icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床外科68巻6号

2013年06月発行

勤務医コラム・49

求む書類退治人

著者: 中島公洋1

所属機関: 1慈仁会酒井病院外科

ページ範囲:P.714 - P.714

文献概要

 勤務医は疲れている.その疲れの原因について,比喩的に考察してみました.

 舞台は夏の海.今日も海水浴場は多くの人で賑わっている.砂浜では奥様方がバーベキュー.波打ち際では家族連れがはしゃいでいる.はるか向こうに点々と見えるのは,遊泳禁止区域を知らせる旗だ.あの旗の向こうは急に深くなっていて,潮の流れが速く,サメも出るので危ない.あそこで溺れかけている人を救うのがわれわれの仕事.命がかかっている人は多くを語らないが,その願いは切実だ.旗の向こうで一仕事終えた後,波打ち際の砂遊びを横目に見ながら,われわれは海から上がってきた.「今日もいろいろあったなぁ.アー疲れた.さぁて一杯やるか」と通り過ぎようとしたら,「ちょっと,そこのアナタ,コレ,どうなの?」と奥様方から呼び止められた.“バーベキューで何を一番先に焼くべきか”を議論しているのだ.議長もいる.ちゃんとした会議のようだ.報道各社の記者たちもたくさん来ている.旗の向こうには誰もいなかったのに,こういうところには必ず記者と弁護士がいる.私が,「そんなもん,テキトーでエエやん」と発言したら白い目で見られた.議長が「そんないい加減なことでどうするの! ものには順番というものがあるのヨ.書類を整備しなきゃ.委員会ひらいて研修やって,キチンとしたガイドラインを作るべきヨ!」と,のたもうた.正論だ.私は「オイオイまた紙が増えるの? 勘弁してくれよ」と蚊の鳴くような声でつぶやいたのだが,意気軒昂な人々の声にかき消されてしまった.本来の仕事による心地良い疲れに変な疲れが混じり合って,今日もlifesaverの当直の夜は更けてゆくのであった…….

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら