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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科66巻1号

2011年01月発行

雑誌目次

特集 医療経済からみた大腸癌化学療法

ページ範囲:P.5 - P.5

 昨今の新規抗癌剤や分子標的薬の出現によって大腸癌に対する化学療法の治療効果は著しく進歩している.国内外のガイドラインによって標準治療が明示され,臨床の場でも臨床試験によって実証されたエビデンスに基づき治療が実施されているのが現状である.

 しかしながら,このような化学療法の薬剤費が大きな問題となってきている.延命効果と医療費のバランスについて再認識する必要があることから,本特集では,大腸癌に対する化学療法を医療経済の面から執筆いただいた.

抗癌剤治療の医療経済

著者: 濃沼信夫

ページ範囲:P.6 - P.16

【ポイント】

◆癌医療は急速に高額化しており,重くなる患者負担が社会問題化しつつある.

◆高額な抗癌剤の開発・導入を費用対効果でどう考えるか,高騰する癌医療費は治療成績にどう影響するか,癌患者の経済難民化をどう回避するかなどの課題ついては,広く国民的な議論が必要である.

大腸癌に対する化学療法と医療経済―検診の有用性

著者: 森義之 ,   飯野弥 ,   須藤誠 ,   藤井秀樹

ページ範囲:P.18 - P.26

【ポイント】

◆高額な大腸癌化学療法の問題点を医療費は診療単価と患者数の積であるという点から検討した.

◆大腸癌検診が高額な化学療法の対象患者を減少させ,医療費を抑制する可能性が示唆された.

◆地方都市で進む少子化,高齢化,過疎化を背景に減少する財源と,大腸癌化学療法によって増加する医療費について検討した.

公立癌拠点病院における大腸癌化学療法と医療経済

著者: 畑泰司 ,   三宅正和 ,   池田公正 ,   藤野志季 ,   波多豪 ,   北原知洋 ,   柳川雄大 ,   宗方幸二 ,   渡邉法之 ,   高本香 ,   永井健一 ,   川西賢秀 ,   清水潤三 ,   藤田淳也 ,   岩澤卓 ,   赤木謙三 ,   堂野恵三 ,   北田昌之 ,   島野高志

ページ範囲:P.28 - P.32

【ポイント】

◆大腸癌の化学療法はここ数年で大きく進歩をとげた反面,高価な薬剤を長期にわたって使用することで医療経済を圧迫している.

◆大腸癌化学療法の医療経済を考えるとき,国レベル,病院レベル,患者レベルの視点でそれぞれの見方は異なる.

◆当院では大腸癌化学療法専門外来の導入と入院パスの工夫によって病院レベルの医療経済を考えてきた.

医療経済からみたUFT/CPT-11療法の有用性

著者: 壬生隆一 ,   田中伸之助 ,   二見喜太郎 ,   田中雅夫

ページ範囲:P.34 - P.38

【ポイント】

◆進行・再発大腸癌に対するUFT/CPT-11療法は第Ⅱ相試験でFOLFOX療法やFOLFIRI療法と同等の生存期間が得られた.

◆この治療法はGrade 3の血液学的,非血液学的有害事象は少なく,Grade 4はなかった.

◆20か月以上の生存期間が得られる化学療法のなかでは最も治療期間中のコストが低いレジメンである.

医療費の削減と副作用の軽減を目指したmodified OPTIMOX療法

著者: 西岡将規 ,   島田光生 ,   栗田信浩 ,   岩田貴 ,   森本慎也 ,   吉川幸造 ,   東島潤 ,   宮谷知彦 ,   柏原秀也 ,   三上千絵 ,   三宅秀則

ページ範囲:P.40 - P.44

【ポイント】

◆Modified OPTIMOX療法はFOLFOX療法と比較して無増悪生存期間および奏効率は同等であり,末梢神経障害を低率に抑える.

◆ベバシズマブ併用にかかわらずmodified OPTIMOX療法とFOLFOX療法では薬剤費に170万円の差を認める(治療期間12か月).

◆薬剤費増加は保険財政を切迫し,患者負担も増加させるため,社会全体で考えていくべき問題である.

大腸癌術後補助化学療法の医療経済性評価

著者: 石黒めぐみ ,   石川敏昭 ,   植竹宏之 ,   杉原健一

ページ範囲:P.46 - P.52

【ポイント】

◆医療経済性は「費用対効果(cost-effectiveness)」(かかる費用に見合う効果が得られるか)で評価される.

