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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科69巻5号

2014年05月発行

雑誌目次

特集 消化器外科での救急医療―救急外来から手術室そして病棟まで

ページ範囲:P.521 - P.521

 救急医療の診療体制は,多くの課題は存在するものの次第に充実し,臨床研修制度における必須化も相まって教育システムも構築されつつある.しかしながらその一方で,救急医療の診断・治療ならびにその教育における外科医の関与の機会は増すことはあっても減る現状にはなく,消化器外科医にとって通常の予定入院,予定手術の診療はもとより「救急医療としての消化器外科」の重要性はさらに高くなっているといっても過言ではない.

 そのような観点から本特集を企画した.救急医療においては“elective surgery”と比しても,病変の程度,範囲および重症度も含めかなり多様な病態を呈することから,各臓器における基本的な知識を整理しておくことは極めて重要である.本特集が多くの外科医,特に若き消化器外科医の診療と教育に寄与することを願ってやまない.

消化器外科救急医療の現状と展望

著者: 平田公一 ,   木村康利 ,   水口徹 ,   今村将史 ,   沖田憲司 ,   原田敬介

ページ範囲:P.522 - P.530

【ポイント】

◆消化器外科救急医療の真の担い手の医師数の減少傾向になお歯止めがみられない.地域間格差をどう克服していくかが急務課題で,既存体制の改変も考慮しなくてはならない.

◆消化器外科救急医療を担うセンター病院を中心としたセンター内・外のチーム医療体制の未確立地域が存在する.救急患者搬送のために情報開示体制の確立と受け入れ体制の整備が必要であろう.

◆救急医療の疾病構造の変化に対応した医師の養成が必要である.治療・診断に適時対応しうる医師に対する評価体制の見直しを再考慮すべき時代を迎えている.

食道の外科救急―異物・医原性ならびに特発性食道損傷

著者: 宮崎達也 ,   宗田真 ,   酒井真 ,   石畝享 ,   石橋敬一郎 ,   石田秀行 ,   桑野博行

ページ範囲:P.532 - P.537

【ポイント】

◆食道内異物は,大人では食物,PTP製剤,義歯,魚骨が多く,上部消化管内視鏡で摘出可能なことが多いが,内視鏡的に摘出が困難な症例や穿孔を起こした症例では手術の適応となる.

◆医原性食道損傷は内視鏡検査やブジーの際に起こることがあり,ただちに治療すれば保存的に加療できる例が多い.

◆特発性食道破裂は損傷と汚染の状態により手術適応を決定する.

食道の外科救急―Oncologic emergency

著者: 宮崎達也 ,   宗田真 ,   酒井真 ,   鈴木秀樹 ,   桑野博行

ページ範囲:P.538 - P.541

【ポイント】

◆食道癌診療におけるoncologic emergencyとして,腫瘍による狭窄,出血,気道狭窄,穿孔・穿通が挙げられる.

◆初期診断は頸部から骨盤部の造影CTが有用である.

◆出血に関してはその原因を診断し,内視鏡的に,あるいはIVRを用いて止血するが,困難な場合は緊急手術も検討する.

◆気道狭窄に対しては緊急放射線照射が有効な症例がある.

胃の外科救急―非腫瘍性疾患/Oncologic emergency

著者: 西田正人 ,   八木浩一 ,   愛甲丞 ,   山形幸徳 ,   山下裕玄 ,   森和彦 ,   野村幸世 ,   瀬戸泰之

ページ範囲:P.542 - P.546

【ポイント】

◆胃疾患の救急治療では保存的介入の役割が大きくなっている.

◆緊急手術の状況での胃切除術は可能な限り避け,最小限の侵襲にとどめる.

◆胃癌の可能性を念頭に置く.

十二指腸・小腸の外科救急―イレウス・ヘルニア・血行障害/Oncologic emergency

著者: 小林大介 ,   岩田直樹 ,   神田光郎 ,   田中千恵 ,   山田豪 ,   中山吾郎 ,   藤井努 ,   杉本博行 ,   小池聖彦 ,   野本周嗣 ,   藤原道隆 ,   小寺泰弘

ページ範囲:P.548 - P.553

【ポイント】

◆緊急手術の対象となる代表的な疾患は,絞扼性イレウス,ヘルニア嵌頓,腸間膜虚血症である.

◆血流障害が本態であり,上記疾患を念頭に置いた迅速な診断と適切な治療が救命のために必須である.

◆悪性疾患を背景に持つ閉塞,出血,穿孔などのoncologic emergencyは患者の状態に応じた治療が必要である.

