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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科67巻11号

2012年10月発行

雑誌目次

特集 外科医のための癌診療データ

ページ範囲:P.1 - P.1

本書の目的と使い方

著者: 島津元秀

ページ範囲:P.5 - P.5

 本誌ではすでに2回にわたって「癌診療に役立つ最新データ」という特集を組み,2002年, 2007 年の増刊号として出版し,好評を博した.それから5年が経過した現在,日進月歩である癌診療においてはすでに新たな知見とエビデンスが集積され,「最新データ」の改訂が必要となった.

今回は,一般外科領域で遭遇する各種の癌のほか,消化管間質腫瘍(GIST) , 膵・消化管神経内分泌腫瘍(NET) についても項目を追加し,それぞれの疾患における,疫学,診断,外科治療,内科治療,ならびに集学的治療について,外科のみならず広い分野のエキスパートにお願いして執筆していただいた.本書を紐解けば,「外科医が必要とする」癌診療に関する最新のデータを網羅的に知ることができる.

総論

癌疫学データベース

著者: 片野田耕太

ページ範囲:P.6 - P.11

はじめに

 一昔前であれば,疫学データを使おうとすると,国際機関などが発行した分厚い報告書を図書館で探して,細かい表とにらめっこをしながら手入力しなければならなかった.しかし今では,多くの疫学データがウェブ上に公開されており,パソコン上でコピーすればすぐに使えるようになった.特にがんは疫学的なデータの整備が最も進んでいる疾病の1つである.しかし,情報の入手が容易になった分,その選び方や使い方を間違える機会も多くなったといえる.

 本稿では,がん疫学の分野で用いられる指標とデータベースを紹介し,その特徴をまとめる.

癌外科治療成績の正しい評価と解析・解釈

著者: 坂本純一 ,   松井隆則

ページ範囲:P.12 - P.18

覚えておきたいデータ

◆全国登録や後ろ向き研究による外科治療成績のデータにはバイアスがかかっており,信頼性が低い場合が多い.

◆信頼性の高いデータはRCTのITT解析,または複数のRCTを統合したIPDメタアナリシスの結果である.

◆Censored caseが多い生存曲線から算出した“○%生存期間”や“○年生存率”は信頼区間が広がってしまっており,信頼性に乏しい.

臓器別最新データ 1.甲状腺癌

甲状腺癌の疫学

著者: 小川利久

ページ範囲:P.19 - P.24

覚えておきたいデータ

◆甲状腺癌発見の動機は,近年は超音波検査による偶発的発見が36%と最多であり,以下,頸部腫瘤の自覚(17.8%),他覚(12.7%)の順となる.

◆2005年の甲状腺癌の罹患率は,人口10万対男性3.4人,女性10.8人で,女性は男性の約3倍の罹患率である.

◆甲状腺癌の組織型別頻度は,乳頭癌92.4%,濾胞癌4.5%,髄様癌1.6%で,50~59歳が罹患のピークである.未分化癌は1.3%で70~79歳がピークである.

甲状腺癌の診断

著者: 宮章博 ,   宮内昭

ページ範囲:P.25 - P.30

覚えておきたいデータ

◆わが国では2010年に「甲状腺腫瘍診療ガイドライン」が出版されたので,それを参考に診療することが望ましい.

◆甲状腺腫瘍は組織型によって治療法が異なるので,手術前に組織型診断まで的確に鑑別診断を行って治療する.

◆鑑別診断には超音波検査,細胞診は非常に有用である.濾胞癌の術前診断は困難である.髄様癌は術前にRET遺伝子の検査を行うことが望ましい.

甲状腺癌の治療

著者: 池田佳史

ページ範囲:P.31 - P.35

覚えておきたいデータ

◆2cm以下の癌で,リンパ節転移・遠隔転移のない例が全摘を必要としない症例である.

◆5cm以上の癌,気管/食道浸潤,3cm以上のリンパ節転移,多発リンパ節転移,リンパ節の節外浸潤,遠隔転移を有する症例が全摘の適応である.

◆中央区域リンパ節郭清は同部に転移がなくても郭清を行うべきであるが,外側区域のリンパ節再発は再手術で摘出が可能であり,予後には影響しない.

甲状腺癌の非切除・再発例

著者: 松津賢一 ,   吉田明

ページ範囲:P.36 - P.41

覚えておきたいデータ

◆甲状腺分化癌(乳頭癌・濾胞癌)に対する初回治療の原則は外科的切除であり,非切除では根治性が得られない.

◆局所再発治療の原則も外科的切除であり,治癒切除できれば,良好な予後が期待できる.

◆遠隔転移再発に対しては131I内用療法を行うが,131Iの取り込みのない無効症例の予後は悪い.

◆放射線外照射療法と分子標的治療薬のエビデンスは少なく,今後,新たなエビデンスの蓄積が望まれる.

2.肺癌

肺癌の疫学

著者: 川後光正 ,   淺村尚生

ページ範囲:P.42 - P.45

覚えておきたいデータ

◆2009年の肺癌総死亡数は67,583人(男性49,035人,女性18,548人)で,部位別の悪性新生物死亡のうち男性では第1位であり,女性では第2位である.

