icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床外科66巻11号

2011年10月発行

文献概要

特集 外科医のための最新癌薬物療法 Ⅰ章 臓器別薬物療法

7.肝癌―④進行・再発(切除不能を含む)治療

著者: 上嶋一臣1 工藤正俊1

所属機関: 1近畿大学医学部消化器内科

ページ範囲:P.183 - P.189

文献購入ページに移動
アルゴリズム

 肝細胞癌に対するガイドラインとして,2005年2月に「科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドライン2005年版」1)が初めて刊行された.このガイドラインはEBMの手法に則り作成されたものである.その後,2009年に改訂されている.2009年版2)においては2007年6月までのエビデンス(論文)が採用されている.このガイドラインに掲載されている治療アルゴリズムはエビデンスに基づく標準的なアルゴリズムであるが,アルゴリズム中に肝外転移や脈管浸潤の記載がなく,現在切除不能肝細胞癌の標準的治療であるソラフェニブが記載されていないなどの問題がある(SHARP試験は2008年3),Asia-Pacific試験は2009年4)に論文化されているため,2009年版には採用されていない).これに対して日本肝臓学会推奨のコンセンサスに基づく肝癌治療アルゴリズムは,現在日本において広く行われている治療法を示したものであり(図1)5),より実臨床に即したものとして汎用されているが,エビデンスのない推奨部分もあり,今後の課題となっている.実際はこれらの治療アルゴリズムに基づいて治療が選択される.3cm,3個以下のものに対しては肝切除あるいは局所療法が行われるが,4個以上のものに関しては,TACEや動注療法が選択される.また脈管浸潤を有する場合,あるいは遠隔転移を有する場合は全身化学療法が選択される.また最初からChild-Pugh Cで肝機能不良の場合は基本的に緩和治療となるが,ミラノ基準内であれば肝移植が選択される.

参考文献

1)科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドライン作成に関する研究班:科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドライン2005年版,金原出版,2005
2)日本肝臓学会:科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドライン2009年版,金原出版,2009
3)Llovet JM, et al:Sorafenib in advanced hepatocellular carcinoma. N Engl J Med 359:378-390, 2008
4)Cheng AL, et al:Efficacy and safety of sorafenib in patients in the asia-pacific region with advanced hepatocellular carcinoma:a phase iii randomised, double-blind, placebo-controlled trial. Lancet Oncol 10:25-34, 2009
5)日本肝臓学会:肝癌診療マニュアル第2版,医学書院,2010
6)上嶋一臣,工藤正俊:PIVKA-ⅡはSorafenibの治療効果予測因子になりうる.肝臓 51:681-683,2010
7)工藤正俊編:肝細胞癌の分子標的治療,アークメディア,2010,pp135-141

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?