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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科66巻13号

2011年12月発行

雑誌目次

特集 外科医のための消化器内視鏡Up-to-Date

ページ範囲:P.1579 - P.1579

 最近のtechnologyの急速な発展に伴い,医療機器の発達も著しいものがある.そのなかでも消化管内視鏡の診断技術は,拡大内視鏡にみられるような「マクロ」としての肉眼所見が,より「ミクロ」な,すなわち組織学的所見と近づき,その双方向的所見の解析から多くの知見が得られつつある.

 また,ダブルバルーン内視鏡技術やカプセル内視鏡などの開発により,消化管診断学は飛躍的に向上している.肝臓や膵臓などのいわゆる消化器実質臓器を含む肝胆膵領域においても,内視鏡による診断技術の向上は,それに基づく治療法への応用と外科手術の選択などに寄与している.ESD,EMRはもとよりNOTESなどの導入により,治療の形態も大きく変わりつつある.

〔総論―消化器内視鏡診断の最前線〕

色素内視鏡,画像強調内視鏡および拡大内視鏡

著者: 八尾建史 ,   高木靖寛 ,   久部高司

ページ範囲:P.1580 - P.1588

【ポイント】

◆画像強調内視鏡(IEE)は,従来から用いられているdye-based IEE(色素内視鏡)と新しく開発されたequipment-based IEEに大別される.

◆内視鏡を用いた拡大内視鏡には,光学的拡大機能と電気的拡大機能の2種類があり,前者を用いれば毛細血管や上皮など,通常内視鏡では観察できない微細な構造が観察できる.

◆Equipment-based IEEの光学的手法である狭帯域光観察(NBI)を拡大内視鏡に併用すると,従来まで診断が困難であった小さく平坦な消化管の早期癌の診断ができるようになった.

カプセル内視鏡

著者: 前田光徳 ,   菅家一成 ,   中村哲也 ,   寺野彰 ,   平石秀幸

ページ範囲:P.1591 - P.1596

【ポイント】

◆カプセル内視鏡は,SB1からSB2への改良,FICEが使用できるRAPID®Access 6.5の改良など,デバイスの著しい進歩がみられる.

◆カプセル内視鏡は,原因不明の消化管出血だけでなく,クローン病やNSAID小腸病変の検出,治療効果判定に対する有効性が報告されている.

◆将来的に食道用,大腸用,自走式,治療用カプセル内視鏡の実用化が期待されている.

〔各論―消化器内視鏡の診断と外科治療への応用〕

食道

著者: 宮崎達也 ,   猪瀬崇徳 ,   田中成岳 ,   小澤大悟 ,   鈴木茂正 ,   横堀武彦 ,   桑野博行

ページ範囲:P.1597 - P.1601

【ポイント】

◆食道癌手術において適切な切除範囲と術式を選択するうえで,内視鏡検査はなくてはならない.

◆切除範囲を決定し,術中にその情報を的確に得るために,術前の内視鏡検査でのクリッピングは有用である.

◆食道良性疾患においても,術中内視鏡検査により損傷の確認や適切な処置を行うことができる.

著者: 和田郁雄 ,   三ツ井崇司 ,   後藤修 ,   畑尾史彦 ,   藤城光弘 ,   清水伸幸 ,   瀬戸泰之

ページ範囲:P.1602 - P.1608

【ポイント】

◆ガイドラインに基づく胃癌の治療方針決定には,内視鏡による正確な診断が必要不可欠である.

◆早期胃癌ではEMR・ESDによる内視鏡治療が行われ,その適応は拡大しつつある.

◆新たな低侵襲手術として内視鏡・腹腔鏡合同手術が考案され,内視鏡技術はさらにその活躍の場を広げている.

