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文献詳細

雑誌文献

臨床外科66巻5号

2011年05月発行

臨床報告

18か月の経過観察後に胃癌の転移と判明した回腸潰瘍の1例

著者: 澤田俊哉1 小棚木均1 吉楽拓哉1 酒井梨香1 吉川雅輝1 大内慎一郎1

所属機関: 1秋田赤十字病院外科

ページ範囲:P.671 - P.676

文献概要

要旨

患者は75歳,男性.2008年7月に下血で発症した.上部消化管内視鏡検査(GTF)では胃潰瘍瘢痕を認めた.下部消化管内視鏡検査(CF)で終末回腸に3か所の不整形潰瘍を認め,生検では良性であった.18か月後でも潰瘍性病変に変化がなかった.2010年1月のGTFで胃体部に4型胃癌を認めた.胃癌と難治性小腸潰瘍の診断で胃全摘術と回盲部切除術を施行した.病理所見では胃癌は非充実型低分化腺癌で,終末回腸の潰瘍性病変はいずれも胃癌の小腸転移と診断された.胃癌の小腸転移の報告は稀である.自験例では18か月前には診断できなかった.小腸潰瘍が胃癌の転移である可能性も念頭に置くべきと考えられた.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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