臨床外科69巻9号

2014年09月発行

臨床報告

虫垂切除20年後に虫垂根部から発生した粘液囊胞腺癌の1例

著者： 岡田学¹ 小林裕幸¹ 梅田晋一¹ 清水稔¹ 野嵜英樹¹

所属機関： ¹名鉄病院外科

ページ範囲：P.1148 - P.1152

要旨

原発性虫垂癌の大腸癌全体に占める割合は0.4～0.6%と比較的稀であり，粘液囊胞腺癌はそのうちの40%を占めるといわれる．症例は85歳の女性で，20年前に子宮筋腫に対して子宮摘出術を施行されていたが，その際に虫垂切除術も受けていた．右下腹部痛で受診し，CTで盲腸周囲に著明な炎症像を認めた．抗菌薬治療では病状が十分に改善しなかったため，回盲部切除術を施行した．虫垂根部は穿孔しており，同部の病理組織検査で核異型が強く，胞体に粘液を含む腫瘍細胞を認めたため粘液囊胞腺癌と診断された．虫垂切除術後の遺残虫垂から発生した粘液囊胞腺癌は非常に稀な症例であるため，若干の文献的考察を加えて報告する．

参考文献

1）長谷和生，望月英隆：虫垂粘液囊胞腺癌．日臨6：735-737, 1989

2）Shinohara T, Misawa K, Sano H, et al：Pseudomyxoma peritonei due to mucinous cystadenocarcinoma in situ of the urachus presenting as an inguinal hernia. Int J Clin Oncol 11：416-419, 2006

3）丹藤　創，榎　泰之，李　哲柱，他：後腹膜原発粘液性囊胞腺癌の1例．京府医大誌118：407-413, 2009

4）石川英明，高村寿雄，桑田博文，他：虫垂断端から発生した虫垂粘液囊胞腺癌の1症例．日消外会誌19：67-70, 1986

5）Nelson SF, Michael G：Mucinous cystadenocarcinoma of the appendix. The controversy persist：a review. Hepatogastroenterology 50：432-437, 2003

6）東原宜之，味村俊樹，安達実樹，他：腹腔鏡補助下結腸右半切除術を施行した虫垂粘液囊胞腺癌の1例．日臨外会誌66：1099-1104, 2005

7）張　文誠，飯野　弥，宮坂芳明，他：腸管皮膚瘻を契機に発見された遺残虫垂から発生した粘液囊胞腺癌の1例．日臨外会誌69：3204-3208, 2008

8）十倉正郎，川崎　繁，黒谷栄昭，他：虫垂断端より発生したと考えられる粘液囊胞腺癌の1例．臨外49：655-658, 1994

9）太田正穂，菊池友充，重松恭祐，他：血清CA19-9値が上昇し限局性腹膜偽粘液腫を伴った虫垂粘液囊胞腺癌の1例．外科64：233-236, 2002

10）渡辺　学，石井邦彦，菅野茂男，他：遺残虫垂より発生したと考えられる粘液囊胞腺癌の1例．日消誌96：408-412, 1999

11）児玉久光，野宗義博，高島郁博，他：虫垂断端より発生した虫垂粘液囊胞腺癌の1例．消外23：388-392, 2000

12）鈴木崇之，柳沢真司，新村兼康，他：遺残虫垂より発生し腹腔内膿瘍の様相を呈した粘液囊胞腺癌の1例．日臨外会誌74：436-441, 2013

13）會田直弘，神宮和彦，植松武史，他：虫垂切除術46年後に手術創に生じた粘液囊胞腺癌の1例．日臨外会誌74：3077-3081, 2013

14）南　恩姫，信川文誠，福村由紀，他：腹膜偽粘液腫の原発部位同定に関する免疫組織化学的検討．診断病理24：184-190, 2007

15）Ronnett BM, Kurman RJ, Shmookler BM, et al：The morphologic spectrum of ovarian metastases of appendiceal adenocarcinomas：a clinicopathological and immunohistochemical analysis of tumors often misinterpreted as primary ovarian tumors or metastatic tumors from other gastrointestinal sites. Am J Surg Pathol 21：1144-1155, 1997

16）穴沢雄作，木下栄一：腹膜仮性粘液腫．治療60：141-146, 1978