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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科7巻3号

1952年03月発行

雑誌目次

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空洞剔除術と結核腫剔除術特にその手術々式と適應症

著者: 長石忠三 ,   寺松孝 ,   安淵義男 ,   吉栖正之

ページ範囲:P.105 - P.107

緒言
 昭和26年2月初め,我々は孤立性の空洞又は結核腫を選択的に剔除し,その後に肺縫縮術又は有茎性筋肉弁充填術を行う一新手術的療法を案出し,同年12月20日までに15例に施行して良効果を得た.これを空洞剔除術Cavernectomy又は結核腫剔除術Enucleation oftuberculomaと呼称し,その手術々式並びに適應症に就て報告する.
 昭和21年春,日本外科学会総会の席上,京大外科青柳教授及び筆者の1人長石から「空洞に対する有茎性筋肉弁充填術」と題し,Monaldi氏空洞吸引療法を施行後空洞を切開し,その後に有茎性筋肉弁を充填する術式を発表した際,当時の東大都築外科(現在の福田外科)卜部博士から「空洞切除術」と題し,青柳・長石の「空洞に対する有茎性筋肉弁充填術」と略々同様の術式が追加されたが,これは今回の我々の術式とは全然異なるもので,寧る空洞切開術に近いものである.

閉鎖循環式気管内麻醉の研究

著者: 本多憲兒 ,   佐藤克也 ,   遠藤昇五郞 ,   富澤寬 ,   鈴森芳 ,   片見準一 ,   島田光男 ,   今野信一 ,   氏家紀一 ,   柴生田豊 ,   佐藤光男 ,   後藤進 ,   桐原敏夫 ,   木村直彥 ,   瀨川耕 ,   大山峻 ,   吉川俊一 ,   広木文雄 ,   大塚敬一 ,   柴田常太郞 ,   伊東潤造

ページ範囲:P.108 - P.110

 本邦に於ても最近閉鎖循環式気管内麻醉法が輪入され,本法に関する研究も各方面1-4)より発表されている.一般麻醉に就ては既にKilian9)の著書に見る如く,充分詳細に研究し盡された観があるが,初めて閉鎖循環式気管内麻醉を実施して見ると種々の問題に遭遇するので,之等に就て些か檢討を加えたので一部結果を報告する.

アルコール内保存動脈片移植

著者: 木本誠二 ,   杉江三郞 ,   角田正彥 ,   鍵谷德男 ,   和田達雄 ,   松井澄

ページ範囲:P.111 - P.114

 血管移植に関する吾々の研究成績は前に本誌に発表した1)2)所であるが,その際アルコール内に固定保存した動脈片を移植に使用する研究を行つていることを附加えて記載した2).その後実験的にも多数例を長期に亘り観察し,又臨床的にも数例に実施して興昧ある結果を得たのでここに一部を発表することとした.

膵臓癌手術前諸檢査並に術後対策に就いて

著者: 桂重次 ,   鈴木礼三郞

ページ範囲:P.115 - P.117

 膵臓癌の早期診断は容易でなく而もその手術も困難であるのは周囲に多くの枢要なる血管があり,手術に際し損傷され易い爲と,一方胆道再建術の安全性を欠くためである.更に術後の消化吸収,新陳代謝の問題も考究されねばならないので,從つて内外を問わずその手術成績は必ずしも満足すべきでなく,今後の研究に俟つ所大なるものがあるがそれは本手術を如何にして安全に施行するかと云う手術方法の研究と,膵頭癌の早期診断の確立と,術後消化吸収新陳代謝対策の考究等である.
 初期に疾患を見出して根治手術を行うのは凡ゆる研究にも増して死亡率を低下せしめる道であるが,膵臓癌の早期診断は仲々難しい.それは多くの場合或る程度癌が成長しない限り症状が現れないからである.

外科臨床に應用さるべき副腎皮質機能検査法について

著者: 澁澤喜守雄

ページ範囲:P.118 - P.126

まえがき
 現在,われわれは副腎皮質の機能をたしかめないで大きい手術を企てることがもはや出来なくなつてしまつた.手術室において,あるいは術後短時間の経過において不幸の轉皈を辿る症例の多数に多少とも急性の副腎皮質不全が見出され,またその術前には副腎不全の慢性型が見出されるからである.副腎皮質不全の典型はAddi—son病であろうが,Addison病が副腎結核によることはむしろ少いことが明かにされ1),また副腎皮質製剤が有効に使用しうるにいたつたこんにち,外科臨床でAddison病を取扱う機会はむしろかなり稀であるといわなければならない.このようにして,われわれ若輩は副腎不全をほとんど知らなくなつたのである.Addison病あるいは慢性副腎皮質不全の主なる症状はつぎのように要約されるであろう1)
 1.ひよわで疲れやすい
 2.皮膚粘膜の異常の色素沈著.
 3.体重の減少と脱水.
 4.低血圧と小心臓.
 5.食慾がない.惡心・嘔吐・下痢などがある.
 6.めまい,失神などの発作.
 7.低血糖と低血糖症状.
 8.精神神経症状.
 9.性機能と二次性徴の衰退.
 10.その他.
 日頃,大きな手術が計画される患者に,このような症状すべて,あるいはいくつかを見出すことは,しかし甚だ多いといわなければならないであろう.