◆わが国における喫煙率は徐々に低下しており,2010年は男性で32.2%,女性で8.4%である.

◆肺癌は男性の69.2%,女性の18.4%は喫煙が原因とされているが,肺癌死亡は喫煙のパターンをよく反映しており,喫煙対策の推進が今後の肺癌死亡・罹患の抑制には必須である.

肺癌の診断

著者: 江口研二 ,   太田修二 ,   関順彦

ページ範囲:P.46 - P.54

覚えておきたいデータ

◆この数年間で,肺癌診療の内容は個別化診療という要素で劇的に変貌しつつある.

◆予後をより的確に反映する新TNM分類が使用された.

◆肺癌の局在診断,鑑別診断,病期診断に関するPET/CT診断の意義は,より現実的な評価に変わりつつある.

◆肺腺癌では,上皮内癌および微小浸潤癌が明確化され,小型腺癌に新分類が適用される.非小細胞癌は,扁平上皮癌と非扁平上皮癌に分類される.

◆肺癌検診の方法論として,高危険群に対する低線量CTによる検診に死亡率低減効果が証明された.

肺癌の治療

著者: 池田徳彦

ページ範囲:P.55 - P.61

覚えておきたいデータ

◆肺癌は病期別に治療方針が大きく異なるため,正確な病期診断が必要である.

◆Ⅰ・Ⅱ期は手術が治療の中心で,必要に応じて術後補助化学療法を行う.Ⅲ期は化学放射線療法が主体であるが,ⅢA期の一部に手術が行われることがある.

◆Ⅳ期は薬物治療の適応である.肺癌の組織型とともにEGFR遺伝子変異の有無を検索し,陽性の場合はEGFRチロシンキナーゼ阻害薬を1次治療で用いることもある.

非小細胞肺癌の非切除・再発例

著者: 多田弘人

ページ範囲:P.62 - P.65

覚えておきたいデータ

◆非切除例の治療法と治療成績:放射線治療可能な症例は,可能な限り放射線と化学療法の同時併用療法が選択される.その成績は中間生存期間(MST)が約27か月である.放射線治療不能な集団については可能ならばプラチナを含む多剤併用化学療法が推奨され,そのMSTは約13か月とされている.ただし,非小細胞肺癌のなかでEGFRに遺伝子変異がみられる症例では化学療法とEGFRチロシンキナーゼ阻害薬を投与するとMSTが約27か月である.

◆術後フォローアップの方法:一般的に術後の経過観察は当初の2年間は6~12か月ごとの診察とCT検査,その後の3年間は1年ごとの診察とCT検査が推奨されている.

◆再発時期・再発部位:完全切除された症例は多くの場合2年以内に再発することが知られている.多いのは術後9か月目と2年目,4年目といわれている.しかし,5年以降に再発することも稀ではない.

◆再発後の治療法と治療成績:原則的に再発後の治療は非切除例と同様である.原病巣がコントロールされている,単発の再発転移例に対して根治を目的とした局所治療は予後を改善する.

3.乳癌

乳癌の疫学

著者: 神保健二郎 ,   木下貴之

ページ範囲:P.66 - P.71

覚えておきたいデータ

◆欧米諸国では乳がんの罹患率は漸増しているが,死亡率は1990年代から減少に転じている.一方で,日本においては,罹患・死亡率ともに年々増加傾向にある.

◆日本におけるマンモグラフィ検診受診率は,欧米の70~80%に比べ,20%程度と低い.このことが,日本の乳がん死亡率が低下しない理由の1つとして挙げられる.

◆日本における乳がん発生年齢は45~49歳,60~64歳と2峰性のピークがあり,閉経前乳がんの比率が欧米諸国に比べ高い.しかし,今後閉経後乳がんが増加し,欧米に年齢分布も近づくと予測されている.

◆全乳がんの5~10%が遺伝子異常に伴って発症するといわれており,家族性乳がんのうち20~30%はBRCA1/2遺伝子異常(変異)が関与している.

乳癌の診断

著者: 佐野宗明

ページ範囲:P.72 - P.79

覚えておきたいデータ

◆わが国の乳癌は着実に早期化に向かっており,小腫瘤を対象とする診断の機会が多くなっている.各種電子機器を駆使する診断と同時に視触診も軽視できず,それは次のステップへの指針ともなる.

◆わが国の検診発見乳癌の腫瘤径は縮小化にあり,自覚症状を伴わない場合は1.0cm以下が40%以上となった.

◆年齢分布においては50歳代後半がピークを示したことと,60歳以上の乳癌の増加が新しい動向といえる.

乳癌の治療

著者: 藤井公人 ,   安藤孝人 ,   手塚理恵 ,   吉田美和 ,   中野正吾 ,   福富隆志

ページ範囲:P.80 - P.84

覚えておきたいデータ

◆センチネルリンパ節転移がisolated tumor cells(ITC)の診断の場合は,腋窩リンパ節郭清の省略が可能となる.