◆費用対効果は,治療法の妥当性を評価したり,効果が同等とされる複数の治療法を比較したりする際に有用な指標となる.

◆補助化学療法では重篤な有害事象や過大な費用負担は許容できないため,医療経済性評価による治療の妥当性の検討も必要である.

切除不能大腸癌に対する化学療法の医療経済

著者: 加藤健

ページ範囲:P.54 - P.59

【ポイント】

◆大腸癌化学療法は生存期間の延長が認められているが,高額な医療費が無視できない存在となってきている.

◆ベバシズマブを含む化学療法を行うことで無増悪生存期間を1年延ばすのに必要な医療費は約540万円である.

◆医療経済は,費用対効果という物差しを踏まえたうえで議論されることが望ましい.

大腸癌外科手術との対比からみた化学療法の問題点

著者: 三嶋秀行 ,   池永雅一 ,   安井昌義 ,   辻江正徳 ,   宮本敦史 ,   平尾素宏 ,   藤谷和正 ,   中森正三 ,   辻仲利政

ページ範囲:P.60 - P.65

【ポイント】

◆大腸癌手術の費用は安価であり,化学療法と比較して患者1人を治すのにかかる費用が低く,費用対効果が高い.

◆補助化学療法の費用対効果はほかの医療と遜色ない.進行再発の化学療法における分子標的薬の費用対効果は高くない.

◆費用対効果を考えながら,化学療法に限らず日本は何をどのぐらいまで保険で許容するのかを検討すべきである.

Expertに学ぶ画像診断・1【新連載】

PET-CT

著者: 内山周一郎 ,   千々岩一男

ページ範囲:P.66 - P.71

はじめに

 Positron emission tomography-computed tomography(PET-CT)は一度の撮影でほぼ全身をみることができる,比較的新しい検査の1つである.ときに偽陽性を示すことがあり,疾患によっては質的診断が困難な場合もみられる.しかしながら,PET-CTは非侵襲的な検査であり,良・悪性の鑑別にも有用性を示すことから,術前・術後のルーチン検査の1つとして期待される.

読めばわかるさ…減量外科 難敵「肥満関連疾患」に外科医が挑む方法・7

腹腔鏡下袖状(スリーブ状)胃切除術

著者: 笠間和典 ,   関洋介

ページ範囲:P.72 - P.76

皆さん,元気ですかーっ!

私は,暑さと目白押しの学会や講演会で元気が削り取られがちですが,ここはひとつ,元気を回復して,なんとか乗り切って行きたいと思っています.元気があれば,何でもできるっ!!

外科専門医予備試験 想定問題集・1【新連載】

消化管

著者: 加納宣康 ,   本多通孝 ,   伊藤校輝 ,   松本純明

ページ範囲:P.78 - P.85

はじめに

 毎年8月に日本外科学会の外科専門医予備試験が実施されます.学会の公表によれば合格率8割程度で,難易度も決して高いとはいえませんが,国家試験との違いは,ベッドサイドで実際の症例を経験していれば比較的容易な問題が多くあるということです.経験不足の分野の問題が難しく感じるようであれば,まだ時間にゆとりがありますので,不足している症例の経験が積めるように指導医に相談してみてはいかがでしょうか.年に1回しかチャンスがありませんので,しっかり対策を立てて臨みましょう.

 消化管領域では,食道に関する出題が多く感じられるかもしれません.受験者のレベルでは経験が少ない分野だと思いますが,題材が豊富で出題しやすいのかもしれません.少ない症例を逃さず,一歩踏み込んで勉強するよう心がけましょう.

病院めぐり

水戸済生会総合病院外科

著者: 鈴木俊繁

ページ範囲:P.86 - P.86

 当院は茨城県の県庁所在地である水戸市の閑静な住宅街に位置しています.常磐高速道路の水戸ICからほど近く,交通の便がよいことが利点です.水戸市は古くから関東最大の城下町として栄え,2代目藩主の光圀公が有名です.

 当院は昭和18年に水戸市八幡町に診療所として開設され,昭和32年に水戸済生病院,昭和39年に現名称となり,昭和59年に現在地に移転しました.認可病床数は513床で,日本医療機能評価機構病院機能評価認定を受けている総合病院です.