大腸の外科救急―非腫瘍性疾患/Oncologic emergency

著者: 柴田淳一 ,   石原聡一郎 ,   渡邉聡明

ページ範囲:P.554 - P.561

【ポイント】

◆大腸疾患に対して緊急手術を要するのは,高齢者や悪性腫瘍に基づく症例が多く,周術期死亡率は高率である.

◆大腸癌による腸管閉塞では,可能な場合にはイレウス管や自己拡張型金属ステントを用いて拡張腸管の減圧を図る.

◆大腸癌による穿孔では,腹膜炎から敗血症,DIC,多臓器不全へと重篤化しうるため,迅速に手術治療を行う.

肝臓の外科救急―消化器外科疾患/肝損傷

著者: 河地茂行 ,   渋沢崇行 ,   高野公徳 ,   千葉斉一 ,   佐々木淳一 ,   島津元秀

ページ範囲:P.562 - P.569

【ポイント】

◆救急外来で遭遇する肝臓領域の消化器外科疾患の大部分は,interventional radiology(IVR)による治療が有効で,緊急手術が必要となることは稀である.

◆わが国では肝損傷の臨床分類として日本外傷学会肝損傷分類2008が頻用されている.

◆肝損傷の治療は手術的治療(OM)と比べ,非手術的治療(NOM)の適応が拡大している.

胆囊・胆道の外科救急

著者: 高屋敷吏 ,   清水宏明 ,   大塚将之 ,   加藤厚 ,   吉富秀幸 ,   古川勝規 ,   久保木知 ,   岡村大樹 ,   鈴木大亮 ,   酒井望 ,   中島正之 ,   宮崎勝

ページ範囲:P.570 - P.573

【ポイント】

◆消化器外科で緊急手術を要する胆道疾患のほとんどは急性胆囊炎であり,その診断,手術適応を適切に判断することが重要である.

◆発症72時間以内の軽症・中等症胆囊炎に対しては早期胆囊摘出術が望ましく,腹腔鏡手術が第一選択として推奨される.

◆急性胆囊炎緊急手術では,待機手術に増して十分にcritical viewを展開し,胆管・肝動脈損傷や出血を確実に回避する.

膵臓の外科救急

著者: 佐藤典宏 ,   山口幸二

ページ範囲:P.574 - P.577

【ポイント】

◆膵損傷が疑われる場合,CT,ERPにて膵損傷の部位,程度,主膵管損傷の有無を評価し,保存的治療,手術,ステント治療から適切な治療法を選択する.

◆慢性膵炎に伴う仮性動脈瘤出血に対しては,血管造影下に動脈塞栓を行い,不成功例では緊急止血術を行う.

FOCUS

食道癌,胃癌におけるセンチネルノードナビゲーションサージェリー(SNNS)の現況

著者: 松田達雄 ,   竹内裕也 ,   北川雄光

ページ範囲:P.579 - P.583

はじめに

 センチネルリンパ節(sentinel node:SN)とは,リンパ流を腫瘍から直接受けるリンパ節のことであり,このSNからリンパ節への転移が生じるという仮説がSN理論である.SN理論が正しければ,SNに転移が認められなければ,その他のリンパ節には転移がないと判断できる.手術の際にSNを同定し,SNの分布,SNの転移の有無により,リンパ節郭清範囲や臓器の切除範囲などの手術戦略を決定する手法をsentinel node navigation surgery (SNNS)という.SNNSは乳癌,メラノーマでは,すでに保険適応とされている.他癌腫においてもSNNSはさかんに研究が行われており,本稿では上部消化管領域(食道癌,胃癌)のSNNSの現況につき概説する.

必見! 完全体腔内再建の極意・14

幽門側胃切除術後再建―Roux-en-Y再建:リニア再建(順蠕動)

著者: 永井英司 ,   仲田興平 ,   大内田研宙 ,   前山良 ,   清水周次 ,   田中雅夫

ページ範囲:P.584 - P.591

■■はじめに

 1881年にBillrothが幽門側胃切除後に胃十二指腸吻合(Billroth Ⅰ法)で行い,1893年にCesar Rouxが幽門側胃切除後にRoux-en-Y再建を行って以来,様々なバリエーションはあるものの,再建の基本的な手技は変わっていない.本稿では,当科で通常行っているリニアステープラー(LS)を用いたRoux-en-Y再建法について紹介する.