十二指腸・小腸(ダブルバルーン内視鏡)

著者: 野田英児 ,   前田清 ,   永原央 ,   木村健二郎 ,   天野良亮 ,   久保尚士 ,   田中浩明 ,   六車一哉 ,   山田靖哉 ,   八代正和 ,   仲田文造 ,   大平雅一 ,   石川哲朗 ,   平川弘聖

ページ範囲:P.1610 - P.1613

【ポイント】

◆ダブルバルーン小腸内視鏡(DBE)の開発によって,小腸造影検査やCT,MRIでは診断が困難であった小腸病変を診断することが可能となった.

◆診断,治療のみならず,病変部などへのマーキングが可能である.このことは,手術において非常に有用である.

◆偶発症として誤嚥,穿孔,膵炎などが低頻度ではあるがみられるため,外科と内科の連携が重要である.

大腸(結腸・直腸)

著者: 野上仁 ,   谷達夫 ,   島田能史 ,   亀山仁史 ,   飯合恒夫 ,   畠山勝義

ページ範囲:P.1614 - P.1618

【ポイント】

◆大腸内視鏡検査においては,通常観察で粘膜の発赤,血管透見性の消失,粘膜襞の形状変化などの微細な所見を見逃さずに認識することが重要である.

◆病変の質的診断は色素内視鏡,狭帯域光観察(NBI),拡大観察,超音波内視鏡検査などを駆使して行う.

◆直腸・肛門管の観察では病変と肛門管の構造物との位置関係を正確に認識することが重要である.

胆道―胆道癌における内視鏡による深達度,進展度評価と外科治療への応用

著者: 鈴木大亮 ,   加藤厚 ,   木村文夫 ,   清水宏明 ,   吉留博之 ,   大塚将之 ,   古川勝規 ,   吉富秀幸 ,   竹内男 ,   高屋敷吏 ,   久保木知 ,   杉山晴俊 ,   露口利夫 ,   宮崎勝

ページ範囲:P.1620 - P.1627

【ポイント】

◆胆管癌における胆道鏡検査では,直接胆道造影やMDCTなどのmodalityでは診断することのできない表層進展を直接確認することができる.

◆胆囊癌では術式に関わる深達度診断に超音波内視鏡検査が有用であるが,T1(m,mp),T2(ss)の判別はいまだ困難である.

◆十二指腸乳頭部癌では縮小手術の適応検討に超音波内視鏡検査が使用されているが,現状ではOddi筋の明瞭な描出が困難であり課題が残る.

膵疾患における消化器内視鏡

著者: 糸井隆夫 ,   島津元秀 ,   粕谷和彦 ,   阿部雄太 ,   栗原俊夫 ,   祖父尼淳 ,   糸川文英 ,   土屋貴愛 ,   石井健太郎 ,   辻修二郎 ,   池内信人 ,   梅田純子 ,   田中麗奈 ,   殿塚亮介 ,   森安史典

ページ範囲:P.1628 - P.1632

【ポイント】

◆近年のCTやMRIの進歩により,膵疾患の術前画像診断における内視鏡の役割は少なくなりつつある.そのなかでもEUSは,画像診断およびEUS下穿刺吸引生検術(EUS-FNA)は膵小病変あるいは周囲リンパ節などの病変に対して低侵襲であり得られる情報は多く,比較的高い正診率(80~90%以上)で有用と考えられる.

◆ERCP関連手技に関しては,膵管造影,管腔内超音波(IDUS),細胞診・組織診,膵管鏡といった検査法があるが,正診率も70%前後にとどまる.特にERCP関連手技においては術後急性膵炎という致死的な偶発症が起こりうることが問題であり,各検査法のメリット,デメリットを考慮して必要にして十分な検査を行う必要がある.

〔治療―内視鏡治療の最先端〕

NOTES

著者: 白下英史 ,   安田一弘 ,   草野徹 ,   平塚孝宏 ,   河野洋平 ,   赤木智徳 ,   衛藤剛 ,   猪股雅史 ,   北野正剛

ページ範囲:P.1634 - P.1637

【ポイント】

◆NOTESは主に経腟または,経胃ルートが用いられている.

◆胆囊摘出術,虫垂切除術,腹腔内観察を中心に行われている.

