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文献詳細

雑誌文献

臨床外科65巻8号

2010年08月発行

文献概要

特集 ESD時代の外科治療 胃癌に対するESD

昭和大学横浜市北部病院での「外科の対応」―ESDと腹腔鏡下胃切除術の間を埋める新しい治療法(CLEAN-NET)の開発

著者: 井上晴洋1 小鷹紀子1 伊藤寛晃1 里館均1 工藤進英1

所属機関: 1昭和大学横浜市北部病院消化器センター

ページ範囲:P.1102 - P.1106

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要旨:内視鏡的粘膜下層はく離術(ESD)に対して外科がフォローする点は,大別すると2種類がある.1つは,①分化型粘膜癌と考えESDを施行した結果,sm2などのESDの適応外病巣であった場合と,もう1つは,②3cm以下の分化型Mではあるものの高度の瘢痕症例などのいわゆるESD困難例であろう.①には追加の腹腔鏡下手術が施行される.一方②に対しても,これまでは,画一的に腹腔鏡下手術が適応されてきた経緯があろう.われわれは,主として②に対して,より低侵襲な治療をめざして,CLEAN-NET(combination of laparoscopic and endoscopic approaches to neoplasia with non exposure technique)を開発して臨床応用している.CLEAN-NETとは,胃の局所切除(全層)を経口内視鏡と腹腔鏡の組み合わせで“胃内腔を腹腔内に開放することなく”行う方法である.色素法のsentinel node navigationを併用しつつリンパ節郭清も行う.CLEAN-NETは,ESDと腹腔鏡下手術の間を埋める新しい治療法であり,胃の切除範囲を最低限にとどめられる手法と期待される.このように過不足のないオーダーメイド医療を追及している.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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