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書評
前川和彦,相川直樹(監修)/杉本 壽,堀 進悟,行岡哲男,山田至康,坂本哲也(編)「今日の救急治療指針(第2版)」
著者: 丸藤哲1
所属機関: 1北大大学院・救急医学
ページ範囲:P.959 - P.959
文献購入ページに移動 前川和彦・相川直樹監修,杉本壽ら編集の『今日の救急治療指針 第2版』が上梓されました.本書はわが国で久しく親しまれてきた,医学書院の『今日の治療指針』各科版の一つとして企画された救急医療分野の治療指針です.初版は1996年に出版されましたが,その後の十数年においてわが国の救急医療を取り巻く環境の変化は,激変の文字で表現することができるでしょう.卒後臨床研修の義務化に伴い初期臨床研修で必修化された救急医療の実践と,国民の医療への要求が変化し,救急診療という名の時間外診療患者の増加に,救急医療体制の整備が追いつかない実態が最近明瞭になってきました.この結果,救命救急センターあるいは救急科に所属する救急科専門医以外の一般内科・外科医師らが救急患者の診察を行わざるを得ない状況が常態化し,医師のみならず医療全体の疲弊を招いています.これらの変化を十分に認識し,その環境変化に対応可能な形で編集された本書は現在の救急医療の現場に必須の知識を提供しています.
救急医療の第一線で活躍している執筆陣による救急に特化した治療指針である本書は,若手救急科医師のみならず救急初期診療を担当する研修医,一般内科・外科医師などが利用することを想定して編集されています.対象患者に常に不確実性が伴う救急初期診療では,治療を進めつつ症状・症候から鑑別すべき病態・疾患を挙げて診断を行う,治療と診断の同時進行を余儀なくされる場面を多く経験します.本書はこの特徴を理解し,最初に症状・兆候からのアプローチを掲げ,診断のついた疾患・病態の治療が詳述される心憎い編集方針です.さらに,救急初期診療で遭遇するほぼすべての病態・疾患を網羅し,その緊急度と重症度を重視して編集されているのみならず,初期対応,重症度の見分け方,入院判断基準など,まさに救急の現場ですぐに役立つ知識が満載されています.心肺停止症例に対する一次・二次救命救急処置は2010年に国際的に大幅な改訂が行われましたが,本書は処置内容を単純なアルゴリズムで示しつつすべての医療従事者が理解しやすい平易な文章で最新の救命処置を解説しています.また,迅速性が要求される救急初期診療では,救急医薬品の使用方法を速やかに調べる必要がありますが,付録として救急医薬品の適応,使用方法,作用・副作用・注意が見やすい一覧表として掲載されていることも特徴の一つでしょう.
救急医療の第一線で活躍している執筆陣による救急に特化した治療指針である本書は,若手救急科医師のみならず救急初期診療を担当する研修医,一般内科・外科医師などが利用することを想定して編集されています.対象患者に常に不確実性が伴う救急初期診療では,治療を進めつつ症状・症候から鑑別すべき病態・疾患を挙げて診断を行う,治療と診断の同時進行を余儀なくされる場面を多く経験します.本書はこの特徴を理解し,最初に症状・兆候からのアプローチを掲げ,診断のついた疾患・病態の治療が詳述される心憎い編集方針です.さらに,救急初期診療で遭遇するほぼすべての病態・疾患を網羅し,その緊急度と重症度を重視して編集されているのみならず,初期対応,重症度の見分け方,入院判断基準など,まさに救急の現場ですぐに役立つ知識が満載されています.心肺停止症例に対する一次・二次救命救急処置は2010年に国際的に大幅な改訂が行われましたが,本書は処置内容を単純なアルゴリズムで示しつつすべての医療従事者が理解しやすい平易な文章で最新の救命処置を解説しています.また,迅速性が要求される救急初期診療では,救急医薬品の使用方法を速やかに調べる必要がありますが,付録として救急医薬品の適応,使用方法,作用・副作用・注意が見やすい一覧表として掲載されていることも特徴の一つでしょう.
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