◆進行・再発乳癌の化学療法において高い奏効率を得るには,パクリタキセルとベバシズマブが有効であるが,生存率には寄与せず副作用発現も多いため,先を見据えた慎重投与が望まれる.

◆新規画像診断法としてMRIとUSを同期させたrealtime virtual sonography(RVS)が注目されている.

乳癌の非切除・再発例

著者: 松本暁子 ,   村田健 ,   永山愛子 ,   関朋子 ,   高橋麻衣子 ,   林田哲 ,   神野浩光 ,   北川雄光

ページ範囲:P.85 - P.89

覚えておきたいデータ

◆局所進行乳癌,炎症性乳癌に対しては,手術,放射線療法,薬物療法などによる集学的治療が勧められる.

◆Stage Ⅳ乳癌の治療は薬物療法が基本であり,原発巣の切除は局所コントロールによる利益が十分得られる場合に施行する.原発巣切除の予後改善効果に関する臨床試験が進行中である.

◆再発・転移乳癌の治療の原則はHortobagyiのアルゴリズムに抗HER2療法を加えて施行する.

4.食道癌

食道癌の疫学

著者: 大木進司 ,   竹之下誠一

ページ範囲:P.90 - P.96

覚えておきたいデータ

◆食道癌の罹患数は年々,増加傾向にある.年齢調整罹患率の年次推移は男性では1975年から緩やかに増加し,女性では横ばいである.年齢調整死亡率の年次推移は男性でほぼ横ばい,女性で減少傾向である.

◆男女比は6:1で,占拠部位は胸部中部食道が51.6%と最も多く,組織型は扁平上皮癌が92.9%であり腺癌は少ない.同時性重複癌は7.4%,異時性重複癌は10.2%と報告されており重複臓器としては胃,頭頸部,大腸,肺の順に多い.

◆国際比較において年次別年齢調整罹患率では男性の場合,1998~2002年の5年間の推計に限って比較するとアジア地域(日本,中国)やフランスで高い傾向があるが,これらの地域も年次推移ではいずれも横ばいから減少傾向である.年次別年齢調整死亡率は1999~2003年の5年間の推計で,男性では28か国中5位で年次推移では横ばい,女性は28か国中14位で年次推移では減少傾向である.

食道癌の診断

著者: 廣野靖夫 ,   山口明夫

ページ範囲:P.97 - P.101

覚えておきたいデータ

◆食道癌は各種画像診断を総合的に判定し,腫瘍の壁深達度診断,リンパ節転移診断,遠隔転移診断から進行度を診断する.

◆壁深達度診断には表在癌では内視鏡検査(NBI併用拡大内視鏡を含む)やEUSや造影検査,進行癌ではCT検査やMRI検査が有用である.

◆リンパ節転移診断にはEUS,CT検査,PET検査が有用で組み合わせる必要がある.

◆遠隔転移診断には従来のCT検査に加えてFDG-PET検査が有用である.

食道癌の治療

著者: 川久保博文 ,   竹内裕也 ,   北川雄光

ページ範囲:P.102 - P.106

覚えておきたいデータ

◆食道癌の術後5年全生存率はStage 0 77.8%,Stage Ⅰ 74.4%,Stage Ⅱ 49.5%,Stage Ⅲ 30.7%,Stage ⅣA 14.8%,Stage ⅣB 11.5%である.

◆JCOG9204は,pStage Ⅱ,ⅢでR0,R1手術が行われた症例を対象にし,術後化学療法が手術単独に対して5年無再発生存率で45%対55%(p=0.037)と有意に良好であった.JCOG9907は,cStage Ⅱ,Ⅲ(T4は除く)を対象にし,5年全生存率で38.4%対60.1%(p=0.013)と,術前化学療法が術後化学療法に対して有意に良好であった.

◆JCOG9906は,Stage Ⅱ,Ⅲ進行食道癌に対する放射線化学療法同時併用療法である.3年生存率45%,5年生存割合37%であり,JCOG9907による外科切除の成績と比較すると不良であった.

食道癌の非切除・再発例

著者: 宮崎達也 ,   猪瀬崇徳 ,   横堀武彦 ,   田中成岳 ,   鈴木茂正 ,   小澤大悟 ,   原圭吾 ,   桑野博行

ページ範囲:P.107 - P.111

覚えておきたいデータ

◆食道癌の非切除症例の治療法は化学放射線治療が第一選択である.

◆食道癌の根治切除後の再発時期は2年以内に80%以上の症例が診断される.

◆再発診断時からの生存期間中央値は5~10か月であるが,その再発臓器や再発部位によって長期生存や完治する症例が存在する.

5.胃癌

胃癌の疫学

著者: 森田信司 ,   大橋真記 ,   深川剛生 ,   片井均

ページ範囲:P.112 - P.119

覚えておきたいデータ

◆わが国の胃癌罹患者数は年間約11万人で,全癌病変のなかで依然最多である.

◆老年人口の増加と年少人口の漸減を反映し,胃癌患者の高齢化も顕著である.

◆若年者でHelicobacter pyloriの感染率が低下傾向にあり,将来的には胃癌の罹患者数は減少していくものと推測される.