 以下,エシェロン:ジョンソン・エンド・ジョンソン製リニアステープラー,エシェロン-W:エシェロンホワイトカートリッジ,エシェロン-B:エシェロンブルーカートリッジ,エンドGIA:コヴィディエン製リニアステープラー,GIA-P:エンドGIAパープルカートリッジ,GIA-C:エンドGIAキャメルカートリッジ,とする.

臨床の疑問に答える「ドクターAのミニレクチャー」・24

閉塞性黄疸の患者―術前の減黄処置は必要か

著者: 安達洋祐

ページ範囲:P.592 - P.595

素朴な疑問

 閉塞性黄疸で発症した膵臓がん患者や胆管がん患者は,手術前に経皮的または内視鏡的に胆管ドレナージを行い,黄疸を消退させ肝機能障害を回復させておくことが必要である(減黄処置).閉塞性黄疸を生じた患者に膵頭十二指腸切除を行う場合,減黄処置が不十分だと術後合併症が多いのだろうか.術前の減黄処置を行わないと手術は危険なのだろうか.

病院めぐり

阿南共栄病院外科

著者: 安藤道夫

ページ範囲:P.596 - P.596

 JA徳島厚生連 阿南共栄病院は,徳島県南部,阿南市羽ノ浦町(徳島市から南へ約20 km)に位置しています.

沿革:昭和初期の「農村の窮乏に接し,何とか農民の健康を守らん(開設理由書)」として,1937年(昭和12年)6月,阿南利用購買組合連合会の産業組合連合会として開設されました.設立後76年になり,現在,病床343床,7対1看護基準,DPC対象病院,地域がん診療連携推進病院の指定を受けています.

臨床報告

5度の肝転移再発に繰り返し肝切除を行うことで長期生存を得た小腸GIST同時性巨大肝転移の1例

著者: 青木修一 ,   水間正道 ,   林洋毅 ,   内藤剛 ,   片寄友 ,   海野倫明

ページ範囲:P.597 - P.603

要旨

巨大肝転移を伴う小腸GIST切除後の繰り返す残肝再発に対し,反復肝切除を行うことで長期生存を得た,稀な症例を経験したので報告する.症例は64歳,女性.肝機能異常を契機に骨盤内腫瘍および巨大肝腫瘍を指摘された.骨盤内腫瘍に対し小腸部分切除を施行し小腸GISTと診断され,その後肝転移に対しイマチニブ投与後に拡大肝右葉切除を施行した.初回手術16,30,37,45,56か月後の残肝再発に対し肝切除を繰り返し施行し,68か月経過した現在無病生存中である.GIST同時性肝転移および切除後の残肝再発は予後不良で内科的治療が中心であるが,積極的な反復肝切除が長期生存に寄与する可能性がある.

集学的治療が奏効した乳腺原発血管肉腫肝転移の1例

著者: 小林隆司 ,   藪下和久 ,   竹下雅樹 ,   堀川直樹 ,   上村良一 ,   岡田栄吉

ページ範囲:P.605 - P.609

要旨

症例は42歳,女性.乳癌検診にて左E領域に腫瘤を指摘され,精査にて鑑別困難と診断された.経過観察となったが再受診せず,5か月後に左乳房の腫脹を自覚して来院した.再診時は左E領域中心に6 cm大の腫瘤があり,諸検査にて軟部組織由来の悪性腫瘍が強く疑われ,左乳房切除術を施行した.病理検査にて血管肉腫と診断され経過観察となったが,術後4か月目のCT検査で多発性肝転移が出現した.術後早期の再発であり,化学療法としてweeklyパクリタキセルを開始した.治療効果はPRであり,新病変の出現もなく,残存腫瘍に対して肝切除術を施行した.乳腺原発血管肉腫はきわめて稀な疾患であり,再発後の予後は不良とされている.今回,乳腺原発血管肉腫の肝転移に対して集学的治療が奏効した1例を経験したので報告する.

腸重積症を発症した回腸inflammatory fibroid polypの1例

著者: 奥村晋也 ,   内藤雅人 ,   浅生義人 ,   吉村玄浩 ,   本庄原

ページ範囲:P.611 - P.615

要旨

症例は32歳,女性で,3か月前から腹痛,下痢を繰り返していた.腹痛,嘔吐を主訴に来院した.右下腹部に腫瘤を触知し,著明な圧痛を認めた.腹部造影CTで回腸腸重積症と診断し,重積腸管の血流障害が示唆されたため,同日緊急手術を施行した.手術所見では回腸末端部より90 cm口側の回腸に40 mm大の有茎性腫瘤を認め,同部が先進部となり腸重積症をきたしていた.腸重積の整復は困難で,腫瘤を含めた回盲部切除を施行した.病理組織学的検査で腫瘤は回腸inflammatory fibroid polyp(IFP)と診断された.小腸のIFPは比較的稀な疾患であるが,腸重積症の原因疾患として考慮する必要がある.

