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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科7巻12号

1952年11月発行

雑誌目次

綜説

外科的結核症に対するイソニコチン酸ヒドラジド使用の臨床経驗

著者: 村上忠重 ,   山口滋嗣 ,   山田篤 ,   菊岡豊二 ,   鈴木快輔

ページ範囲:P.685 - P.689

 最近イソニコチン酸ヒドラジッド(以下I.N.A.H.と略称する)が結核症に対して著効がある事が分つて,その應用が急に盛になつた.併しその多くは肺結核症に対するものであつて,外科的結核症に対しては僅かにBos—worth等の整形外科的結核症6例についての報告をみるのである.
 我々は中外製藥よりI.N.A.H.の試製品の提供を受け早速外科的結核症に対する治療効果を試してみた.

交感神経切除術後に於ける泌尿生殖器障碍

著者: 吉田誠三 ,   鈴木朝勝

ページ範囲:P.691 - P.694

 交感神経切除術は各種疾患に対して盛に行われているが,我々の経驗によると此の手術後種々の副症状を生ずる.即ち局所低血圧,心臟障碍,非手術領域の多汗症,胃腸機能の一時的障碍,ホルネル氏症候及び泌尿生殖器障碍等である.この内特に泌尿生殖器障碍に就いては未知の事が多く,最近に至り諸外國に於ても漸く注目されるに至つたが,我が國に於ては未だかゝる報告に殆んど接していない.我々は当教室に於ける経驗例に就いて,泌尿生殖器障碍を調査した所かなりの障碍を知り得たのでこゝに報告する次第である.

抗生物質及びサルファ剤の腸運動に及ぼす影響に就いて

著者: 門脇一彌

ページ範囲:P.696 - P.699

 最近手術創に対して,サルファ剤及びペニシリン,マイシン等の抗生物質の局所投與が行われているが,私は開腹術に於て,之等の藥剤を腹腔内に投與した場合の胃腸運動特に小腸運動に及ぼす影響を実験的に研究したので報告する.

輸尿管S字状結腸吻合術式1考案

著者: 高聰明

ページ範囲:P.700 - P.703

 輸尿管S字状結腸吻合術にはMaydl氏法を始めFranklin Martin氏法,Coffey-Mayo氏法等がある.夫々効果を挙げている樣であるが主旨は簡單なるも其等の手術手技は複雜であり而も確実に傳染を除外し難く且つ腎水腫輸尿管閉塞の発生を見る事應々あるのが欠点である.著者は一昨年より比較的安全にして且つ簡單に行い得る一術式を考案し犬実驗に於て良結果を得たので1箇年間患者に実施し成績良好な12症例を経驗したので茲に公表して大方諸賢の御批判と御追試を仰ぎたいと思う.

症例

稀有なる脊髄疾患の1例

著者: 亀田俊孝 ,   渡辺紋郞

ページ範囲:P.704 - P.705

 最近種々なる疾患に際して脊髄腔内に種々の藥物を注入,或はパンピング又は之等類似の治療法が盛んに試みられるようになつてきたが,最近当整形外科に於て某外科医によりバセドー氏病の治療として誤つて髄腔内に10%ビタミンKの注入並びにパンピングを行つた例に遭遇し,之れにより惹起された広範囲の麻痺例に遭遇したのでこゝに報告致す次第である.

乳腺肉腫の1例

著者: 中川俊美

ページ範囲:P.706 - P.708

 乳腺肉腫は乳癌に比して甚だ少く,Finstererによるとその比率は30対1であるといわれている.本邦にても今日迄に乳腺肉腫の48例が報告されているが最近私も本症の1例を経驗したので茲に追加報告する次第である.

虫樣突起憩室炎の1例

著者: 矢野尾三郞 ,   大舘禪郞 ,   箕浦健三 ,   河野純次 ,   藤平和雄

ページ範囲:P.709 - P.710

 虫樣突起憩室に関しては,欧米ではかなり多数の記載があるが,本邦に於いては僅かに星野氏の1例,橋本氏の2例,池森氏の1例の報告を見るに過ぎない.私等は最近本症の1例を経驗したので,その大要を報告し本症の知見に寄與したいと思う.

大腿骨々頭にみられた離断性骨軟骨炎の1例(第2報)

著者: 伊丹康人 ,   上里正哲

ページ範囲:P.710 - P.713

 176回東京地方整形外科集談会に於て吾々は両側大腿骨々頭にみられた離断性骨軟骨炎の1例を報告し,その後臨床雜誌整形外科1卷2号にその詳細を掲載しておいたが,其の後再び股関節に於ける離断性骨軟骨炎の1例を経驗し,手術及び組織学的檢査を施行する機会を得たのでこゝにその概要を報告し,更に股関節にみられる本症の発生因子としての円靱帶に就て私見を述べんとす.

外傷性汎発性胆汁性腹膜炎の1治驗例

著者: 中島博惠

ページ範囲:P.713 - P.715

 一般に外傷性汎発性胆汁性腹膜は,比較的稀れと云われているが,余は最近当鉱業所内に於て,作業中腹部打撲し,外傷性汎発性胆汁性腸膜炎も惹起し,手術的に治癒せしめた與味ある1例を経驗したので報告する次第である.