◆NOTES臨床例のほとんどは,腹腔鏡用鉗子を用いたhybrid NOTESであり,これは既存のデバイスの限界を示している.今後の機器開発が望まれる.

食道・胃静脈瘤に対する内視鏡治療の現状

著者: 赤星朋比古 ,   橋本直隆 ,   家守雄大 ,   長尾吉泰 ,   富川盛雅 ,   前原喜彦 ,   橋爪誠

ページ範囲:P.1638 - P.1643

【ポイント】

◆食道静脈瘤においてEVL治療は,EISに比べ再発率は高いが副作用が少なく,十分なフォローアップと追加治療により出血予防には効果的な治療である.

◆胃静脈瘤出血に対しては,シアノアクリレート(ヒストアクリル®)の内視鏡的塞栓術は有効である.

◆胃静脈瘤の待機例と予防例には,わが国で開発されたB-RTOは低侵襲で治療効果の高い治療手技である.

◆内視鏡治療抵抗性の食道・胃静脈瘤に対しては,脾摘やHassab手術が有効な症例がある.

読めばわかるさ…減量外科 難敵「肥満関連疾患」に外科医が挑む方法・18

減量外科の栄養管理

著者: 吉川絵梨 ,   笠間和典

ページ範囲:P.1644 - P.1651

 元気ですかーっ!

 私は管理栄養士の吉川絵梨と申します.今回は減量外科の栄養管理についてご紹介させていただきます.私は,笠間医師が当院で減量外科手術を始めてから現在まで全患者の栄養管理を行っています.栄養管理は手術前から始まり,患者さんの栄養状態に関するフォローは術後,永遠に続きます.笠間医師が手術を頑張ると,私が行うべきフォローは増えていく一方で,減ることはありません.よって,私のカレンダーは患者さんの食事のスケジュールで真っ黒.プライベートの予定を書く余裕がないくらい…….でも,それだけ多くの患者さんが健康に,そして幸せになっていく姿を見られることは素晴らしいことです.その笑顔に支えられ,どんなに忙しくても笠間医師を怨むことなく日々頑張っています!

Expertに学ぶ画像診断・9

Endocytoscopy

著者: 工藤進英 ,   森悠一 ,   池原伸直 ,   若村邦彦 ,   久津川誠 ,   和田祥城 ,   工藤豊樹 ,   宮地英行 ,   山村冬彦 ,   大塚和朗 ,   井上晴洋 ,   浜谷茂治

ページ範囲:P.1652 - P.1660

はじめに

 大腸内視鏡診断学は,拡大内視鏡の登場によって生体内で腫瘍表面の腺口形態(pit pattern)の観察が可能になることで大きな進歩を遂げた1~3).Pit pattern診断学は非腫瘍・腫瘍の鑑別だけでなく大腸癌の深逹度診断においても高い正診率を示し,大腸腫瘍の診断において欠くことのできない診断学へと成長した.Pit pattern診断は消化管粘膜をリアルタイムに詳細に観察し,主に組織の構造異型を反映しているものと考えられる.

 このような流れから,われわれはさらに詳細な内視鏡診断を求めて,生体内で構造異型だけでなく,核異型を含めた細胞異型までの診断を可能としうる大腸用超拡大内視鏡(endocytoscopy:EC)をオリンパス社と共同開発している.ECはリアルタイムでの病理診断に肉薄した診断(endoscopic pathology)を可能とする次世代型の内視鏡と位置づけ,われわれは積極的に臨床研究を進めている4~6).本稿では,われわれの提唱するEC分類を中心として4),大腸EC観察の有用性について報告する.

ラパロスキルアップジム「あしたのために…」・その⑩

“緊急割り込み企画”

著者: 内田一徳

ページ範囲:P.1662 - P.1665

家電芸人のごとく

 小難しい話ばかりしていると読者が引いてしまう恐れあり.

時には初心に返り

 役に立つ原稿を打つべし!