木根淵外科胃腸科病院外科

著者: 木根淵光夫

ページ範囲:P.87 - P.87

 当院は,平成17年に茨城県岩井市と猿島町が合併した坂東市にあります.千葉県野田市と利根川を挟んで隣接しており,人口約5万6千人の農業中心の街です.平安時代中期に平将門が旧岩井市を本拠地とし,その後,藤原秀郷や平貞盛らによって討たれた地として,平将門ゆかりの街でもあります.当院(開設当初は19床の医院でした)を開設した昭和60年には鉄道も国道もない(現在でも鉄道はありませんが),のどかで自然に溢れたとても心が落ち着く街でした.今では工業団地への企業誘致や大型ショッピングモールなどによっていくぶん様相は変わってきましたが,住みやすい街であることには変わりはありません.

 そのような街並みのなかに医院を開設し,昭和62年(病院化)と平成11年の2度にわたって増床を行い,現在の一般病棟68床の病院となるまでに早25年が過ぎ去りました.開設当初から「親切な医療」を心がけ,「日本一の診療所にするぞ!」との当時38歳の院長のかけ声の下に職員がみな同じ志をもって日夜努力してきました.現在では「目前懸命」をスローガンに,救急告知病院として,さらには病院群輪番制病院として救急医療に対応しています.

手術手技

単孔式腹腔鏡下手術による胆囊摘出と虫垂腫瘍切除の同時施行

著者: 青竹利治 ,   藤井秀則 ,   川上義行 ,   土居幸司 ,   廣瀬由紀

ページ範囲:P.89 - P.92

要旨

単孔式腹腔鏡下手術は,1か所の皮膚切開部から複数のトロッカーを留置して手術が行われる.臍部からの切開創は術後の整容性が良好であり,特に若い女性などでは手術創における満足度は高い.そのため,胆囊結石や虫垂炎など良性疾患では手術の選択肢の1つとして全国的に施行症例数が増加している.今回,胆囊結石の精査中に虫垂腫瘍を指摘された症例に対して単孔式腹腔鏡手術を施行したので報告する.患者は50歳,女性で,胆囊および総胆管結石と虫垂腫瘍(粘液囊腫疑い)と診断された.臍の単一切開創から4本のトロッカーを挿入し,腹腔鏡下に胆囊摘出と虫垂腫瘍切除を同時に施行した.手術時間は2時間44分で,術後経過および創の整容性は良好であった.

臨床報告

左骨盤内腫瘤として発見され腹腔鏡下回盲部切除術を施行した虫垂粘液囊胞腺腫による腸重積症の1例

著者: 馬場慎司 ,   王子裕東 ,   松原進 ,   清水正樹 ,   玉木一路 ,   寺本睦

ページ範囲:P.93 - P.97

要旨

患者は38歳,女性.臍周囲の間欠痛を伴った下痢,嘔吐で当院を受診した.受診前の3か月で7kgの体重減少があった.腹部超音波および単純CT検査で左骨盤内に腸重積像を認めた.ガストログラフィンで注腸造影を行いつつ用手的整復を行った.整復の2日後に行った大腸内視鏡検査で盲腸に径5cmの粘膜下腫瘍を認めた.虫垂粘液囊腫の診断で,整復後27日目に腹腔鏡下回盲部切除術を施行した.摘出標本では虫垂は棍棒状に腫大しており,盲腸底部にわずかに重積していた.病理組織検査では虫垂粘膜に乳頭状異型上皮を認め,虫垂粘液囊胞腺腫と診断された.虫垂粘液囊胞腺腫による腸重積症は非常に稀であり,整復後に腹腔鏡下手術を施行した1例を経験したので報告する.

特発性横行結腸間膜血腫の1例

著者: 大楽耕司 ,   上田晃志郎 ,   藤岡顕太郎

ページ範囲:P.99 - P.102

要旨

患者は62歳,男性.腹痛と発熱を主訴に受診した.血液検査で炎症所見を認め,腹部CT検査では膵尾部と左腎の間に10cm大の腫瘤を認めた.腹部MRI検査も施行したが,原因は特定できなかった.腹痛や炎症所見を認めていたため,原因検索を兼ねて手術を施行した.腫瘤は横行結腸間膜に認め,横行結腸および膵尾部に癒着していた.原因不明であったため,横行結腸および膵尾部を含めて腫瘤を摘出した.摘出標本では腫瘤内腔に血腫が貯留し,病理学的所見では内腔に明らかな上皮はなく,血管病変や腫瘍病変も認めなかった.腹部外傷,血液疾患,抗凝固薬内服の既往はなく,特発性腸間膜血腫と診断した.現在まで再発を認めていない.