胃癌の診断

著者: 小川雅子 ,   瀬戸泰之

ページ範囲:P.120 - P.125

覚えておきたいデータ

◆近年,胃癌に対する治療は多様化しており,治療法決定のため以前にも増して精度の高い診断が求められている.

◆「胃癌取扱い規約」が改訂され,2010年3月に第14版が発行された.改訂の特徴はガイドラインとの住み分けと,T,N,Mの分類にUICC/TNM分類を採り入れたことにある.

◆2011年にトラスツズマブが治癒切除不能な進行・再発の胃癌に保険適用されたが,その使用には生検標本や手術標本でHER2過剰発現を確認する必要がある.

胃癌の治療

著者: 布部創也 ,   比企直樹 ,   谷村愼哉 ,   佐野武 ,   山口俊晴

ページ範囲:P.126 - P.131

覚えておきたいデータ

◆治療方針の決定においては主に「胃癌治療ガイドライン」に従うことが多い.

◆内視鏡治療の適応には絶対適応病変と適応拡大病変がある.いずれも一括切除が望ましく,ESDが普及している.

◆「胃癌治療ガイドライン」の改訂によって,胃切除範囲の明記と切除術式別リンパ節郭清範囲が固定化され日常診療により即したものになった.

胃癌の非切除・再発例

著者: 田中浩明 ,   六車一哉 ,   櫻井克宣 ,   久保尚士 ,   山本篤 ,   山下好人 ,   澤田鉄二 ,   大平雅一 ,   平川弘聖

ページ範囲:P.132 - P.137

覚えておきたいデータ

◆非切除胃癌に対する治療は化学療法が中心で現在はS-1+シスプラチン療法が標準治療であり,奏効率は54%,全生存期間中央値は13か月である.

◆無症状再発症例の予後は良好であり,CTを用いた術後サーベイランスが重要である.再発率は30%であり,腹膜播種再発が最も多い.

◆再発後の治療は,分子標的薬を含めた集学的治療の効果を検証する臨床試験の結果が待たれる.

6.肝癌

肝癌の疫学

著者: 田中英夫 ,   細野覚代 ,   伊藤秀美

ページ範囲:P.138 - P.142

覚えておきたいデータ

◆わが国の肝癌罹患率は,C型肝炎ウイルスキャリアの減少により,減少傾向にある.

◆肝細胞癌患者に占める高齢者・女性の割合が増加している.

◆慢性ウイルス性肝炎患者を禁煙,禁酒させることで,肝細胞癌発症リスクを軽減するとともに,肝細胞癌罹患後の予後を改善することができる.

肝癌の診断

著者: 金守良

ページ範囲:P.143 - P.149

覚えておきたいデータ

◆肝癌の診断には,主に腫瘍マーカーとCT,MRI,USなどの画像検査が有用である.

◆原発性肝癌のうち94.0%が肝細胞癌で,4.4%の肝内胆管癌がこれに続く.肝細胞癌は肝内胆管癌に比べ障害肝に発生する.肝内胆管癌切除例のうち,約4割の症例がリンパ節転移を伴っていた.肝外再発部位は肝細胞癌では肺,骨,リンパ節で,肝内胆管癌ではリンパ節,腹膜,肺の順位であった.

◆今後2cm以下肝細胞癌(早期肝細胞癌を含む)の診断においては,2007年以降に保険認可となったSonazoid CEUS,Gd-EOB-DTPA MRIが重要となる.

肝細胞癌の治療

著者: 井上陽介 ,   國土典宏

ページ範囲:P.150 - P.160

覚えておきたいデータ

◆第18回原発性肝癌追跡調査の結果,5年生存率は切除54.2%,局所療法45.6%,TACE 24.2%であった.

◆各根治的治療法の安全性・根治度はほぼplateauに達しており,切除では腹腔鏡下手術の台頭による低侵襲化が大きなトピックである.

◆最も根治性の高い切除でも,5年再発率は7割に達する.今後の長期予後の改善には,再発予防のための補助療法の確立がキーである.

肝細胞癌の非切除・再発例

著者: 土谷薫 ,   泉並木

ページ範囲:P.161 - P.166

覚えておきたいデータ

◆初回ラジオ波焼灼術(RFA)の1年局所再発率は1.4~10%で,Child-Pugh A・単発・3cm以内初回RFA例の5年・10年生存率は74.0%・41.3%である.

◆分子標的薬治療の画像検査所見はmRECIST基準やRECICL基準を用いて判定され,CRは0~5%,CR+PR+SDは70~80%,PDは20%前後に認められる.

◆リザーバー動注化学療法の画像検査所見はRECICL基準とRECIST基準に従って判定され,CRは2~10%,CR+PR+SDは30~45%,PDは約50%に認められる.

◆放射線治療(定位放射線・陽子線・重粒子線)の進歩は著しく,5cm以内の肝癌であれば標的病変の奏効率(CR+PR)は75~90%である.