病院めぐり

麻植協同病院外科

著者: 篠原永光

ページ範囲:P.1666 - P.1666

 当院は四国地方,徳島県の県庁所在地である徳島市から西に約20kmの吉野川市に位置するJA徳島厚生連の病院です.厚生農業協同組合事業の理念である,組合員の健康管理と維持増進をはかり,社会地位の向上に寄与することを目的として1947年にこの地に開院されました.

 現在では吉野川市はもとより,隣接する阿波市,美馬市の中核病院として地域医療を担っています.2010年には地域医療支援病院の承認を受け,より一層の地域医療における役割が期待されています.現在は診療科18科,病床数323床(外科病床47床)で診療を行っています.

医療法人財団中山会 八王子消化器病院外科

著者: 鈴木衛

ページ範囲:P.1667 - P.1667

 当院は東京都西部の多摩地域八王子市にあり,新宿から中央線で約40分のJR八王子駅から徒歩10分に位置しています.当市は明治時代から絹織物の産地として発展し,現在は東京のベッドタウンとして人口は55万人を超えています.当院は昭和58年に中山恒明初代理事長が中山記念胃腸科病院として開設しました.東京女子医大消化器病センターの関連病院として開院当初から,消化器疾患の診断と治療の専門病院として八王子市のみならず三多摩地域の消化器疾患治療の基幹病院を目指して医療活動を行ってきました.2代目の羽生富士夫理事長の就任後は消化管疾患のみならず肝胆道膵疾患,とりわけ膵胆道悪性疾患の手術数が著しく増加しました.年間に実施する消化器疾患の手術数は700件以上,消化管内視鏡検査数は1万件以上,1日平均外来患者数240名,平均在院日数6.1日,ベッド稼働率85%で,98床の中小規模病院でありますが,近隣の大学付属病院の消化器疾患手術実施数を超える診療実績を上げています.

 現在は,日本外科学会外科専門医制度関連施設,日本消化器外科学会専門医修練施設,日本消化器病学会認定医施設関連施設,日本消化器内視鏡学会指導施設,日本がん治療認定医機構認定研修施設であり,消化器内科医3名,同外科医9名の総勢12名が常勤医師として勤務しています.外科医師は全員が外科学会指導医,専門医,消化器外科学会指導医,専門医資格を有しています.外来診察をはじめ,内視鏡検査,レントゲン検査は内科医,外科医全員が当番制で行っています.入院患者も内科,外科の枠を越えて医師全員が連携し診断と治療を行っています.毎朝8時から医師全員で回診をし,毎週1回の症例検討会は医師全員,看護師,薬剤師,検査技師が参加して討議を重ねています.手術は火曜と金曜は全日,水曜日は午後に行っています.昨年の手術実施総数は741例で,食道4例,胃96例,小腸大腸207例,肝臓30例,胆道180例,膵臓28例,そのほか196例でした.

手術手技

加速乳房部分照射による乳房温存療法の手技―Open-cavity Implant法におけるアプリケーターの挿入

著者: 佐藤一彦 ,   高柳博行 ,   水野嘉朗 ,   加藤雅宏

ページ範囲:P.1669 - P.1672

要旨

乳房温存術後に行う放射線照射期間の短縮およびさらなる整容性の希求から,乳房部分照射が注目されている.本稿では,小線源を用いた組織内照射による乳房温存療法の手技について述べる.

腫瘍直上の皮膚厚を5mm以上保つよう円状部分切除を行い,断端にクリップを留置し照射計画の指標とする.乳腺組織縫縮によるクーパー靱帯の再形成後,テンプレートを用いてアプリケーターを直視下に留置する.真皮縫合後,cavity内に生理食塩水を注入し手術を終了する.照射範囲はクリップより約1~1.5cm外側に設定し,1回4Gy,1日2回総線量32Gy照射を行う.アプリケーターを抜去し,治療を終了する.

