臨床外科68巻2号

2013年02月発行

胃癌手術のロジック－発生・解剖・そして郭清・4

“ねじれ中心”と3本のtrunk

著者： 篠原尚¹ 春田周宇介¹

所属機関： ¹虎の門病院消化器外科

ページ範囲：P.194 - P.203

　26腸回転～90度：今回は胎生期の最大イベントである腸回転のプロセスを，外科医の視点で解明する．胃の回旋が起こると，その反動で十二指腸ループは発育しながら右に張り出してくる．この十二指腸の右方移動を契機として，中腸では腸回転が始まる．中腸とは将来の遠位十二指腸から近位横行結腸までの部分で（第1回連載，図6参照），その中間地点に卵黄管がある．胎生4週頃から（すなわち，これまでたびたび示してきた胎生5週の基本図の時点からすでに）中腸ループは臍帯内に脱出し，生理的臍帯ヘルニアの状態になっている．中腸回転は，この卵黄管に向かってまっすぐに伸びたSMAを回転軸とする，反時計回り3/4周270度の大回転である．Michelsはその著書の中で，mesenteric trunkという呼称をSMAに与えている^1）．

　まず90度回転した状態を，動脈の分岐とともに示す．この回転によって中腸ループの近位脚（十二指腸空腸脚）は右側に，遠位脚（盲腸結腸脚）は左側にくる（下図）．十二指腸と結腸との間の狭い腸間膜の中をSMAが通っている．

参考文献

1）Michels NA：Blood supply and anatomy of the upper abdominal organs with a descriptive atlas. Philadelphia, Lippincott, 1955

2）Horiguchi A, Ishihara S, Ito M, et al：Multislice CT study of pancreatic head arterial dominance. J Hepatobiliary Pancreat Surg 6：55-68, 1999

3）Gillot C, Hureau J, Aaron C, et al：The superiormesenteric vein. J Int Coll Surg 41：339-369, 1964

4）Henle J：Handbuch der systematischen Anatomie des Menschen. Druck und Verlag von Friedrich Vieweg und Sohn, Braun schweig, 1868, pp 391

Ravitch MM, et al （ed）：Pediatric Surgery, Year Book Medical Pub, Chicago, 1979, pp 912-923

6）西島栄治：腸回転異常症の概念と分類．小児外科37：749-753，2005