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文献詳細

雑誌文献

臨床外科66巻10号

2011年10月発行

1200字通信・31

人はなぜ山に登るのか

著者: 板野聡1

所属機関: 1寺田病院外科

ページ範囲:P.1366 - P.1366

文献概要

 今から58年前の1953年5月に,エドモンド・ヒラリー氏とシェルパのテンジン・ノルゲイ氏がエベレストに初登頂したことは有名ですが,登山家が山に登るのは「そこに山があるから」という有名な言葉をはじめて言ったのは,一体誰なのでしょうか.そのことが気になって調べてみたところ,これもまたエベレストが絡んだことであったのですが,1924年にエベレストに登ったまま消息を絶った英国の登山家ジョージ・リー・マロリー氏の言葉とわかりました.新聞記者に「なぜエベレストに登るのか」と問われたマロリー氏が“Because, it is there”と答えたそうで,これが日本で「そこに山があるから」と訳されて有名になったようです.

 死のリスクを伴う危険な登山をなぜ続けるのかという問いに対してストイックなまでにシンプルな答えであり,そう答えたマロリー氏自身も還らぬ人となったこともあって有名になったものと想像できます.また,そうしたマロリー氏の逸話から,この言葉が「運命」とか「宿命」といった意味合いを持たされて使われることになったことも頷けます.あるいは,ただ単に,山登りを愛する人たちがいちいち山登りの理由を言わなくてもよい口実として,ちょっとニヒルな気分でこの言葉を使ったために広がっていっただけなのかも知れません.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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