臨床報告

腸管囊胞性気腫症による腸重積の1例

著者: 小松原隆司 ,   藤本康二 ,   坂野茂 ,   東山洋

ページ範囲:P.1673 - P.1677

要旨

症例は15歳,男性.右下腹部痛を主訴に,当院救急外来を受診した.腹部CT検査で虫垂の腫大と白血球数の上昇を認めたため,当初虫垂炎を疑い保存的加療を行ったが,症状の改善を認めず緊急手術となった.手術所見では,盲腸から上行結腸にかけて腸管の重積を認めた.用手整復したところ,先進部に多数の粘膜下腫瘍様の腫瘤を認め,回盲部切除を行った.摘出標本では腫瘤は空胞であり,病理所見から腸管囊胞性気腫と診断された.腸重積を合併した腸管囊胞性気腫症は非常に稀であり,文献的考察を含め報告する.

回盲部に連続して二つの異なる形態でみられた悪性リンパ腫の1例

著者: 石丸綾子 ,   石黒陽 ,   勝浦康光 ,   福島文典 ,   中山順今

ページ範囲:P.1678 - P.1682

要旨

消化管悪性リンパ腫のなかで小腸悪性リンパ腫は胃に次いで多いが,胃悪性リンパ腫に比べ診断がなされた時点で進行している場合が多く,予後は不良といわれる.本症例は腹痛精査のため下部内視鏡検査を行ったが,Bauhin弁が硬く腫大して回腸末端への挿入ができず,術前に診断は得られなかった.手術による病理組織検査で悪性リンパ腫の診断を得た.病変は腫大したBauhin弁とこれに接する回腸末端の潰瘍で,病理組織像は同一であったことから回腸末端に発生した腫瘍が発育のための血行を求めてBauhin弁に進展したものと思われる.回腸末端は小腸悪性リンパ腫の好発部位であるため,下部内視鏡検査でこの部位までの観察は必須である.

有鉤義歯誤飲によるS状結腸損傷の1例

著者: 田崎達也 ,   津村裕昭 ,   日野裕史 ,   山岡裕明 ,   金廣哲也 ,   市川徹

ページ範囲:P.1683 - P.1686

要旨

有鉤義歯は消化管壁を損傷する可能性があるため,緊急治療の適応とされる.症例は56歳,男性.腹痛と黒色便を主訴に近医を受診した.腹部単純X線検査で下腹部に義歯のクラスプが認められたため,義歯誤飲の診断で当院に紹介された.腹部CT検査でS状結腸内に義歯が存在することを確認した.内視鏡的摘出を試みたが困難であったため,開腹手術を行った.クラスプがS状結腸壁に刺入しているのが漿膜面より確認できたため,結腸部分切除を行った.誤飲した義歯の存在部位の確認にはCT検査が有用であること,X線検査のみでは義歯誤飲の診断が困難な症例もあることから,診断・治療方針の決定においてCT検査は必須と考えられた.

大腸憩室浸潤および腸腰筋膿瘍を併発した虫垂癌の1例

著者: 徳毛誠樹 ,   中村聡子 ,   溝尾妙子 ,   久保孝文 ,   鈴鹿伊智雄 ,   塩田邦彦

ページ範囲:P.1687 - P.1690

要旨

症例は52歳の男性.右下腹部痛と便潜血反応陽性のために施行された大腸内視鏡検査において,盲腸から上行結腸にかけて壁外からの圧迫と数か所のびらん性隆起を認めた.腹部CT検査で腸腰筋膿瘍を伴う腫瘍性病巣を上行結腸背側に認め,壁外進展性の上行結腸癌を疑い手術を施行した.盲腸から上行結腸背側に塊状となった腫瘍を認め,後腹膜および腸骨筋の一部を合併切除する回盲部切除術により腫瘍を摘出した.病理検討の結果,虫垂癌が上行結腸背側から憩室部分で限局性に結腸内腔に浸潤露出したために特異な内視鏡像を呈していたと推察された.同時性肺転移を認めていたが化学療法施行後に切除し,初回術後約3年の現在,無再発生存中である.

