icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床外科69巻4号

2014年04月発行

FOCUS

術後回復促進のためのESSENSEプロジェクト―外科医は周術期管理のどこにエネルギーを注ぐべきか?

著者: 宮田剛1

所属機関: 1東北大学大学院医学系研究科外科病態学講座先進外科学分野

ページ範囲:P.466 - P.471

文献概要

外科医の原点と術後管理

 周術期管理の改善を考えるに際し,患者の視点ではなく,あえて外科医の視点で外科治療を考えると,多くの外科医は,手術をすることをidentityとしており,周術期管理はその付録であることに気付く.特に内視鏡下手術という一癖ある技術に取り組み技術的な向上心をくすぐられる現代では,その内視鏡下手術の完遂で達成感を得,あるいは内視鏡下から大開腹へコンバートする勇気と決断にまた自分の存在意義を見出す.「良い手術」はもちろん良い術後経過と喜ばしいアウトカムにつながる最も重要な因子である.しかし,いくら良い手術をしても,もし旧来型の術後安静と長期の絶飲食を強いるような管理を行うならば,それ自体が身体的回復に対する阻害因子にすらなりうることに気づかされる時代となってきた.

 これまで「術後安静」には,創部への張力負荷回避,創痛増強回避という大義があり,「術後絶飲食」には消化管吻合部への負荷回避,腸管麻痺時の嘔気嘔吐対策という理由があった.しかし現代では,骨格筋や腸管の廃用症候群の不利益に関する論拠が増えてきており,また創痛対策,侵襲反応抑制的な麻酔を周術期管理に反映させて早期からリハビリや腸管使用が可能になってきた.

参考文献

1)Fearon KCH, Ljungqvist O, Von Meyenfeldt OM, et al:Enhanced recovery after surgery:a consensus review of clinical care for patients undergoing colonic resection. Clin Nutr 24:466-477, 2005
2)宮田 剛:用語解説Fast-track surgery.外科と代謝・栄43:109-112,2009
3)Spanjersberg WR, Reurings J, Keus F, et al:Fast track surgery versus conventional recovery strategies for colorectal surgery. Cochrane Database Syst Rev 16:CD007635, 2011
4)宮田 剛:ESSENSEとはなにか―術後回復促進のための4つのキーワード.外科と代謝・栄47:147-154,2013
5)宮田 剛:術後回復を促進するためのエッセンス―日本外科代謝栄養学会ESSENSE project.臨栄123:258-259,2013
6)Pybus DA, Torda TA:Dose-effect relationships of extradural morphine. Br J Anaesth 54:1259-1262, 1982
7)Sparkes D, Rylah B:The World Health Organization Surgical Safety Checklist. Br J Hosp Med(Lond)71:276-280, 2010
8)山田芳嗣:手術医療におけるチームアプローチ―周術期のチーム医療推進に向けた麻酔科学会の取り組み〔www.mhlw.go.jp/shingi/2009/12/dl/s1222-7g.pdf〕
9)若林秀隆:高齢者の廃用症候群の機能予後とリハビリテーション栄養管理.静脈経腸栄養28:1045-1050,2013
10)Kaplan RS, Norton DP:The balanced scorecard:measures that drive performance. Harv Bus Rev 70:71-79, 1992
11)宮田 剛:周術期の代謝栄養管理―ERASプロトコールを巡って―ERASプロトコールとチーム医療.栄評治29:52-55,2012

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら