で,現状では標準的な術式ではない.

■直腸癌に対する腹腔鏡下手術の適応拡大が進み,側方郭清の適応がさらに明確化すれば腹腔鏡下手術の視認性の良さと拡大視効果が威力を発揮できる可能性がある.

■LAPの適応の現状と実際の手技のポイントについて概説する.現時点ではLAPに習熟した術者が十分なインフォームド・コンセントのもとで慎重に適応すべき術式である.

■局所手術

直腸癌局所切除―経肛門的切除,傍仙骨的切除,経括約筋的切除

著者: 稲次直樹 ,   吉川周作 ,   増田勉 ,   内田秀樹 ,   久下博之 ,   大野隆 ,   横谷倫世 ,   山口貴也 ,   山岡健太郎 ,   川口千尋 ,   下林孝好 ,   稲垣水美

ページ範囲:P.374 - P.380

■下部直腸・肛門の外科的解剖学に精通する.

■根治的局所切除の対象となる病変は内視鏡的切除が困難な比較的早期の下部直腸癌であり,その適応について十分に検討する.

■経肛門的切除,傍仙骨的切除,経括約筋的切除のそれぞれの術式に精通し,その特徴を把握,排便機能障害を少なくし“過不足ない切除”に努める.

経肛門的内視鏡下マイクロサージェリーによる直腸局所切除

著者: 金平永二 ,   塩澤邦久

ページ範囲:P.381 - P.388

■経肛門的内視鏡下マイクロサージェリー(TEM)は直腸M癌に対する超低侵襲手術治療である.肛門縁から15cm程度までが適応となる.

■TEMにおいては双眼の実体顕微鏡を使用するため,極めて精密な3Dの視野の下で精緻な切除・縫合が行える.

■TEMの術後合併症発生率は非常に低く,筆者らは重篤なものは経験していない.

■その他の手術

ストーマ造設・閉鎖とストーマ管理

著者: 吉岡和彦 ,   徳原克治 ,   岩本慈能 ,   中根恭司 ,   權雅憲

ページ範囲:P.389 - P.393

■人工肛門の種類によって手術に対する考え方が異なる.

■一時的人工肛門であっても,患者のQOLに影響を与える.

■ストーマ管理には,ストーマナースとの協力が不可欠である.

大腸癌イレウス治療―一期的治療をめざして

著者: 角田明良 ,   加納宣康 ,   中路聡 ,   平田信人

ページ範囲:P.394 - P.400

■閉塞性左側大腸癌に対する手術は,術中腸管洗浄や結腸亜全摘によって,一期的切除・再建術が可能になった.

■今後,ステント治療や経肛門的イレウス管留置でイレウス解除後に待機的手術を行うことが期待される.

■実際の治療では,術前状態,閉塞部位,他科との連携などを総合的に判断して,治療方針を決定すべきである.

6.Stage Ⅳ大腸癌の治療方針

肝転移を伴うStage Ⅳ大腸癌の治療方針

著者: 小林宏寿 ,   榎本雅之 ,   樋口哲郎 ,   植竹宏之 ,   飯田聡 ,   石川敏昭 ,   石黒めぐみ ,   加藤俊介 ,   小野宏晃 ,   菊池章史 ,   山内慎一 ,   杉原健一

ページ範囲:P.402 - P.407

■肝転移を有するStage IV大腸癌の治療成績は,現時点では原発巣ならびに肝転移に対する外科的切除術が最も良い.

■発見時に切除不可能な肝転移を有する場合でも,全身化学療法によって切除可能となることがある.

■大腸癌肝転移に対しては,症例に応じて外科的切除以外にも,全身化学療法,肝動注療法,熱凝固療法などが治療に用いられる.

肺転移を伴うStage Ⅳ大腸癌の治療方針

著者: 板橋道朗 ,   廣澤知一郎 ,   亀岡信悟

ページ範囲:P.408 - P.413

■肺転移を伴うStage IV大腸癌の治療方針は,肺転移,原発巣,肺以外の遠隔転移の有無などを総合的に判断して決定する.

■転移巣および原発巣がともに根治的切除が可能であるならば積極的に切除を考慮するが,肺切除後の予後因子が明らかになっていないことを考慮して適応を決定する.

■予後因子を分析して,肺切除の適応を明らかにすることが急務である.肺転移についても肝転移と同様に,転移のgradingが必要である.

腹膜播種を伴うStage Ⅳ大腸癌の治療方針―特に外科治療について

著者: 矢野秀朗 ,   ,   合田良政 ,   熊澤慶吾 ,   須田竜一郎 ,   三宅大 ,   齋藤幸夫

ページ範囲:P.414 - P.420

■腹膜播種は大腸癌全体の約5%にみられ,肝転移に次いで多い(同時性)転移形式である.

■大腸癌腹膜播種に対して,腹膜切除を伴う完全減量手術と術中温熱化学療法による積極的治療を行うことにより良好な成績が得られるとの報告が欧米のいくつかの施設からなされており,今後わが国においても検討の余地がある.

