文献詳細
1200字通信・31
文献概要
今から58年前の1953年5月に,エドモンド・ヒラリー氏とシェルパのテンジン・ノルゲイ氏がエベレストに初登頂したことは有名ですが,登山家が山に登るのは「そこに山があるから」という有名な言葉をはじめて言ったのは,一体誰なのでしょうか.そのことが気になって調べてみたところ,これもまたエベレストが絡んだことであったのですが,1924年にエベレストに登ったまま消息を絶った英国の登山家ジョージ・リー・マロリー氏の言葉とわかりました.新聞記者に「なぜエベレストに登るのか」と問われたマロリー氏が“Because, it is there”と答えたそうで,これが日本で「そこに山があるから」と訳されて有名になったようです.
死のリスクを伴う危険な登山をなぜ続けるのかという問いに対してストイックなまでにシンプルな答えであり,そう答えたマロリー氏自身も還らぬ人となったこともあって有名になったものと想像できます.また,そうしたマロリー氏の逸話から,この言葉が「運命」とか「宿命」といった意味合いを持たされて使われることになったことも頷けます.あるいは,ただ単に,山登りを愛する人たちがいちいち山登りの理由を言わなくてもよい口実として,ちょっとニヒルな気分でこの言葉を使ったために広がっていっただけなのかも知れません.
死のリスクを伴う危険な登山をなぜ続けるのかという問いに対してストイックなまでにシンプルな答えであり,そう答えたマロリー氏自身も還らぬ人となったこともあって有名になったものと想像できます.また,そうしたマロリー氏の逸話から,この言葉が「運命」とか「宿命」といった意味合いを持たされて使われることになったことも頷けます.あるいは,ただ単に,山登りを愛する人たちがいちいち山登りの理由を言わなくてもよい口実として,ちょっとニヒルな気分でこの言葉を使ったために広がっていっただけなのかも知れません.
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