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文献詳細

雑誌文献

臨床外科67巻9号

2012年09月発行

文献概要

臨床報告

パイエル板の肥厚を先進部とする成人腸重積症の1例

著者: 杉森志穂1 山田行重1 明石諭1 伊藤眞廣1 島田啓司2 吉川高志1

所属機関: 1国保中央病院外科 2奈良県立医科大学病理病態学講座

ページ範囲:P.1205 - P.1208

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要旨

症例は29歳,女性.下痢,発熱,腹痛を主訴に受診した.腹部CTで上行結腸にmultiple concentric ring signを認め,腸重積症と診断し手術を施行した.重積整復後に回盲弁から30cm口側に腫瘤を触知し,小腸部分切除を施行した.切除標本で3×2.5cmの範囲の壁肥厚を認め,病理組織では粘膜固有層から粘膜下層の限局性のリンパ組織の過形成を認め,パイエル板の肥厚と考えた.パイエル板は乳児期にはその肥厚が腸重積の原因となるが,成人例は非常に稀である.一方,回腸終末部は悪性リンパ腫の好発部位であり,腸重積を発症することも知られている.本疾患は悪性リンパ腫との鑑別が重要であると考えられた.

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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