肝内胆管癌の治療

著者: 有泉俊一 ,   山本雅一

ページ範囲:P.167 - P.173

覚えておきたいデータ

◆ICC切除例の5年生存率29%,生存期間中央値20か月である.

◆胆管内発育(IG)型,肝門への浸潤のない胆管浸潤(PI)型の5年生存率80%以上である.

◆リンパ節転移があれば予後不良で5年生存率7%,生存期間中央値12か月である.

◆免疫治療が術後補助療法として有効である.

◆化学療法(ゲムシタビン+シスプラチン,ゲムシタビン+S-1)の生存期間中央値は約12か月である.

転移性肝癌の治療

著者: 河地茂行 ,   千葉斉一 ,   高野公徳 ,   島津元秀

ページ範囲:P.174 - P.178

覚えておきたいデータ

◆診療ガイドラインで転移性肝癌に対して切除を推奨している癌腫は,大腸癌,卵巣癌,消化管カルチノイド,腎癌などであり,ほかの癌腫の肝転移に関しては個々の症例で慎重な判断が必要である.

◆大腸癌肝転移に対する局所治療のgold standardは切除であるが,焼灼術や放射線治療の役割も増している.

◆大腸癌肝転移切除後(初回)の5年累積生存率は約50~60%と近年,非常に良好となった.

7.胆道癌

胆道癌の疫学

著者: 林洋毅 ,   海野倫明

ページ範囲:P.179 - P.185

覚えておきたいデータ

◆胆管癌,乳頭部癌の初発症状として最も多いものは黄疸であるが,胆囊癌は黄疸で発見される症例は少ない.

◆以前から胆道癌は女性に多いとされてきたが,近年の傾向では男女差を認めなくなりつつある.

◆胆道癌は,わが国をはじめ,アジア諸国に多い疾患であり,欧米諸国での罹患率は低い.このため,欧米からの治療エビデンスに乏しく,罹患率の高いわが国からのエビデンス発信が求められる.

胆道癌の診断

著者: 土屋貴愛 ,   糸井隆夫 ,   祖父尼淳 ,   糸川文英 ,   栗原俊夫 ,   辻修二郎 ,   石井健太郎 ,   池内信人 ,   梅田純子 ,   田中麗奈 ,   殿塚亮介 ,   本定三季 ,   森安史典

ページ範囲:P.186 - P.197

覚えておきたいデータ

◆胆道癌診断のファーストステップは血液生化学検査と腹部超音波検査であり,セカンドステップとしてはCT,MRI(MRCP)があり,その後にEUSやERCP,ERCP下での細胞診,組織診,さらには胆管癌であれば胆道鏡検査とステップアップしていく.

◆胆道癌の肉眼分類は乳頭型,結節型,平坦型(それぞれ膨張型と浸潤型に亜分類)その他に分類され,欧米では,papillary type,nodular type,sclerosing typeに分類される.

◆胆道癌の病期分類には,わが国では「胆道癌取扱い規約」による分類が,国際的にはUICCのTNM分類が広く使われている.

◆肝外胆管癌の長期予後解析で,in situ様の粘膜内での腫瘍組織の遺残の有無は患者の術後の生存予後には影響しないが,断端部位での浸潤像を示す癌の遺残は術後の局所再発および術後の生存予後に有意に関連する.

胆管癌の治療

著者: 小林真一郎 ,   菅原元 ,   江畑智希 ,   横山幸浩 ,   國料俊男 ,   角田伸行 ,   伊神剛 ,   深谷昌秀 ,   上原圭介 ,   板津慶太 ,   吉岡裕一郎 ,   梛野正人

ページ範囲:P.198 - P.202

覚えておきたいデータ

◆手術手技や周術期管理の向上によって肝門部胆管癌術後の合併症発症率は43~49%,在院死亡率は2~8%となった.

◆肝門部胆管癌術後の5年生存率は33~42%,根治切除が可能であったR0切除率は56~87%である.

◆肝門部胆管癌でR0切除が可能であったものの,リンパ節転移陽性例の5年生存率は21%であり,術後補助化学療法の効果が待たれるところである.

胆囊癌の外科治療

著者: 高屋敷吏 ,   清水宏明 ,   吉留博之 ,   大塚将之 ,   加藤厚 ,   吉富秀幸 ,   古川勝規 ,   竹内男 ,   久保木知 ,   鈴木大亮 ,   中島正之 ,   宮崎勝

ページ範囲:P.203 - P.206

覚えておきたいデータ

◆胆囊癌に対する外科切除術式は進展度やリンパ節転移などから決定され,近年,手術死亡率は1%前後を推移している.

◆進行癌症例に対する拡大手術では40~60%程度の合併症をきたし,その予後もfStage Ⅳbにおける5年生存率は6.3%と依然として不良である.

◆胆囊癌に対する術前あるいは術後補助化学療法の有効性を示すエビデンスはいまだ十分ではなく,臨床試験として施行されることが望ましい.

胆道癌の非切除・再発例

著者: 古瀬純司 ,   成毛大輔 ,   有馬志穂 ,   春日章良 ,   北村浩 ,   高須充子 ,   長島文夫

ページ範囲:P.207 - P.213

覚えておきたいデータ

◆胆道癌の術後再発時期は3年以内が多く,再発部位としては肝,腹膜,局所再発が多い.

