臨床外科65巻7号

2010年07月発行

臨床報告

腹腔鏡下修復術を施行した横行結腸間膜裂孔ヘルニアの1例

著者： 深町伸¹ 中川国利¹ 鈴木幸正¹

所属機関： ¹仙台赤十字病院外科

ページ範囲：P.1027 - P.1030

要旨：患者は83歳の女性で，腹痛および嘔吐を主訴として紹介された．腹部CT検査では胃の背側，横行結腸の頭側に著明に拡張した空腸を認めた．また，空腸間膜の浮腫と収束像を認めたため，横行結腸間膜裂孔ヘルニアを疑った．腹腔鏡下に観察すると，横行結腸間膜に直径3cmの裂孔を認めた．さらに，Treitz靱帯から約80cm肛門側の空腸が嵌入していた．腸把持鉗子で1mほどの空腸を引き出し，裂孔を吸収糸で縫合閉鎖し，腸管切除は行わずに手術を終了した．横行結腸間膜裂孔ヘルニアの術前診断には腹部CT検査が大変有用であり，また，腹腔鏡下手術によって確定診断から治療までを一貫して施行できた．

参考文献

1）Steinke CR：Internal hernia. Arch Surg 25：909-925, 1932

2）高橋英世，永井米次郎：内ヘルニアによるイレウス．小児外科 12：447-453，1980

3）宮崎恭介，佐々木剛志，中村　透，他：腹腔鏡が有用であった横行結腸間膜裂孔ヘルニアの1例．臨と研 78：933-935，2001

4）田中弘之，臼間康博，中川　昇，他：横行結腸間膜裂孔ヘルニアの1例．手術 56：127-131，2002

5）角南栄二，鈴木　聡，三科　武，他：横行結腸間膜裂孔ヘルニアの1例．日消外会誌 37：1491-1496，2004

6）池嶋　聡，倉本正文，生田義明，他：横行結腸間膜裂孔ヘルニアの1例．日消外会誌 41：570-574，2008

7）工藤大輔，鈴木伸作，神　寛之，他：横行結腸間膜裂孔ヘルニアの1例．日臨外会誌 69：3281-3284，2008

8）福本将人，加藤秀明，新谷佳子，他：横行結腸間膜裂孔ヘルニアの1例．日臨外会誌 70：2876-2880，2009

9）Blachar A, Federle MP, Brancatelli G, et al：Radiologist performance in the diagnosis of internal hernia by using specific CT findings with emphasis on transmesenteric hernia. Radiology 221：422-428, 2001

10）Martin LC, Merkle EM, Thompson WM：Review of internal hernias：radiographic and clinical findings. Am J Roentgenol 186：703-717, 2006