臨床外科65巻9号

2010年09月発行

臨床報告

右大腿ヘルニア嵌頓と，魚骨が原因と考えられる左閉鎖孔ヘルニア嵌頓イレウスが併存した1例

著者： 西田十紀人¹ 宮田吉晴¹ 藤田敏忠¹ 角泰雄¹ 生田肇¹

所属機関： ¹市立加西病院外科

ページ範囲：P.1291 - P.1294

文献概要

要旨：患者は69歳，女性．夕食に寿司を食べたのち，腹痛，嘔吐，下痢が出現して2日後に救急搬送され，腹部単純X線検査でイレウスと診断された．右大腿部に鶏卵大膨隆と，腹部CTで右大腿ヘルニア嵌頓を認めたため，同日，緊急手術を施行した．大腿ヘルニア内容は大網のみでイレウスの原因ではなく，開腹して検索すると魚骨を伴った回腸が左閉鎖孔に嵌頓していた．魚骨によって穿孔した回腸を切除した．術前の腹部CTを再確認すると左閉鎖孔内に魚骨が写っており，イレウスの診断に際しては注意深い腹部CTの読影が必要であると反省させられた．右大腿ヘルニア嵌頓と，魚骨が原因と考えられる左閉鎖孔ヘルニア嵌頓イレウスの稀な1例を経験したので報告する．

参考文献

1）小沢邦寿：その他のヘルニア．森岡恭彦（監修）；新臨床外科学．第3版．医学書院，1999，pp424-425

2）森村尚登，西山　潔，渡会伸治，他：手術前に診断できた閉鎖孔ヘルニアの1例並びに本邦報告246例の文献的考察．日臨外会誌 49：132-138，1988

3）河野哲夫，日向　理，本田勇二：閉鎖孔ヘルニア　最近6年間の本邦報告257例の集計検討．日臨外会誌 63：1847-1852，2002

4）相原弘之，池谷朋彦，斉藤雄一，他：異時性に大腿ヘルニアおよび閉鎖孔ヘルニア嵌頓を発症した高齢男性の1症例．日消外会誌 41：152-157，2008

5）越智　誠，漆原　貴，亀岡　稔，他：手術症例報告　腹腔鏡で診断し腹膜前腔鏡下修復術を施行した両側閉鎖孔ヘルニア・大腿ヘルニアの1例．手術 60：381-386，2006

6）菅沼利行，長谷和生，識名　敦，他：虫垂をヘルニア内容とする大腿ヘルニアと閉鎖孔ヘルニアが併存した1例．日臨外会誌 65：1112-1116，2004

7）軽部秀明，増田英樹，石井敬基，他：術前に診断しえた大腿ヘルニア嵌頓を合併した閉鎖孔ヘルニアの1例．日臨外会誌 62：555-557，2001

8）池田正仁，二宮繁生，桜井真人，他：腹膜外腔アプローチによる腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術　大腿，外膀胱上窩，内鼠径，閉鎖孔の4種混合ヘルニアの1例．Med Postgrad 39：70-72，2001

9）玉舎美智夫，吉田隆浩，田中千弘，他：鼠径，大腿ヘルニア手術後に発症した同側閉鎖孔ヘルニアの1例．高山赤十字病紀 22：42-45，1998

10）横堀武彦，福地　稔，石崎政利，他：魚骨による小腸穿孔を併発した閉鎖孔ヘルニアの一例．日腹部救急医会誌 25：375，2005