多形性乳癌(pleomorphic breast carcinoma)の1例

著者: 花井雅志 ,   窪田智行 ,   加藤万事 ,   山口洋介 ,   佐々木英二 ,   三浦重人

ページ範囲:P.103 - P.106

要旨

患者は63歳,女性.右乳房の腫瘤を自覚したため受診した.右乳房C領域に1.5×1.5cmの弾性・軟で可動性のある腫瘤を触知し,マンモグラフィでは同部にカテゴリー3の腫瘤を,乳房超音波では同部にカテゴリー2の腫瘤を認め,エラストグラフィではScore 2であった.穿刺吸引細胞診でリンパ組織を認め癌陰性であったが,悪性リンパ腫の可能性も否定できないため摘出生検を施行した.Pleomorphic carcinomaと診断し,乳房円状部分切除術を追加した.n0,stage Ⅰであった.補助化学療法を施行し,術後3年の現在,再発・転移を認めず健存中である.多形性乳癌と診断された貴重と考えられる1例を経験したので報告する.

針生検で診断した男性乳腺invasive micropapillary carcinomaの1例

著者: 河内順 ,   荻野秀光 ,   下山ライ ,   中山文彦 ,   渡部和巨 ,   清水英男

ページ範囲:P.107 - P.109

要旨

乳腺のinvasive micropapillary carcinoma(IMC)は早期からリンパ管侵襲やリンパ節転移をきたす予後不良の癌として注目され,「乳癌取扱い規約」にも採用された.今回われわれは,男性に発症したIMCを経験した.患者は57歳,男性で,左乳房腫瘤を自覚して当科を受診した.エコーで乳頭直下に直径17mmの辺縁不整な腫瘤を認め,針生検でIMCと診断された.T1N0M0 stage Ⅰの診断で,胸筋温存乳房切除術およびリンパ節郭清を施行した.ER(+),PgR(+),HER2(-).v0 n0で,リンパ節転移はなかった.補助療法としてタモキシフェンを内服し,経過観察中である.

緊急内視鏡が術前診断に有用であった成人特発性腸重積の1例

著者: 吉川雅輝 ,   野末睦

ページ範囲:P.111 - P.114

要旨

患者は72歳,女性.粘血便,腹痛,嘔吐を主訴に受診し,腹部X線写真でイレウスと診断されて入院となった.腹部CTで上行結腸内に嵌入する腸管像を認めたため腸重積と診断し,大腸内視鏡および注腸造影を行ったところ,先進部に病変を認めず,特発性腸重積と診断された.内視鏡所見で嵌入腸管の壊死を認めたため,回盲部切除術が施行された.成人腸重積は稀な疾患であり,特発性と2次性との鑑別診断は困難である.この鑑別には大腸内視鏡が有用であった.特発性腸重積と診断された報告例で整復のみがなされた症例では再発はなく,腸管壊死を認めなければ腸切除を回避できる可能性があり,術式の決定においても鑑別診断は重要である.

十二指腸乳頭部癌肝転移巣におけるガス産生性肝膿瘍の腹腔内破裂で急激な経過をたどった1例

著者: 古元克好 ,   森友彦 ,   伊東大輔 ,   小切匡史

ページ範囲:P.115 - P.119

要旨

患者は57歳,男性.54歳時に十二指腸乳頭部癌に対して膵頭十二指腸切除術を受けた.その10か月後に径2cmの単発肝転移がみられ化学療法を行ったが,stable disease(SD)となって通院しなくなった.その約1年後に転移巣の増大と閉塞性黄疸で来院し,経皮経肝胆道ドレナージ(PTCD)チューブを留置した.総ビリルビン値が改善傾向となりPTCDチューブを留置した状態で退院した.その1週間後の腹部CTで肝右葉全体の大量のガス像と肝前面のfree airを認めた.肝転移巣の膿瘍がガス産生を伴って腹腔内に穿破したと考えられ,約7時間後に死亡した.原発巣切除後早期の単発肝転移の手術適応とPTCDチューブの管理につき再検討を要する症例と考えられた.