外科方面の急死を観る

著者: 水野禮司

ページ範囲:P.127 - P.130

 東京都監察医務院は死体解剖保存法第8條に拠つて,東京都内,区の存する地域に発生した傳染病,中毒,災害によつて死亡した疑のある死体及びその他死因の明らかでない死体を檢案し,檢案で死因の不明なるものは解剖によつて死因を究明しております.
 從来かくの如き死体は主として檢察官と警察医とによつて科学的には遺憾の多い取扱で処理されて来たものであるが,それでは誤判が多く,死者に対して礼を失するは勿論,その家族にとつて損失であり,更に大にしては全國民の死因統計に大なる誤差を生じ,随てこれを基調とする國民の保健対策を謬らしめるものであり,一方には時に社会の不安(例略)を惹起し,或は犯罪の湮滅を黙過して社会治安を脅かすが如き結果を来す.要するに監察医務院は公衆衛生の向上及び公共福祉の増進を目的といたしております(日本医事新報昭26.8.25号参照).これらの点を詳し述べることは差控えて医務院で経験した実例から外科に関係したものの一端を申し上げたい.

鳥潟隆三先生が亡くなられる迄

著者: 荒木千里

ページ範囲:P.130 - P.130

 先生は元来お丈夫な方で,今度の御病気以外は特に病気されたことはないと思う.ぼつてり肥つて,時に顔がむくんで見えることがあるので,何度か尿の蛋白や糖をしらべてみたが,何もなかつた.又あのエネルギッシュな勉強振りが,一時的にしろ衰えたと思われることもなかつた.それが昭和22年6月突然第1回の脳出血である.酒も煙草ものまない先生が脳出血とは,誰しも意外に感じるが,私はどうも先生の大食に責があるのではないかと思う.かつての先生の健啖は実に驚くべきもので,一日中自宅に閉じ籠つて書きものをして居られる時でも,朝3杯,書3杯,夜4杯より少いことはなかつた.そして『わしはライオンの性だ』といつて,食膳には必ず獸肉を要求された.そしてこのような大食が先生の御自慢でもあつた.
 先生は戰爭末期からずつと秋田の御郷里に疎開して居られた.そこは大館から2里ばかり奥に入つた花岡町—今は鉱山町になつている—で,便利の惡い,そして何となくガサガサしたところである.終戰後昭和21年の5-6月頃,奥様の下腹部にどうも腫瘍が出来たらしい,というので,当時混乱の極にあつた汽車にのり,お二人で遙々大阪迄出てこられたことがあつた.幸い奥様の御病気は何でもなかつたが,お二人ともあまりに痩せて居られるのに驚いた.カラーも洋服もダブダブであつた.

特発性総胆管拡張症の1例

著者: 竹內幸孝

ページ範囲:P.137 - P.138

1.緒言
 本症に関しては既に1723年Vaterの記載があるが詳しくは1887者Todd 1853年Douglasの報告がある.爾来本症は極めて稀有なる疾患とされJudd & Greene(1926)はMayo Clinicに於て胆道系の手術17.381例に1例を経驗したのみと報じている.然し近年その知見の普及と共に報告例も漸次増加し本邦のみにても既に136例の多きに達している.Shallow Eger and Wagner(1943)は内外例175例に就て詳細なる報告をなしその中44例(25%)は本邦例にして他の報告者と共に比較的日本人に多きを指摘していることは注目すべきである.然し術前確診を下されたものは極めて少く(175例中22例12.6%)單に姑息的療法に止り或は診断不明のまゝ荏苒日を送りしものは予後絶対に不良にして何れも剖檢により初めて病因を確認し得たと云う事実は尚,本症に対する一般の知見の不足を物語るものであろう.
 私は最近本症の1治験例を得たので追加報告し併せて若干の檢討を加えて見度い.

術後精神障碍の2例

著者: 三條恒夫

ページ範囲:P.139 - P.140

1.緒言
 開腹術後の合併症としては一般に腹膜炎,腸管麻痺,急性胃拡張,腸管閉塞及び癒着,肺合併症,等々挙げ得るが,其の中に比較的稀ではあるが術後精神障碍なるものも決して等閑に附せらるべきでは無い.
 最近当外科に於て,同日に胃潰瘍,総輸胆管結石患者2例を手術せるに,共に精神障碍を惹起し,食事を嫌い,爲に種々の栄養保給に努力せるも体力消燼,心臓衰弱等併発し死亡せる例を経驗せるに依り報告し,同時に之れが発生起因に関し聊かの檢討加えり.

