icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床外科67巻3号

2012年03月発行

文献概要

臨床報告

胃癌からのリンパ行性転移が強く疑われた小腸腫瘍穿孔の1例

著者: 角田知行1 小杉伸一1 番場竹生1 矢島和人1 神田達夫1 畠山勝義1

所属機関: 1新潟大学大学院医歯学総合研究科消化器・一般外科学分野

ページ範囲:P.430 - P.435

文献購入ページに移動
要旨

患者は88歳,男性.消化管穿孔による汎発性腹膜炎の診断で緊急手術を施行した.術中所見で胃中部の漿膜側に露出する腫瘤を認めたが穿孔はなく,小腸に5か所の腫瘍性病変を認め,うち2か所の小腸腫瘍が穿孔していた.また,小腸間膜にリンパ節の腫大を多数認め,胃癌の腸間膜リンパ節転移および小腸浸潤を伴う腹膜播種と考えた.穿孔部を含む小腸部分切除吻合およびドレナージ術のみ行った.切除標本では2か所とも限局潰瘍型腫瘍の潰瘍底で穿孔し,病理組織学的には粘膜下層まで進展する低分化型腺癌で,粘膜筋板近傍に多数のリンパ管侵襲が認められた.癌の局在は粘膜下層主体で播種性ではなく,リンパ行性の小腸転移が強く疑われた.

参考文献

1)長谷部行建,永澤康滋,塩川洋之,他:興味ある転移形式を呈した胃癌小腸転移症例の1例.日消外会誌 40:33-38,2007
2)泉 美貴:各種腫瘍におけるcytokeratinの発現と鑑別診断への応用.病理と臨 20:673-678,2002
3)Chow JS, Chen CC, Ahsan H, et al:A population-based study of the incidence of malignant small bowel tumours:SEER, 1973-1990. Int J Epideminol 25:722-728, 1996
4)渡辺憲治,森本謙一,谷川徹也,他:小腸腫瘍性疾患,転移性腫瘍.胃と腸 43:570-574,2008
5)川井啓市,馬場忠雄,赤坂裕三:わが国における小腸疾患の現状と展望.胃と腸 11:145-155,1976
6)梁 栄富,酒井 洋,池田 徹:肺癌における消化管転移の検討.日胸疾会誌 34:968-972,1996
7)松林宏行,高垣信一,小林由夏,他:著明な腸管拡張を呈した肺癌小腸転移の1例.胃と腸 38:763-768,2003
8)岩下生久子,牛尾恭輔,岩下明德,他:転移性小腸腫瘍の画像診断.胃と腸 38:1799-1813,2003
9)矢島 浩,楠山 明,藤田哲二,他:小腸転移による腸閉塞で発症した胃癌の1例.日消外会誌 38:147-150,2005
10)牛尾恭輔,石川 勉,宮川国久:転移性小腸腫瘍のX線診断.胃と腸 27:793-804,1992
11)山崎純也,高木 剛,宮垣拓也,他:胃癌術後大腸小腸転移の1例.京府医大誌 113:97-103,2004
12)原岡誠司,岩下明德,中山吉福:病理から見た消化管転移性腫瘍.胃と腸 38:1755-1771,2003
13)高橋修平,中村哲郎,山口真彦,他:異時性小腸転移をきたした胃噴門部癌の1例.臨外 60:267-270,2005
14)春木伸裕,佐藤篤司,桑原義之,他:胃小細胞癌の小腸転移穿孔の1例.日腹救医会誌 30:681-684,2010
15)塚本啓二,久納孝夫,宮本 修,他:多発小腸転移を伴った胃癌の1例.稲沢市病紀 10:69-73,2006
16)橋本一夫,桧垣真吾,西明 真,他:胃癌術後に腸閉塞をきたした転移性小腸腫瘍の1例.消化管の臨 13:89-95,2008
17)長嶺弘太郎,国崎主税,渡会伸治,他:穿孔をきたした胃癌小腸壁内転移の1例.日臨外会誌 60:1005-1008,1999
18)沖野秀宣,品川祐治,吉富聡一,他:胃癌治癒切除後4年9ヶ月後にイレウスにて発症した孤立性転移性小腸癌の1切除例.日消外会誌 39:105-110,2006
19)竹林正孝,徳安成郎,豊田暢彦,他:小腸穿孔で発症した胃癌小腸転移の1例.手術 63:115-118,2009
20)鈴木 力,西巻 正,神田達夫,他:胃癌術後の乳び瘻・リンパ瘻.手術 55:1137-1142, 2001

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?