◆非切除例および術後再発例に対する治療はゲムシタビン+シスプラチン併用療法が標準治療である.ゲムシタビン単独との比較試験では生存期間中央値は11~12か月である.

◆術後フォローアップの方法としてはCEAおよびCA19-9の腫瘍マーカーと造影CTが基本であり,3か月ごとに実施することが勧められる.

◆今後,ゲムシタビン+S-1併用療法やゲムシタビン+S-1+シスプラチン併用療法,さらに2次治療や分子標的薬の開発が期待される.

8.膵癌

膵癌の疫学

著者: 砂村眞琴 ,   河地茂行 ,   島津元秀

ページ範囲:P.214 - P.221

覚えておきたいデータ

◆膵癌による死者は28,815人(2011年)で,継続的に増加しており,男性死因の第5位,女性死因の第4位である.

◆膵癌患者の7~10%は家族歴があり,家族性膵癌(第一度近親者に2名以上膵癌患者がいる)では膵癌のリスクが9倍になる.

◆喫煙は膵癌発症の危険率を増加させ,25~30%は喫煙が原因,禁煙で膵癌の22%は予防できる.

膵癌の診断

著者: 高山敬子 ,   白鳥敬子

ページ範囲:P.222 - P.227

覚えておきたいデータ

◆膵癌のCA19-9の感度は70~80%,Lewis血液型陰性症例では偽陰性を示す.

◆膵癌の各種画像検査での診断能は70~90%である.

◆膵癌の各種細胞診・生検の診断能は80%以上である.

膵癌の治療

著者: 谷眞至 ,   山上裕機

ページ範囲:P.228 - P.232

覚えておきたいデータ

◆通常型膵癌切除症例の年代別生存率は2001年以降の症例の1年生存率が63.6%,生存期間中央値が18.2か月と2000年以前と比較して有意に改善している.

◆わが国では積極的に拡大切除が行われてきたが,4編のRCTすべてが拡大郭清による生存期間延長効果はなく,うち2編の下痢の頻度は拡大郭清で42%,48%ときわめて高頻度であった.

◆塩酸ゲムシタビンの補助化学療法としての有用性はCONKO-001試験,JSAP-02試験で報告された.

膵癌の非切除・再発例

著者: 坂本康成 ,   上野秀樹 ,   森実千種 ,   近藤俊輔 ,   林秀幸 ,   山口智宏 ,   高橋秀明 ,   大野泉 ,   清水怜 ,   光永修一 ,   池田公史 ,   奥坂拓志

ページ範囲:P.233 - P.238

覚えておきたいデータ

◆遠隔転移例の治療選択肢はゲムシタビン(+エルロチニブ)とS-1である.FOLFIRINOXはわが国では未承認であり,2012年5月現在,治験が行われている.局所進行例に対しては化学療法もしくは化学放射線療法が治療選択肢である.

◆切除例に対しては,CONKO-001,ESPAC-1,ESPAC-3などの第Ⅲ相試験を経て,術後補助ゲムシタビンが広く行われている.

◆切除後再発例は一般臨床では遠隔転移膵癌に準じた治療選択肢を検討することが多い.補助療法後の再発に関する治療選択に関しては十分なデータがない.

9.大腸癌

大腸癌の疫学

著者: 固武健二郎

ページ範囲:P.239 - P.244

覚えておきたいデータ

◆日本は大腸癌の高頻度国であり,大腸癌罹患数は10.7万人(2006年),大腸癌死亡数は4.5万人 (2010年)にまで増加している.

◆大腸癌罹患リスクは加齢とともに高まる.高齢者層の増加などの年齢分布の影響を調整すると,死亡率と罹患率は横這いないし低下する傾向にある.

◆治療成績(生存率)は海外よりも良好であるが,大腸癌死亡の低減効果が示されている検診受診率は低率のまま推移している.

大腸癌の診断

著者: 今井裕 ,   川田秀一 ,   市川珠紀 ,   杉野吉則

ページ範囲:P.245 - P.249

覚えておきたいデータ

◆大腸癌の診断で便潜血が陽性であれば,精密検査としてX線注腸造影検査,内視鏡検査のほかにCT colonographyがある.

◆内視鏡検査による拡大観察は,過形成,腺腫,癌の診断ができ,さらに,m癌とsm癌との識別も可能である.

◆表面型早期癌の解剖学的分布は進行癌の分布ときわめて類似しており,表面型腫瘍の検出が重要である.

大腸癌の治療

著者: 金光幸秀 ,   小森康司 ,   木村賢哉

ページ範囲:P.250 - P.259

覚えておきたいデータ

◆「大腸癌取扱い規約」を共通言語にして新たに導入された「大腸癌治療ガイドライン」によって,わが国における大腸癌治療の均てん化が推し進められている.

◆国内医療環境の特徴である,優れた外科手術,病理診断を基礎として,わが国からの良質なエビデンスが出始めている.