カペシタビンによる大腸癌術後補助化学療法中に重症化したdihydropyrimidine dehydrogenase(DPD)欠損症が疑われた1例

著者: 坂口博美 ,   宮本英雄 ,   大野晃一 ,   斉藤拓康 ,   五明良仁 ,   池野龍雄

ページ範囲:P.617 - P.620

要旨

症例は70歳,男性.2010年1月,直腸癌に対し高位前方切除術を施行され,術後診断はtub2,pSE,pN1(3/11),cH0,cP0,cM0,fStage Ⅲaであった.補助化学療法としてカペシタビンの内服を開始(ゼローダ14錠/日,2週内服1週休薬)したところ投与後16日目から血性下痢が出現し,当科を受診した.高度の白血球減少(grade 4),血小板減少(grade 4)を認め入院し,抗菌薬およびG-CSF製剤の投与,血小板輸血にて軽快退院した.患者の末梢血単核球中のDPD蛋白量は,ELISA法にて10.8 U/mg proteinと基準値(33.6~183.6 U/mg protein:参照)に比べ低値を示しており,DPD欠損症が強く疑われた.DPD欠損症は稀であるが,5-FUの投与により重篤な副作用を合併し死亡例もある.特に5-FUの初回投与時は本症を念頭に置き,慎重な経過観察が重要である.

食道癌術後難治性乳び胸に対して経皮経腹的リンパ管塞栓術で治療した1例

著者: 山田謙太郎 ,   山本真由 ,   堀川雅弘 ,   岡村哲平 ,   野村信介 ,   辻本広紀 ,   新本弘 ,   加地辰美

ページ範囲:P.621 - P.627

要旨

外傷や手術での胸管損傷により乳び胸などのリンパ漏を生じる.少量の場合は保存的治療も可能だが,多量の場合や保存的治療不応例では,栄養状態の悪化や免疫機能低下を引き起こし,時に致命的となる.保存的治療不応例には外科的胸管結紮術が行われてきたが,栄養状態不良であるため術後の死亡率は高く,胸管結紮後も乳び胸が継続する場合もあり必ずしも満足いくものではない.米国では1990年代後半より難治性乳び胸に対して経皮経腹的リンパ管塞栓術が行われており,良好な成績が報告されているが,本邦での報告はほとんど存在しない.今回われわれは食道癌術後に生じた難治性乳び胸に対して経皮的に胸管を塞栓し治療しえた1例を経験したので報告する.

Prolene Hernia Systemを用いた高度肥満成人に対する臍ヘルニア修復術を施行した3例

著者: 木村紘爾 ,   内藤稔 ,   浅野博昭 ,   池田宏国 ,   伊野英男 ,   佃和憲

ページ範囲:P.629 - P.633

要旨

高度肥満者の成人臍ヘルニア(AUH)は,長期にわたり腹圧に耐えうる修復法が必要であるが,いまだに確立した術式はない.AUHに対してProlene® Hernia System(PHS)を用いた修復術の報告は多いが,ほとんどはonlay patchのみを筋膜に固定するものである.われわれは高度肥満のAUH患者3例に対し,腹圧でinlay patchが押し出されるのを避けるため,筋膜をPHSのinlay patch, onlay patchで挟み込み,非吸収糸で貫通固定する工夫を行った.年齢は30~71歳,BMIは33.4~54.0,ヘルニア門の大きさは2.5×2.0 cm~3.0×3.0 cm,手術時間は90~175分であった.いずれも重篤な術後合併症は認めず,最長で術後6年が経過したがいずれも再発を認めていない.本法の高度肥満者のAUHに対する長期的有用性を示唆する結果と考えられる.

空腸腸間膜炎を契機に発見された異所性膵の1例

著者: 金谷洋平 ,   沖野哲也 ,   吉安正行 ,   吉村和泰 ,   勝田美和子

ページ範囲:P.634 - P.637

要旨

患者は70歳,男性.腹痛で発症し腹部CTにて空腸腸間膜炎と診断した.保存的治療にて改善がみられず,開腹手術となった.空腸の腸間膜に高度の炎症と浮腫を認め,小腸部分切除を施行した.術後の病理診断は空腸漿膜下の炎症を伴った異所性膵であった.小腸における異所性膵の発症形態はイレウスによるものが多く,炎症を伴った異所性膵の形態をとるものは非常に稀である.上部消化管周囲における原因不明の腸間膜炎では,異所性膵も念頭に置く必要があると思われた.