ひとやすみ・68

若気の至り

著者: 中川国利

ページ範囲:P.52 - P.52

 馬齢を重ねると,若いときの自分の行動を思い出して赤面することが多々ある.一方で,純真であったからこそ羞恥心もなく行動できた青春時代を懐かしく思い出す.

 仙台市内の外科勤務医が集まる懇話会に研修医を誘った.その会には30年ほど前から市内の外科勤務医が集まり,日常臨床で経験した稀な症例や診断・治療に苦慮した症例を持ち寄っては,自分の失敗談を交えて気楽に意見を交換してきた.初期には隔月ごとに開催したこともあり,現在まで160回ほどの回数を重ねている.発足当初から参加していた私は,年齢や肩書きとは無関係に自由闊達に議論できる気楽な会と認識していた.しかし,同伴した研修医によれば,「大先輩の医師ばかりでとても質問する雰囲気ではなく,非常に緊張しました」とのことであった.

昨日の患者

情熱を持ち続ける

著者: 中川国利

ページ範囲:P.71 - P.71

 趣味が高じて趣味で生活の糧を得られれば,人生は最高である.しかし,最高の人生を送れる人は稀で,夢で終わることが多い.しかし,苦労しながらも夢を追い求め続ける人も稀に存在する.

 70歳代半ばのIさんが肝囊胞症で入院した.腹腔鏡下に開窓術を行い,術後2日目に退院した.退院時に,病室に掲示されていた元患者さんが描いた絵画を見て語ってくれた.「子供の頃から絵を画くことが好きで,親に反対されながらも高校を中退して東京に出ました.しかし,絵で生活することは困難で,蕎麦屋の出前などで生活費を稼ぎました.東京での生活は破綻して故郷に戻りましたが,好きな絵を書き続けてきました.あまり絵は売れずに家族に苦労をかけてきましたが,県立美術館に私の絵が収蔵されています.ご案内しますから,ぜひ見てください」そこで,翌々日の土曜日に県立美術館で会うことにした.

勤務医コラム・20

Appeは千変万化

著者: 中島公洋

ページ範囲:P.77 - P.77

 何年医師をやっていてもappeは診断が難しい.手術してみて普通のappeだとホッとする.昔話で恐縮ですが若い先生方のお役に立てばと思い,私の恥ずかしい話をします.

 ①40代女性の発熱と右下腹痛.絶対にappeだと思ったが右卵管留膿腫だった.切除したあとに誤診を詫びたら,「もう子供をつくるわけじゃなし,よかったです」と言われて恐縮した.

1200字通信・22

臨床外科医

著者: 板野聡

ページ範囲:P.88 - P.88

 当院では毎年12月29日は午前中の診療で仕事納めとし,午後は各部署の大掃除をしています.医局でも各自の机の上や本棚の整理をしますが,私も溜め込んだ書類や雑誌を整理することにしています.もっとも,私にとっては整理するとは捨てることと同義語であり,いつか読もうと思いながら積読(つんどく)と化した雑誌類,さらには,また使うかもしれないと保存し,結局,数年間見ることもなかった学会発表の資料などは,この機会に思い切って処分することにしています.

 昨年のことですが,こうしたとき,してはいけないと思いながらも,ふと目にした文章に興味を惹かれ,ついつい座り込んで読むことになりました.「そんなことしてたら掃除が終わりませんよ」と叫ぶ医局秘書嬢の声が聞こえはしましたが,「ちょっと休憩」と言い訳をして目を通すことにしました.その文章とは,日本臨床外科学会雑誌に載っていた「この会を創った開業医」というものです(榊原 宣:70:955-961,2009:第70回総会特別講演).同じ「臨床外科」ということでお許しいただくとして,その内容に感動を覚えたので,少し御紹介したいと思います.

学会告知板

第65回手術手技研究会

ページ範囲:P.98 - P.98

会   長:塩﨑 均(近畿大学医学部長)

当番世話人:宇田川晴司(虎の門病院消化器外科)

会   期:2011年5月13日(金)夕方~14日(土)

会   場:シェーンバッハ・サボー(砂防会館別館:東京都千代田区平河町2-7-5)

第23回日本小腸移植研究会

ページ範囲:P.114 - P.114

会 期:2011年3月11日(金)~12日(土)

会 場:メルパルク熊本

    〒860-8517熊本市水道町14-1 Tel:096-355-6311

書評

日本肝胆膵外科学会高度技能医制度委員会(編)「肝胆膵高難度外科手術」

著者: 齋藤洋一

ページ範囲:P.120 - P.120

 日本肝胆膵外科学会は,この領域に携わるアクティブメンバーで構成された専門医集団の学会として発足したものであります.この領域の高難度な手術をより安全かつ確実に行える外科医を育てることを目的として,2008年2月の理事会で「高度技能医制度」が生まれました.