◆Stage Ⅳ大腸癌症例の治療成績をいかに向上させるかは,今後の重要な課題である.

大腸癌の非切除・再発例

著者: 植竹宏之 ,   石川敏昭 ,   石黒めぐみ ,   杉原健一

ページ範囲:P.260 - P.264

覚えておきたいデータ

◆非切除例の治療法と治療データ:Stage 0を除く全大腸癌症例の13~17%がStage Ⅳ症例である.標準治療法は化学療法である.化学療法が奏効して切除可能になった場合は切除を行う.

◆術後フォローアップの方法:問診,診察,CEA検査を3か月ごと(術後3年以降は半年ごと)に行う.CT検査は6か月ごとに行う.大腸内視鏡検査は,術前内視鏡(+)→術後1年目,3年目(直腸癌では2年目にも),術前内視鏡(-)→術後6か月目以内である.日米でガイドラインが異なっている.

◆再発時期,再発部位:再発率は17.3%.累積再発率は3年83.2%,4年91.6%,5年96.4%である.再発部位は,結腸およびRS癌では肝7.0%,肺3.5%,局所1.8%の順であるが,直腸癌では局所8.8%,肺7.5%,肝7.3%の順である.Stage Ⅰ,Ⅱ,Ⅲの再発率はそれぞれ3.7%,13.3%,30.8%である.

◆再発後の治療法と治療成績:非切除症例と同様である.

10.消化管間質腫瘍(GIST)

GISTの疫学

著者: 澤木明 ,   蟹江浩 ,   山田智則 ,   林克巳 ,   折戸悦朗 ,   山雄健次

ページ範囲:P.265 - P.269

覚えておきたいデータ

◆頻度の高い初発症状は消化管出血,腹痛,腹部腫瘤であるが,GISTに特異的な症状はない.

◆GISTの発生頻度は100万人当たり10~15人で,原発部位は胃が最も多く,小腸,大腸と続き食道や腹膜はきわめて頻度が少ない.

◆大半のGISTは遺伝しないが,多発する場合や20歳以下の症例では遺伝性のGISTの可能性が高い.

GISTの診断

著者: 西田俊朗 ,   赤松大樹 ,   鄭充善

ページ範囲:P.270 - P.273

覚えておきたいデータ

◆GISTは粘膜下腫瘍として術前には診断されていることが多い.術前の診断では造影CTとEUSが重要であり,術前確定診断には多くの場合EUS-FNAが必要である.

◆病理診断では,HEで間葉系の腫瘍を確認,KIT蛋白質が陽性であればGISTと診断される.KIT陰性の場合はDOG-1やPKC-θ染色,または遺伝子解析を行う.

◆外科完全切除後は,腫瘍径,mitosis,腫瘍部位,腫瘍破裂の有無から,日本の修正FletcherやJoensuu(あるいはFletcher,Miettinen)分類に基づいてリスク分類を行う.

GISTの治療

著者: 石川卓 ,   神田達夫 ,   矢島和人 ,   小杉伸一

ページ範囲:P.274 - P.280

覚えておきたいデータ

◆初発GISTの治療の原則は肉眼的完全切除である.高リスク群の完全切除後5年無再発生存率は40%前後である.

◆現在,腹腔鏡下手術の適応となるのは5.0cm以下の胃GISTである.5.1cm以上,胃原発以外のGISTではコンセンサスが得られていない.

◆SSGXVⅢ試験の結果から,高リスク群では少なくとも3年間の術後イマチニブ補助療法を行うことが望ましい.

◆術前イマチニブ補助療法の有効性,安全性についてはエビデンスがなく,臨床試験レベルの治療である.

GISTの非切除・再発例

著者: 尾上琢磨 ,   土井俊彦

ページ範囲:P.281 - P.289

覚えておきたいデータ

◆切除不能なGISTに対する初回化学療法の第一選択薬はイマチニブであり,400mg/日を可能な限り継続することが推奨される.

◆イマチニブ耐性となったGISTにはスニチニブ投与が推奨される.多様な有害事象があるため,細やかなマネージメントが重要である.

◆新規マルチキナーゼ阻害剤の第Ⅲ相試験の結果が報告された.今後,イマチニブ,スニチニブ治療終了後の新たな治療戦略として期待される.

11.膵・消化管神経内分泌腫瘍(NET)

膵・消化管NETの疫学

著者: 櫻井晃洋

ページ範囲:P.290 - P.294

覚えておきたいデータ

◆膵NET,消化管NETの有病率は人口10万人あたり,それぞれ2.23人,3.45人である.膵NETの約10%はMEN1による.

◆膵NETでは非機能性腫瘍,次いでインスリノーマが多い.死亡率は9%であるが,非機能性腫瘍では14%と悪性度が高い.

◆日本人の消化管NETでは前腸NET,中腸NET,後腸NETの比率はおおむね3:1:6であり,欧米で中腸NETが多いのと対照的である.

◆ガストリノーマの25%,インスリノーマの14%はMEN1による.すべてのガストリノーマ,若年のインスリノーマはMEN1を疑って検索を進める.

