文献詳細
書評
Mary Dobson(著),小林 力(訳)「Disease人類を襲った30の病魔」 フリーアクセス
著者: 茨木保1
所属機関: 1いばらきレディースクリニック
ページ範囲:P.873 - P.873
文献概要
医学の進歩には「闇」がつきまといます.学者たちはしばしば,疾患の原因を突き止めるためにぞっとするような実験を行ってきました.感染症説を否定しようと,コレラ菌入りのフラスコを飲み干したペッテンコファー,ペラグラの感染を否定するため,患者の汚物を飲んだゴールドバーガー,患者を用いてハンセン病の感染実験をしたために,医学界を追われたハンセン,梅毒の経過を調べるために,患者を無治療のまま追跡調査したアメリカのタスキギー研究……本書はそうした医学の闇についても容赦なく切り込みます.それらには倫理に反する試みも多いのですが,安全で衛生的な社会に生きる現代人は,先人たちの闇の果実の恩恵にあずかっているのだという事実もまた,認めなければなりません.
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