 この領域の先達にはいわゆる黄金の手を持つ外科医が少なからず存在していましたが,国民の要請に応える体制づくりのためには,常にこのような技術を駆使できるhigh volume centerの設置や,きめ細かい指導教育体制の確立が急務とされてきました.各学会を中心に種々の診療ガイドラインが作成され,各疾患に対する共通の認識がもたれるようになりましたが,外科技術面での巧拙の認識や独特のコツについてはまとめられたものがないのが現状であります.

国立がん研究センター内科レジデント(編)「がん診療レジデントマニュアル(第5版)」

著者: 高野利実

ページ範囲:P.121 - P.121

 『がん診療レジデントマニュアル』は,オンコロジストのバイブルである―.

 なんていうのは間違いである.本書がバイブルであってはならない.でも,オンコロジストをめざす若手医師が,何か1冊,白衣のポケットに入れておくとすれば,本書であろう.

岡田晋吾,谷水正人(編)「パスでできる!がん診療の地域連携と患者サポート」

著者: 小西敏郎

ページ範囲:P.122 - P.122

 本年4月の医療費改定でがん診療においても,地域連携を行えば医療費が加算されるようになった.胃がん・大腸がん・肺がん,乳がん,肝臓がんのいわゆる5大がんに前立腺がんを加えた6種のがんが対象である.全国のがん診療連携拠点病院や都道府県認定のがん診療拠点病院では,地域連携の診療計画書(地域連携クリティカルパス,以下連携パス)を患者に渡せば,患者一人につき退院時の1回のみであるが750点を加算できる.また紹介を受けた診療所では,毎月1回300点を加算できることになった.

 しかし手続きの面倒さに比べて決して大きな額ではない.この程度の加算額では,拠点病院もクリニックも,経営上のメリットからがん診療連携を積極的に推進することにはならないだろう.また地域連携は東京や大阪のような大学病院が多数存在する地域では,医師同士に大学や医局のつながりがないので進めにくいのが実態である.いわゆる医師同士が顔の見えない関係では連携が困難である.また再発の可能性の高い進行がんの場合は紹介しにくい,受けにくい,といえる.

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原稿募集 私の工夫-手術・処置・手順

ページ範囲:P.26 - P.26

原稿募集 「臨床外科」交見室

ページ範囲:P.44 - P.44

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.45 - P.45

読者アンケートのお願い

ページ範囲:P.53 - P.53

投稿規定

ページ範囲:P.124 - P.125

著作権譲渡同意書

ページ範囲:P.126 - P.126

次号予告

ページ範囲:P.127 - P.127

あとがき

著者: 瀬戸泰之

ページ範囲:P.128 - P.128

 私が編集委員に加えていただいて,最初の「あとがき」となります.月1回開催される編集会議に出席していると,編集委員の先生方や編集部の方々の「臨床外科」をさらにパワーアップさせたい,よりよい情報を読者の方々に届けたいという熱い思いを感じずにはいられません.小生も微力ながら貢献できればと思っております.

 さて,本号の特集は「医療経済からみた大腸癌化学療法」です.医療経済に関して様々な議論がなされている昨今,2011年の冒頭を飾るにふさわしい企画と思います.小生が医師になった頃は(小生だけかもしれませんが),大腸癌化学療法に限らず,どんな治療法でも自分が行っている内容に一体どのくらい費用がかかるのかについては関心すら持っていなかった記憶があります.それだけ医療側は費用を気にせず治療を行っていたし(行うことができた),患者側も皆保険制度のもと,何はともあれ受け入れていたということでしょう.それではなぜ今,「医療経済からみた」が必要なのでしょうか.第一に,ご承知のように医療費が高騰し,国の財政そのものを圧迫しだしていることと,それを支える財源が逼迫していることが挙げられます.また,なぜ「大腸癌化学療法」なのでしょうか.効果は得られるけれども非常に高額の薬剤が普及しだしたからでしょう.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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