膵・消化管NETの診断

著者: 泉山肇

ページ範囲:P.295 - P.300

覚えておきたいデータ

◆膵NETはインスリノーマを除き悪性腫瘍の頻度が高い.

◆機能性NETにおいてオクトレオチド試験でホルモンの抑制を認めた場合,転移巣を含めた全身検索にSRSが有効である.

◆WHO2010の基本となるNETの病理組織学的分類はNET G1,NET G2,NEC,複合型腺神経内分泌癌(MANEC),過形成・前腫瘍病変の5つである.

膵・消化管NETの治療

著者: 土井隆一郎

ページ範囲:P.301 - P.306

覚えておきたいデータ

◆胃NETで1cm以上,sm浸潤を伴うものは,D2郭清を伴う幽門側胃切除術あるいは胃全摘術の適応である.

◆直腸NETで2cmを超えるもの,または1~2cmで固有筋層浸潤,脈管侵襲,局所リンパ節転移の疑いがあるものは手術切除の適応である.

◆膵NET(G1/G2)に対するエベロリムス,スニチニブの有効性が示されており,無増悪生存期間の中央値は11か月である.

膵・消化管NETの非切除・再発例

著者: 大塚隆生 ,   上田純二 ,   高畑俊一 ,   水元一博 ,   田中雅夫

ページ範囲:P.307 - P.311

覚えておきたいデータ

◆膵・消化管神経内分泌腫瘍(NET)では多発肝転移が切除不能の主要な因子となるが,集学的治療によって長期予後が得られる場合もある.

◆根治切除術後の再発部位は肝が最も多く,10年以上の長期経過観察が必要である.

◆2011年に切除不能NETの抗腫瘍薬としてソマトスタチンアナログ製剤(消化管)とエベロリムス(膵)がわが国ではじめて保険収載された.ほかにも臨床試験中の薬剤が多数あり,今後,わが国での切除不能NETの治療は大きく変わっていくことが予想される.

12.小児がん

小児がん

著者: 上野滋 ,   平川均 ,   平林健 ,   鄭英里

ページ範囲:P.313 - P.327

覚えておきたいデータ

◆疫学に関する最新のデータ:2005年に日本小児がん学会(現 日本小児血液・がん学会)が「小児がん全数把握登録事業」を開始し,年平均888例の固形悪性腫瘍の登録がある.2003年まで行われていた神経芽腫マススクリニーングの休止によって神経芽腫登録症例は著しく減少したが,進行例は減少していない.

◆診断治療に関する最新のデータ:小児固形がんの診断治療法改善のため,多施設共同臨床研究が続けられている.各研究グループでは予後リスクを判定して治療内容を決める層別化が進んだが,臨床試験への参加適格性の判定と,治療層別化のための中央病理診断体制が整った.制吐剤や中心静脈カテーテルによる栄養管理といった支持療法の発達,患児の療養生活のQOLを高めるトータル・ケアの考え方が浸透したが,小児がん経験者における晩期障害の克服や社会活動の支援が課題となっている.2008年には小児固形がんの安定した効率的な研究体制の構築のため,小児固形がん臨床試験共同機構が設立され,腫瘍の種類にかかわりなく,診断,治療,臨床研究が遂行できる体制作りが進んでいる.

ひとやすみ・91

診療における苦悩と喜び

著者: 中川国利

ページ範囲:P.173 - P.173

 近年,大規模臨床試験の結果を踏まえた標準的治療が推奨されている.また,適正かつ効率のよい医療を目的として鑑別診断マニュアルや診療ガイドラインが整備されつつある.そのため,医師は常日頃から最新情報の収集に努め,正確なデータに基づいて患者や家族にインフォームド・コンセントを行う必要がある.

 大学病院や癌センターなどの急性期疾患に特化した大病院には数多くの癌患者が紹介されて来院する.しかし,大多数の患者が早期で,全身状態が良好である.そして,早期症例には内視鏡的治療が,手術が必要な症例には標準術式が普遍的に行われる.治療後の経過はすこぶる順調で,早期に退院していく.したがって,日常診療において外科医は,悩むことなく手術を含めて標準的治療に専念できる.

1200字通信・45

ケモと現実―癌診療の現場から

著者: 板野聡

ページ範囲:P.249 - P.249

 最近の癌に対する化学療法の進歩は凄まじく,医学史に残る出来事の1つとなると確信しています.そろそろ古手の部類に入る私などは,ケモが無力な時代を知っているだけに,まさに隔世の感がありますが,だからこそ,そうしたケモの進歩に伴う「陰」の部分も見え始めているということでもあります.

 実は,この10数年間,私自身もケモにかかわり,また,当院だけではなしにいくつかの施設の(古手の)先生方とお話しする内容から,薬代が高額であるとか副作用があるといった問題にとどまらない,「陰」の部分が見え隠れしていたのですが,最近になって,代表的な事案を経験することになりました.

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原稿募集 私の工夫―手術・処置・手順

ページ範囲:P.54 - P.54

原稿募集 「臨床外科」交見室

ページ範囲:P.294 - P.294

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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