文献詳細
増刊号 ERAS時代の周術期管理マニュアル
Ⅳ 術中・術後合併症とその管理 6.腎・尿路系
急性腎不全
著者: 岩本整1 中村有紀1 千葉斉一1 河地茂行1 島津元秀1
所属機関: 1東京医科大学八王子医療センター消化器外科・移植外科
ページ範囲:P.305 - P.308
文献概要
□急性腎不全(ARF)とは,数時間〜数日の間に急激に腎機能が低下し,尿から老廃物を排泄できなくなり,さらに体内の水分量や塩分量など(体液)を調節することができなくなる病態のことである.
□近年,患者の高年齢化や高侵襲手術の増加により手術を原因としたARFが増加している.
□周術期に発症するARFは生命予後を悪化させる.多臓器不全の一臓器として発症する術後ARFの生存率は50%程度とされ予後不良である.
□その理由として周術期のARFは多臓器不全や感染症との併発が多いことが挙げられる.
□ERASの概念に照らすと,いかに周術期のARFを回避するかという視点が必要である.そのためには,①ARFを引き起こしやすい合併症(糖尿病,膠原病,心血管合併症,高血圧など)を把握するための十分な問診,②術前の脱水状態を避けるための適切な水分・栄養管理が必要である.術前から栄養士の介入などが考慮されるべきである.
□従来,ARFは血清Cr値で評価されていた.2000年代に入り腎機能だけではなく尿量も取り入れて評価する急性腎障害(AKI)という概念が定着してきている.
□AKIの定義は,①腎機能の低下(血清Cr値の1.5倍への上昇,もしくはGFRの25%を超える低下),②尿量の減少(尿量0.5 mL/kg/時未満が6時間以上持続)などである.
参考文献
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