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文献詳細

雑誌文献

臨床外科69巻2号

2014年02月発行

特集 ディベート★消化器・一般外科手術―選ぶのはどっちだ!

一般外科手術 テーマ7◆鼠径ヘルニアに対するアプローチ

鼠径ヘルニアに対するアプローチ:鼠径法 vs 腹腔鏡下 フリーアクセス

ページ範囲:P.199 - P.199

文献概要

鼠径法の立場から

 成人鼠径部ヘルニアに対する術式としては,前方アプローチによる鼠径法を選択する.第1選択:通常の還納可能な症例は大小を問わず,局所麻酔下・鼠径法・腹膜前腔修復(ヘルニア門のサイズにより変更あり).第2選択:還納不可能ないしは嵌頓緊急症例は,腰椎麻酔下ないし全身麻酔下・鼠径法・腹膜前腔修復(状況により変更あり).第3選択:再発還納可能症例は,局所麻酔下・鼠径法・腹膜前腔を意識した修復.ただし,どの場合も高度肥満などのときは,全身麻酔下での鼠径法を考慮する.

 そのメリットは,①すべての鼠径部ヘルニアの,どのような状況に対しても対処可能である.②ヘルニアの状況を把握して,全体像を把握した解剖学的アプローチが可能である.③近年の高齢患者,有リスク患者の増加を考えると,鼠径法かつ局所麻酔下の根治手術は低侵襲である.④医療コスト面でのパフォーマンスに優れる.

 鼠径法のデメリットは特にないと言える.詳細な膜構造の解剖を云々する議論はあるが,全身麻酔を要する腹腔鏡下手術は,決して低侵襲とは言い切れない.鼠径法は,習得すべき基本術式であり,かつ最終的解決法である.


腹腔鏡下の立場から

 腹腔鏡法と前方切開法との数多くの無作為化比較試験やメタアナリシスによると,腹腔鏡法の手術時間は長いが,術後疼痛が軽度で血腫・神経損傷・慢性疼痛が少ないなどの報告や,入院期間が短い,回復が早い,社会復帰・仕事復帰が早いなどの点で評価されている.腹腔鏡法のTAPP法は腹腔内から特殊なヘルニアや複雑なヘルニア門の状態が正確に把握できる利点があり,細径ポートサイト手術では術後疼痛は非常に少なく,傷跡もほとんど残らない.腹腔鏡法の最大の利点は,高精細なハイビジョンモニターで鼠径部の重要な膜構造や解剖を腹腔側より正確に確認し,必要な層を温存しながらmyopectineal orifice全体を確実に補強できる点である.膜構造を必要十分に温存することで無意味な出血や術後急性・慢性疼痛が少なくなり,正確な解剖学的認識に基づく再発の少ない手術が行える.術後運動制限をほとんど必要としないことから,社会貢献できる術式と考える.映像を通した精緻な手術を若手外科医に教育できることは大きな利点であり,前方切開法の理解も一段と深まると思われる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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