PET/CT検査が有用であった直腸癌術後孤立性副腎転移の1例

著者: 寺石文則 ,   尾崎和秀 ,   中村敏夫 ,   志摩泰生 ,   岩田純

ページ範囲:P.1691 - P.1694

要旨

症例は43歳,男性.2010年3月,直腸癌に対し術前化学放射線療法後に直腸切断術,前立腺および精囊合併切除を施行した.病理組織学的にtub2,pAN1M0 Stage Ⅲaと診断された.術後1か月目のCEA値は正常で,CT検査で再発所見はみられなかった.術後3か月目にCEA値が上昇したためPET/CT検査を施行したところ,左副腎にFDGの高集積を認めた.造影CT検査にて左副腎に1.9cm大の造影効果を有する腫瘤を認め,孤立性の直腸癌左副腎転移と診断した.同年7月に左副腎摘出術を施行し,病理組織学的に直腸癌左副腎転移と診断された.現在FOLFOX療法を施行中であるが,再発所見はみられていない.

学会告知板

“横浜ライブ・レビュー”10周年記念セミナー

ページ範囲:P.1588 - P.1588

 本年3月12日・13日に予定されておりました第10回国際消化器内視鏡セミナー(横浜ライブ2011)は,3月11日の未曽の震災のため中止を余儀なくされました.被災された方々にお見舞い申し上げます.しかし,関係諸氏の大いなる努力で復興も急速に進みつつあります.さらなる復興を祈念し,また横浜ライブ10周年を記念してのセミナーを終日開催致します.著明なファカルティの先生方のこの10年の内視鏡技術の進歩など,明日からの診療に役立つ講演が多数予定されております.一般の先生方の多くのご参加をお待ちしております.詳細はホームページ(http://www.yokohama-live.com/)をご覧ください.


代表世話人:工藤進英(昭和大学横浜市北部病院)

会 期:2011年12月18日(日)

会 場:東京国際フォーラムB5(480名収容)

書評

安達洋祐(著)「消化器外科のエビデンス 気になる30誌から(第2版)」

著者: 森正樹

ページ範囲:P.1609 - P.1609

 安達洋祐先生はこれまでにいくつかの消化器外科学,あるいは医学教育に関する書籍を著してきました.それらはこれまでの本とは異なり,全く新しい視点から書かれたもので,それが多くの消化器外科医の心をつかみ,この分野としては異例の増刷が繰り返されていると聞いています.

 今回,彼は国際的に認知されている一流の30誌を選び,そこに発表された論文の中から,消化器外科に関連した7,200余りの論文を抽出し,読破し,項目別に整理し,そしてまとめ上げました.そしてこの本が出版される運びとなりました.

辻仲康伸(監修)「大腸肛門病ハンドブック」

著者: 小西文雄

ページ範囲:P.1695 - P.1695

 このたび,医学書院から辻仲康伸氏の監修による『大腸肛門病ハンドブック』が出版された.本来,大腸疾患と肛門疾患の診断と治療は,歴史的に見ても一体となった一つの領域として取り組まれてきており,現在でもその必要性があると思われる.わが国においては,日本大腸肛門病学会がその要となる組織であり,大腸疾患と肛門疾患を包括してその臨床と研究に関する発展における重要な学会としての役割を果たしている.しかし,現在わが国では,大腸疾患と肛門疾患は専門とする医師が異なり,二つの独立した領域として診療体制が取られている傾向がある.

 一方,欧米においては,現在に至るまで,大腸外科医は肛門疾患の治療も同時に行っていることが多く,癌の専門病院を除いては,両者を含めた幅の広い診療と研究が行われている.このような欧米における体制は,以前私が留学した英国のSt. Mark's Hospitalにおいても現在に至るまで,継続して行われており,同病院の外科医たちは大腸肛門病において幅の広い活動を展開している.

ひとやすみ・80

多面的行動の勧め

著者: 中川国利

ページ範囲:P.1627 - P.1627

 一つのことに専念し,その道を極めて権威になることは素晴らしいことである.さらに,本業以外にも趣味を持てれば,人生はさらに豊かになると私は思う.