1200字通信・65

東京の雪景色

著者: 板野聡

ページ範囲:P.547 - P.547

 今年の2月8日,ある学会のセミナーへ出席するために,東京へ行ってきました.前日からの天気予報通り,東京へ向かう当日は東海から関東地方にかけて大雪となりましたが,学会指導医の更新に必須のセミナーであり,数か月前から申し込んでいたこともあって,予定通りに行くことに決めたのでした.

 前泊のために土曜日の午後から出発しましたが,名古屋までは時刻表通りに着くことができました.しかし,新幹線の切符を買ってホームまで出たところ,すでに予定より1時間遅れとのこと.この状態で,購入した切符の列車を待っていたら東京に着くのはいつになることやらと思案していると,発車のベルが鳴り出し,思い切って眼の前の列車に飛び乗ることにしました.途中の積雪や前を走る列車の遅れもあって通常よりも1時間余分に掛かりはしましたが,お陰でなんとか明るいうちに東京に着くことができました.

ひとやすみ・111

若い世代に望む

著者: 中川国利

ページ範囲:P.583 - P.583

 「思想が立場を決めるのではなく,立場が思想を決める」とされている.職場において若くて立場が低いと,「自分には意欲も能力もあるのに実力を発揮でない」と,年長者である上司の理解のなさに落胆し反発しがちである.しかしながら若者もいつかは年長者となり,上司として後輩の批判を受ける立場になる.一方,上司は上司で,「自ら積極的に発言し行動して欲しい」と,部下の意欲欠落や能力不足を歎きがちである.しかしながら自分自身が若い時代に上司に反発し,積極的に行動しなかったことを忘れがちである.

 永年仕事を一緒にしてきた外科医が,他施設の長として引き抜かれた.主体的な行動がやや欠落気味であることが気になったが,性格が温厚で堅実な仕事を行うため,当院の外科をそして病院の将来を任う有望な人材として大いに嘱望していた.当院にとっての痛手は大きいが,能力が認められ長として抜擢された彼の前途を祝し,歓送会を盛大に開催した.

書評

坂井建雄,河田光博(監訳)―プロメテウス解剖学アトラス―頭頸部/神経解剖(第2版)

著者: 杉本哲夫

ページ範囲:P.610 - P.610

 『プロメテウス解剖学アトラス 頭頸部/神経解剖 第2版』が出版された.本書は洗練された美しい解剖図と読ませる内容を特色としている.初版にはすでに高い評価が与えられており,第2版はその伝統を見事に引き継いだ第一級のアトラスといえる.

 本書は初版に比べると内容がさらに充実し,頭頸部と脳の解剖実習にも,知識の整理にも,これ1冊で充分賄えるアトラスになった.訳者序に紹介された通り,旧版の頸部の内容が頭部と合体し,頭頸部として新しく編成された.頭頸部のセクションに新しく組み込まれた内容をみると,そのすべてが医学教育のグローバルスタンダード基準をクリアしており,これからの医学教育に必須の項目といっても過言ではない.

昨日の患者

しがらみに生きる

著者: 中川国利

ページ範囲:P.615 - P.615

 人は様々なしがらみに縛られ,悩みながら生きている.亡き両親の意思に従い,由緒ある寺を引き継ぐとともに高次脳機能障害の弟を世話するTさんを紹介する.

 高次脳機能障害を伴った50歳代半ばの患者さんが,急性腹症を発症して近くの療養所から紹介されてきた.精査を行うと,急性胆囊炎を伴う総胆管結石症であった.そこで入院翌日に,腹腔鏡下に総胆管切石術を施行した.

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原稿募集 「臨床外科」交見室

ページ範囲:P.537 - P.537

投稿規定

ページ範囲:P.638 - P.639

著作財産権譲渡同意書

ページ範囲:P.640 - P.640

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.642 - P.642

次号予告

ページ範囲:P.643 - P.643

あとがき

著者: 桑野博行

ページ範囲:P.644 - P.644

 昨年,20年毎に行われる「神宮(伊勢神宮)」の「式年遷宮」があったことは記憶に新しい.その平成25年の1年間の参拝者数は過去最高の1420万4816人であったそうである.私自身は2回前の40年前に「西日本医科学生総合体育大会」が関西で開催された際に訪れた.

 その遷宮に先駆けて「五十鈴川」に造設される102 mの和橋が「宇治橋」である.この橋は20年間で1億人近い人々が渡り参拝するとのことである.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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