肺結核腫剔除の経驗

著者: 林秀雄 ,   岡田浪速 ,   中井淵龍 ,   久保田欽士 ,   坂下昇

ページ範囲:P.715 - P.717

 從来肺結核腫(結節性肺結核)は肺葉切除術の適應であると主張され,我國に於ても東北大関口教授,阪大小沢教授,東京療養所宮本博士等によつて結核腫に対する肺葉切除術が報告されているが,近時胸部外科の進歩と共に肺部分切除術が施行される樣になり,最近京大結核研究所長石助教授等により,空洞剔除肺縫縮加胸廓成形術が報告されている.吾々は最近肺結核腫の1例に対して剔除術を行い得たので,こゝに之を報告して諸賢の御批判を願い度い.

肺より轉移した骨癌の興味ある1例

著者: 飯田淸子

ページ範囲:P.717 - P.720

 肺癌の骨轉移はそれ程珍らしいものではないがわたくしは最近臨床症状と剖檢所見とを対照し2,3興味ある事実を認めた1例を経驗したので報告する.

脳膜脱を有する後頭骨披裂の1例

著者: 岡村正 ,   岡田裕彥

ページ範囲:P.720 - P.722

 先天性脳膜脱並に脳脱は分娩凡そ3500〜4000回に1回見出されると云う稀有な疾患である.我々は最近生後2ヵ月の幼女の脳膜脱を伴える後頭骨披裂に手術をおこない治癒したので報告する.

若年者に発した甲状腺癌

著者: 吉友睦彥

ページ範囲:P.722 - P.724

 われわれは最近17歳の男子において組織学的に甲状腺癌と診断された惡性甲状腺腫の1例を経驗したのでこゝに報告し,若干の考察を加えてみたいと思う.

葉間部分膿胸の1例

著者: 関口一雄 ,   中崎忠純

ページ範囲:P.725 - P.726

 人工気胸術施行中滲出性肋膜炎を併発し,結核性膿胸に移行することは我々も相当経験する所でありますが,葉間肋膜炎は比較的稀な疾患とされ,此が更に葉間膿胸となることはごく稀である.私は最近人工気胸後葉間肋膜炎が膿胸に移行し,更に濃縮してレ線上結核腫の如き像を呈した1例を経驗したので茲に報告する.

Eosinophilic granulomaを思わせる皮下腫瘤の1例

著者: 千葉哲郞 ,   岩瀨和夫 ,   武山勝也

ページ範囲:P.726 - P.729

 從来エオジン好性球増多症に関する幾多の報告例があるが,筆者らが最近観察する機会を得た高度のエオジノフィリーを伴いEosinophilic granulomaを思わせられる皮下腫瘤の1例について報告し且つ若干の疑義について檢討してみたいと思う.

外鼡蹊ヘルニア仮性還納の1例

著者: 栗田彰三 ,   土屋正彥

ページ範囲:P.729 - P.730

 嵌頓ヘルニアの非観血的整復術に際しては周知の樣に種々の危險を伴うことがある.その1つに仮性還納というものがある.これについてはE.Graser,C.W.St—reubel等により詳述されており,我が國に於いても前田,大井,富田,樋口,納所等の諸氏により報告されているが比較的稀なものである.吾々は最近このような1例を経驗したので報告する.

最近の外國外科

胃,十二指腸潰瘍大量出血時に於ける外科的浸襲,他

著者:

ページ範囲:P.731 - P.732

 胃,十二指腸潰瘍よりの大出血に際し救急手術を必要とする場合は左程多くはない.その適應としては主として老人で鮮血を吐血したり或は出血によるショック徴候を呈する場合が先ず挙げられる.反復出血も老人の場合は手術が必要である.下血のみで吐血のない場合は危險は比較的少ない.例えば死亡例についてみると85%が吐血を伴い,下血のみは15%である.但し幽門狹窄があると十二指腸からの大出血でも吐血を欠く.
 早期手術は反復出血後の晩期手術に比し危險は遙に少ない.即ち出血開始後48時間内の手術39例では僅かに2例(5.1%)であるに対して晩期手術では15例中6例(40%)の死亡率があり,保存的療法119例中15例(12.6%)の死亡率を遙に上廻る.

外科と生理

その14

著者: 須田勇

ページ範囲:P.733 - P.735

B.呼吸中枢全体としての自働性
 Rosenthalの古典的な延髄の分離実驗からHeymans(1927)の喉頭神経のみを介して以外にに神経的な連りを持たぬ灌流脳髄丈でも喉頭筋に週期的な收縮が認められるという事実,Adrian(1931)の金魚の遊離脳幹から週期性の働作電流が得られるという有名な実驗などから,中枢全体としては,先ず,自働性と交代性があると考えるのが普通である.
 問題は,その自働性が如何なる機序で発現し,その交代性が如何にして成立するかにある.この問題は生理学では極めて興味のある事柄であるが,一般論は若林勳の週期的興奮(生理学講座,中山書店)にゆずつて,こゝでは呼吸中枢に限つて,別の方面から覗つてみることにする.それは,週期性が神経細胞に由るものであるか,神経機構に拠るものであるか,という点である.

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集談会

ページ範囲:P.736 - P.737

第510回東京外科集談会   27.9.20
 1) S字結腸間膜裂孔内小腸嵌頓による腸閉の1例
        東京警察病院 釜山栄良 他
 73歳男子,常習性便秘があつたが右下に寢返つた際激しい腹痛,嘔吐等の腸閉塞症状が起れるため7時間後開腹.S字結腸間膜に生ぜる裂孔内に廻腸下部が嵌入して180°捻轉を呈していた.其の部を230糎切除.治癒.結腸間膜裂孔ヘルニアは若干の報告例もあるがS字結腸間膜のものは稀有.
 追加  慈惠大高田外科 鈴木正彌
 51歳,男子に於て同樣例を経驗し矢張り小腸切除を行つて治癒.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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