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文献詳細

雑誌文献

臨床外科68巻13号

2013年12月発行

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あとがき フリーアクセス

著者: 小寺泰弘

ページ範囲:P.1518 - P.1518

文献概要

 私は胃癌治療ガイドラインの第4版の作成委員として,2年間仕事をしてまいりました.担当させていただいたのは,「切除可能Stage Ⅳ胃癌」についてのQ & Aの作成でしたが,これは英訳するには大変ややこしい概念です.「切除可能」という用語は技術的に切除が可能という意味にとれます.遠隔転移があっても一緒に取れる場合には「切除可能」でしょうし,狭窄,出血が原因で姑息切除をする場合でも,それが可能でさえあれば言葉の上では「切除可能」ですよね.しかし,英語でresectableというと,根治目的の手術の適応があるというニュアンスもかなり含まれます.その意味で,現行の胃癌取扱い規約によれば,遠隔転移があればStage Ⅳであり,ガイドラインによれば,これらは全てunresectableということになります.別の言い方をすれば,技術的に切除可能な大腸癌肝転移はresectableですが,1個でも肝転移があれば胃癌はunresectableとなってしまいます.どうやら「切除可能Stage Ⅳ胃癌」という言葉は,うまく英訳できそうもありません.実際には,肝転移があっても1個なら普通は切除するだろうとか,CY1程度なら切除してはどうかなど,いろいろな意見があり,ガイドラインに反映させるのも大変です.

 あるとき,胃のⅡc病変と肝内の孤立性の腫瘤を指摘されてunresectableであると言われたというまだ若い患者さんが,私の外来に来られました.Ⅱc病変でもあるし,本当に肝転移かどうかは到底その段階ではわからないし,肝転移であっても1個では諦めきれない.さっそく手術も視野に入れた精査のご説明をしたところ,大変喜ばれましたが,何とsecondではなくthird opinionだったとのこと.進行胃癌の治療は進歩していますので,まず手術をしてから考えようという考え方が常に正しいわけではありません.しかし,そうではあっても,マニュアル主義といいますか,世の中も変わったなあと思った次第です.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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