■腹膜偽粘液腫に対しては,腹膜切除を伴う完全減量手術と術中温熱化学療法が有効で,わが国における診断治療体系の早期確立が望まれる.

7.大腸癌の化学療法

大腸癌化学療法における標準的治療

著者: 西谷仁 ,   島田安博

ページ範囲:P.422 - P.427

■切除不能進行・再発大腸癌に対する標準治療は確立されている.各種ガイドラインを参照し,患者に適切な治療法の選択が必要である.

■今後解決すべき化学療法の問題点は,分子標的治療薬に対するバイオマーカー検索,転移巣切除の際の「切除不能」の定義,高齢者対象のレジメン,医療費などが挙げられる.

大腸癌における術後補助化学療法

著者: 室圭

ページ範囲:P.428 - P.436

■術後補助化学療法における5年OSと3年DFSの強い相関性が認められ,プライマリーエンドポイントが3年DFSとするrationaleとなっている.

■わが国における術後補助化学療法は,5-FU+LV,UFT+LV,カペシタビン,FOLFOX4またはmFOLFOX6療法が推奨され,6か月間投与が原則である.

■欧米では3つのRCTの結果,FOLFOX療法(L-OHPを含む治療)が第一の標準治療となっており,わが国での本治療の成績(基礎データ)が必要である.

大腸癌化学療法における分子標的治療薬の役割

著者: 瀧内比呂也

ページ範囲:P.437 - P.443

■大腸癌化学療法の治療戦略は,CareとCureとに大きく2大別することができる.

■一次治療における3つの検証試験の結果から,抗VEGF抗体薬に比べると抗EGFR抗体薬のほうが,奏効率において上乗せ効果があることが示唆される.

■ICACT2009のコンセンサスでは,Cureが治療目標の患者がwild typeであれば,標準治療レジメンにセツキシマブを併用する.もしmutant typeであればベバシズマブを併用することが推奨されている.

大腸癌化学療法の副作用対策

著者: 松田健二 ,   森脇俊和 ,   兵頭一之介

ページ範囲:P.444 - P.451

■有害事象共通用語規準(CTCAE)に基づいて副作用の種類,程度を見きわめる.

■殺細胞障害性薬剤(FU系薬剤,イリノテカン,オキサリプラチン),分子標的薬剤(ベバシズマブ,セツキシマブ,パニツムマブ)のそれぞれ特徴的な副作用を念頭に置いて対応する.

■事前に防止可能な副作用に対しては,積極的に予防を行う.

外来化学療法の実践法―防衛医科大学校病院腫瘍化学療法部の場合

著者: 市川度 ,   小林隆之 ,   相澤雄介 ,   守岩美紀

ページ範囲:P.452 - P.458

■外来化学療法の実践においては,治療室やリクライニングシートなどのハード面が注目されがちであるが,インフォームド・コンセント,レジメン管理などのソフト面の充実が必要である.

■治療開始前には,十分時間をかけて治療の目的,具体的なレジメン内容,副作用などのインフォームド・コンセントを行って,副作用のセルフケアなどに関して患者教育を行う.

■オーダリング,治療前の患者アセスメントはシステマティックに行い得るが,治療の開始,減量,休薬などの決定については医師の専門性を活かしつつ患者の声に耳を傾けるべきである.

1200字通信・19

がん治療認定医

著者: 板野聡

ページ範囲:P.162 - P.162

 これを書いているちょうど1年前の12月,がん治療認定医機構が行っている「がん治療認定医」の2009年度の認定試験を受けてきました.実は,その年の1月には,2008年度の教育セミナーと認定試験を受け,不合格になっていたのでした.

 この「認定医」のことは,その制度ができたころから知らされてはいましたが,「この歳になって,もうよかろう」と知らん顔を決め込んでいたのでした.しかし,学会や講演会で耳にする御高名な先生方や同門の先輩たちも受験したと聞いて己の怠け心を情けなく感じ,医局の若い先生が受講するのを機会に,私も思い切って受けてみることにしたのでした.

ひとやすみ・65

学会発表における十字砲火

著者: 中川国利

ページ範囲:P.204 - P.204

 臨床医となって30数年がすぎ,多くの学会で演者を務めたが,いまだに鮮明に覚えている学会がある.当時の若い外科医たちによって立ち上げられた胆道外科研究会である.最初の演題には「術中胆道損傷」が取り上げられ,1つのテーマを深く討議することになった.

 私が研修を受けていた病院には,名物外科医であるW先生がボスとして存在した.どんな進行期癌の高齢の患者さんに対しても積極的に切除することをモットーとしていた.また,穿孔性腹膜炎例では消化管切除をしてもドレナージは絶対に行わないなど,当時としては画期的な治療法を行っていた.学会の会場ではしばしば発言を求め,手厳しい質問を浴びせていた.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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