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文献詳細

雑誌文献

臨床外科66巻7号

2011年07月発行

交見室

肛門診について思う

著者: 出口浩之1

所属機関: 1ときわ病院外科

ページ範囲:P.949 - P.949

文献概要

 肛門周囲に異常を自覚した場合,何科に行けば一番よいのかわからないという声をよく耳にする.肛門科を標榜する病院やクリニックはあまた見かける.もちろん,それらはほぼすべての肛門疾患に対応できるはずであるが,現状は外科,特に消化器外科医,なかでも肛門疾患担当者(肛門専門医でない場合が多い)が担っていることが多い.また,胃腸疾患には精通していても肛門疾患には興味すら示さない消化器科医が多いように,直腸癌の手術には熱心だが肛門疾患には手を出さない消化器外科医も珍しくない.

 この原因は,痔核,痔瘻,裂肛に代表される肛門疾患が肛門診とともに長らくほかの消化器病変やその検査に比べて軽んじられ疎まれてきた歴史的経緯がある1).また,卒後研修の多くが大学病院や基幹病院で行われ,肛門疾患の治療(手術)はあってもきわめて少数であり,指導医もいない場合が多く,したがって,興味・関心を持つことなく各人がその後の専門的医療に入ってしまう.新臨床研修制度が始まってもその実情は何も変わらない.さらに,同じ下部消化管疾患でも癌や炎症性腸疾患(IBD)の話題に比べて学術論文のテーマになりにくい面もあろう.また,肛門や陰部,さらに便に対してことさらに嫌悪感の強い方は肛門視触診を回避する傾向もあるだろう.最近では,医療法上は肛門科ではなく,肛門外科と肛門内科という標榜科になっている.前者はともかく,後者はいったい何をする科なんだと思わず唸ってしまうのは私だけだろうか.一般の患者の方々は,なおさらのことであろう.

参考文献

1)江頭由太郎:編集後記.胃と腸 45:1429,2010

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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