 父は師範学校時代,恩師に導かれて短歌に興味を持った.しかし,戦後の混乱期,食糧難と過労がたたり,肺結核に罹患して1年以上もの長期入院を余儀なくされた.抗結核剤もない時代であり,ただベッド上の安静を強いられた.そこで歌会に入会し,短歌を詠み親しんだ.ところが,職場に復帰してからは時間的余裕がなく,短歌を詠むことはなくなった.

勤務医コラム・31

Osso

著者: 中島公洋

ページ範囲:P.1661 - P.1661

 当院の全身麻酔外科手術件数は年間70~80例くらい.大きめの手術が終わったあとは,たまに術場の皆と,病院のすぐ前にある小料理屋へ行く.術場ナースは全員20歳代で,私は会話についていけない.

 つい先日も「Ossoがどうしたこうした」なんて話しているので,話の流れからその意味を推察しようとしたが,どうしてもわからない.日本史オタクの私としては,Ossoと言えばひとつしか浮かばない.江戸時代に多発した百姓一揆の一分類に「代表越訴(おつそ)型一揆」というものがある.佐倉惣五郎,磔(はりつけ)茂左衛門…….

1200字通信・34

クリスマスプレゼント

著者: 板野聡

ページ範囲:P.1668 - P.1668

 1年前の暮れのことです.検査や手術が続いて肩や右腕が痛くなりましたが,どうもこれまでとは違う感覚でした.そうしたある日,右手の握力が低下していることに気づき,どうやら単に仕事の疲れからと片づけるわけにはいかなくなりました.

 早速,整形外科医の友人に相談したところ,「それは頸からでしょう」の一言.避けてきた答えですが,「やっぱりそうか」ということになり,正直ブルーな気分に陥ることになりました.「運動麻痺が出てくると手術も考えたほうが……」と続けられたときには,検査や手術の予定表が目に浮かび,手術に対する恐怖心より仕事のやりくりを心配するという,今から思えば少し滑稽な事態と相成りました.

昨日の患者

会津っぽ

著者: 中川国利

ページ範囲:P.1677 - P.1677

 2013年のNHK大河テレビドラマとして「八重の桜」が放映予定である.主役は,男装して銃を持って会津若松城に立てこもり,のちに新島襄の妻となった新島八重である.明治の時代をエネルギッシュに生き抜いた女性の如く,現代を生き抜く新島八重が存在する.

 10数年前のことであるが,70歳代前半のNさんが集団検診で大腸癌を指摘され,当科を紹介されてきた.手術を前にして,同意書を作成するために奥様に来院していただいた.すると,一介の外科医である私でも知っているN先生が現れた.

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原稿募集 「臨床外科」交見室

ページ範囲:P.1608 - P.1608

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.1696 - P.1696

読者アンケートのお願い

ページ範囲:P.1697 - P.1697

投稿規定

ページ範囲:P.1698 - P.1699

著作権譲渡同意書

ページ範囲:P.1700 - P.1700

あとがき

著者: 桑野博行

ページ範囲:P.1702 - P.1702

 去る平成23年9月17日に,「第822回外科集談会」を当番世話人として群馬の地でお世話する機会をいただいた.若き外科医の学会発表における所謂「登竜門」として関東を中心に開催され,実に822回の歴史を刻んできた伝統ある会であり,大変な光栄に浴したことに感謝しつつ,会の準備と運営にあたった.会には本会会長である日赤医療センター名誉院長,森岡恭彦先生も出席され,プログラムの最後まで,若き外科医の発表に温かいまなざしを注がれていたことは,私自身にとっても大きな感銘を覚えたものであった.

 このような「外科集談会」はその歴史に違いはあるものの,全国の各地方で定期的に開催されているであろうし,またいくつかの全国規模の学会も学会長としてお世話させていただいた私自身がなぜこの「外科集談会」に関して書かせていただくかというと,全国規模の学会とはまた異なった,大きな感慨を抱いたからである.

「臨床外科」第66巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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