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文献詳細

雑誌文献

臨床外科68巻13号

2013年12月発行

FOCUS

微細解剖ならびに剝離層にこだわった腹腔鏡下直腸癌手術

著者: 絹笠祐介1 塩見明生1 山口智弘1 富岡寛行1 賀川弘康1 山川雄士1 佐藤純人1

所属機関: 1静岡県立静岡がんセンター大腸外科

ページ範囲:P.1464 - P.1469

文献概要

はじめに

 直腸癌手術においては,根治性を担保しつつ,肛門温存および泌尿生殖器機能温存をはかる手術手技が要求される.誤った解剖の理解は術中・術後の合併症を増加させるだけでなく,癌の根治性を損なう恐れがある.正しい解剖の理解とともに,癌の進展・進行度により適切な剝離層を選択し,根治性を保持する必要がある.

 これまでの直腸癌手術において,術後泌尿生殖器機能障害は外科医が想像している以上に高頻度に出現していることを理解しておかなくてはならない.直腸癌の臨床試験で有名なDutch Trialでは,実に7割以上の症例で術後の勃起障害や射精障害が生じている.わが国で行われているJCOG0212での術後性機能障害もこれに近い頻度で障害を認めている.

 腹腔鏡による拡大視効果によって,骨盤深部までの良好な視野を共有する手術が可能となった.腹腔鏡下という特殊な環境において術野の展開や解剖に沿った剝離を諦めるのではなく,骨盤内という狭いスペースでは,多くの場面で開腹手術と同等,もしくはそれ以上の剝離・授動ができることを十分理解する必要がある.そのために解剖を熟知し,技術を磨き,決して妥協をしない手術を心掛けることが重要だと感じている.

 本稿では,直腸周囲の筋膜構成と,それに則った剝離層で行う腹腔鏡下低位前方切除術の手技について解説する.

参考文献

1)Kinugasa Y, Murakami G, Uchimoto K, et al:Operating behind Denonvilliers' fascia for reliable preservation of urogenital autonomic nerves in total mesorectal excision:a histologic study using cadaveric specimens, including a surgical experiment using fresh cadaveric models. Dis Colon Rectum 49:1024-1032, 2006
2)Kinugasa Y, Murakami G, Suzuki D, et al:Histological identification of fascial structures posterolateral to the rectum. Br J Surg 94:620-626, 2007
3)Kinugasa Y, Sugihara K:Topology of the fascial structures in rectal surgery:complete cancer resection and the importance for avoiding autonomic nerve injury. Semin Colon Rectal Surg 21:95-101, 2010
4)Kinugasa Y, Arakawa T, Abe H, et al:Female longitudinal anal muscles or conjoint longitudinal coats extend into the subcutaneous tissue along the vaginal vestibule:a histological study using human fetuses. Yonsei Med J 54:778-784, 2013
5)Kinugasa Y, Arakawa T, Abe S, et al:Anatomical reevaluation of the anococcygeal ligament and its surgical relevance. Dis Colon Rectum 54:232-237, 2011

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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