icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床外科67巻2号

2012年02月発行

文献概要

臨床報告

非ステロイド系抗炎症薬によると思われた多発結腸潰瘍穿孔の1例

著者: 倉橋康典1 稲本道1 篠原尚1 白潟義晴1 牧淳彦1 水野惠文1

所属機関: 1兵庫県立尼崎病院消化器外科

ページ範囲:P.278 - P.281

文献購入ページに移動
要旨

症例は37歳,女性,月経痛が強く市販のNSAIDsを常用していた.外耳炎に対し近医でNSAIDsを処方され,内服2日目に心窩部不快感を自覚し内服を中止した.5日目に黒色便と下腹部痛,7日目にCTでfree airと腹水を認め,当院へ紹介され,緊急手術となった.手術では上行~横行結腸に約10か所の穿孔を認め,同部位の切除・上行結腸人工肛門造設を行った.摘出標本では結腸紐に沿って3列に並ぶ多数の潰瘍を認めたが,病理学的には非特異的潰瘍であった.NSAIDs起因性大腸穿孔の報告はきわめて稀であるが,患者が市販のNSAIDsを常用している可能性があり,少量投与でも起こりうることを念頭に置く必要があると考えられた.

参考文献

1)Douthwaite AH, Linfott SAM:Gastroscopic observation of the effect of aspirin and certain other substances on the stomach. Lancet 2:1222-1225, 1938
2)松本主之,飯田三雄,蔵原晃一,他:NSAIDs起因性下部消化管病変の臨床像:腸炎型と潰瘍型の対比.胃と腸 35:1147-1158,2000
3)Wallace JL, Granger DN:Pathogenesis of NSAID gastropathy:are neutrophils the culprits? Trends Pharmacol Sci 13:129-131, 1992
4)五十嵐正広,勝又伴栄,小林清典,他:NSAIDs起因性腸病変の臨床的検討.胃と腸 35:1135-1145,2000
5)上平昌一,吉田行雄,野尻義文,他:NSAIDs起因性出血性大腸炎の1例.日消誌 98:1099-1101,2001
6)深原俊明,岡部 聡,永井 鑑,他:非ステロイド系抗炎症剤(NSAIDs)に起因する多発大腸潰瘍穿孔の1例.手術 57:375-378,2003
7)井原栄吉,落合利彰,佐々木達,他:穿孔,瘻孔を来した非ステロイド系消炎鎮痛剤(NSAID)起因性腸症の2例.日消誌 100:322-327,2003
8)畠山 悟,親松 学,佐藤賢治,他:非ステロイド系抗炎症剤が原因と考えられた大腸穿孔の1例.日臨外会誌 65:424-428,2004
9)佐藤耕一郎,佐川純司,一迫 玲,他:Non-steroidal anti-inflammatory drug投与によると考えられた多発性横行結腸穿孔の1例.日消外会誌 37:1582-1587,2004
10)山崎将人,安田秀喜,幸田圭史,他:乳癌骨転移に対する癌性疼痛管理中に発症した,NSAIDsによると思われる巨大結腸潰瘍穿孔の1例.日腹部救急医会誌 27:619-622,2007
11)崎村千香,岩本明美,山根成之,他:非ステロイド性抗炎症剤起因性大腸潰瘍穿孔の1例.日消外会誌 41:1978-1982,2008
12)星川浩一,吉田 徹,佐藤耕一郎,他:アスピリン腸溶剤内服によるものと思われた多発大腸潰瘍穿孔の1例.日消外会誌 41:264-569,2008
13)斉藤裕輔,渡 二郎,藤谷幹浩,他:薬剤性腸炎の起因薬剤と病態・発生機序.胃と腸 35:1117-1124,2000
14)多田正大,大川清孝,三戸岡秀樹,他:内視鏡所見の読み方と鑑別診断―下部消化管.医学書院,2009,pp245
15)田中忠良,森重一郎,大西博三:全周性潰瘍形成のみられた虚血性大腸炎の1治験例.日消外会誌 18:833-836,1985

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?