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文献詳細

雑誌文献

臨床外科65巻3号

2010年03月発行

臨床報告

術前診断が困難であった肝硬化性血管腫の1切除例

著者: 吉田月久1 杉町圭史1 祇園智信1 副島雄二1 相島慎一2 武冨紹信1 前原喜彦1

所属機関: 1九州大学大学院医学研究院消化器・総合外科 2九州大学大学院医学研究院形態機能病理学

ページ範囲:P.451 - P.455

文献概要

要旨:患者は75歳,女性で,右乳癌に対する術前検査中に肝腫瘤を指摘された.造影CT,MRIで肝S5/6に早期相で周囲が造影され,遅延相で内部が濃染する径3.7cm大の腫瘍を認めた.FDG-PETでは肝に異常集積はなかった.右乳癌は21mm大の囊胞性病変であり,細胞診ではductal carcinomaと診断された.これらは腺癌に矛盾しない画像所見と考え,肝内胆管癌もしくは乳癌肝転移の診断で肝S5/6部分切除術および右乳房部分切除術を施行した.病理組織学的検査で肝硬化性血管腫と診断され,悪性の所見はなかった.肝硬化性血管腫は稀な疾患であるが,肝乏血性腫瘤の鑑別診断の1つとして認識しておく必要があると考えられた.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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