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特集 外科医のための最新癌薬物療法 Ⅰ章 臓器別薬物療法
7.肝癌―④進行・再発(切除不能を含む)治療
著者: 上嶋一臣1 工藤正俊1
所属機関: 1近畿大学医学部消化器内科
ページ範囲:P.183 - P.189
文献購入ページに移動肝細胞癌に対するガイドラインとして,2005年2月に「科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドライン2005年版」1)が初めて刊行された.このガイドラインはEBMの手法に則り作成されたものである.その後,2009年に改訂されている.2009年版2)においては2007年6月までのエビデンス(論文)が採用されている.このガイドラインに掲載されている治療アルゴリズムはエビデンスに基づく標準的なアルゴリズムであるが,アルゴリズム中に肝外転移や脈管浸潤の記載がなく,現在切除不能肝細胞癌の標準的治療であるソラフェニブが記載されていないなどの問題がある(SHARP試験は2008年3),Asia-Pacific試験は2009年4)に論文化されているため,2009年版には採用されていない).これに対して日本肝臓学会推奨のコンセンサスに基づく肝癌治療アルゴリズムは,現在日本において広く行われている治療法を示したものであり(図1)5),より実臨床に即したものとして汎用されているが,エビデンスのない推奨部分もあり,今後の課題となっている.実際はこれらの治療アルゴリズムに基づいて治療が選択される.3cm,3個以下のものに対しては肝切除あるいは局所療法が行われるが,4個以上のものに関しては,TACEや動注療法が選択される.また脈管浸潤を有する場合,あるいは遠隔転移を有する場合は全身化学療法が選択される.また最初からChild-Pugh Cで肝機能不良の場合は基本的に緩和治療となるが,ミラノ基準内であれば肝移植が選択される.
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