結石を有する皮下單純性血管腫の1例

著者: 緖方芳郞

ページ範囲:P.141 - P.142

(1)緒言
 血管腫は血管を主成分とする腫瘍で,之が皮膚,可見粘膜に存在する時は其の特異な所見よりして,容易に診断がつくものである。
 然るに之が表面に表われない皮下脂肪組織,骨,脳その他,内臓等に存在する時は診断は必ずしも容易でない.その上,結石を伴う血管腫にあつては他の腫瘍との鑑別が益々困難となる.
 血管腫に関する報告は從来数多く有するが,皮下に限局して発生した症例に就ては他の内臓に於ける場合と同様,数が少い.
 即ち,1913年Little, Morris 1930年Beretvas, Lipot1930年小池,花岡1940年高木等の報告がある.
 結石に関しては沢野(1940年)が血管腫中に靜脈結石を認めた3例に就て報告している.
 私は背部に腫張感,牽引感,鈍痛を訴える患者に背部腫瘍の診断の下に手術を施し,其の剔出材料に就き肉眼的並に組織学的檢査の結果,それは内層に結石を有する皮下單純性血管腫であることが判つた.
 本症例は臨床上興昧ある例であるので茲に報告する.

最近2年半に於ける破傷風30例の統計的観察

著者: 河野省吾 ,   杉江正文

ページ範囲:P.142 - P.144

I.緒言
 純正創傷病である破傷風は,昔時より高死亡率と苦痛激しき疾患として,現在に至るも恐怖を以て扱われている疾患で,日頃吾々臨床にたずさわる者は当死亡率を出来得る限り低下せしめようと努力している所の1つである.
 筆者等は最近2年半の間に30例の当患者を取扱い,本来諸家の統計報告の死亡率50%乃至60%を26.6%と成す事を得,以下臨床的観察を試み,諸賢の御批判を仰がんとするものである.尚当院は戦災病院であつたため,カルテの整理に不備の点があり,戰後より昭和23年末迄に多数例を経驗したにも拘らず本統計に加えなかつた事を附記する.

内嵌頓によるイレウス2例

著者: 安富徹

ページ範囲:P.145 - P.147

I.緒言
 イレウスの発生機轉は仲々複雑であるが,中でもいわゆる内嵌頓によるものは,文献より見ても極めて少い.最近わたくしは,代表的な2つの型の内嵌頓によるイレウスの2例を経驗したのでこゝに報告する.

巨大なる肝臓嚢腫の1治驗例

著者: 池谷亘 ,   木下英一

ページ範囲:P.147 - P.149

緒言
 非寄生性肝臓嚢腫は稀で臨床診断が困難な爲か剖檢或いは開腹に際して発見される場合が多く,外科的治療例は比較的少い。外國では1900年Leppman氏が報告してより1933年大塚氏に依れば105例を算え,本邦では1910年三宅氏の報告以来今日迄36例で其の内手術例は18例に過ぎない.最近我々も亦孤立性肝臓嚢腫の1治驗例を得たので此処に報告する.

集談会

ページ範囲:P.155 - P.155

第504回東京外科集談会昭和27.1.19
 〔1〕 広汎に漿膜組織を選択的に侵した 粘液癌の1例
        東京医科大学 伊藤 宏
 54歳 男子 腹膜に原発し肋膜,心外膜等の漿膜のみを侵した粘液癌を4年に亘つて観察し且つ剖檢機し得た.消化管実質を侵すことなく其の発育樣式は内被細胞腫に類似していた.

座談会

日本外科學會を中心に

著者: 大井實 ,   中山恒明 ,   篠原靜夫 ,   田中憲二 ,   篠井金吾 ,   齊藤淏 ,   島田信勝

ページ範囲:P.131 - P.136

 島田信勝1) 実は前から編集委員の間で学会の話しを一つしてみようじやないかということでしたがなかなかその機会がなかつたのです.今日はいゝ機会ですから日本外科学会を中心に2,3の問題をとりあげて御希望御意見等を雑談していたゞいてはどうかと思うのです.行過ぎたことは大目にみていたゞくと云うことで.....

外科と生理

その10

著者: 須田勇

ページ範囲:P.150 - P.152

3.炭酸ガスの運搬
 組織で代謝の結果生じた炭酸ガスは,その意味では組織に必要のない所謂老廃物質である.併し,血液中に入ると,次に述べるような形で血液の極めて特徴のある血液緩衝物質として,生物の内部環境の恒常性維持作用に関與し,同時に呼吸中枢に対する作用物質として呼吸運動の調節に関與する.この後の2つの意味から,生理学的には極めて重要な物質である.

最近の外國外科

手術不能の癌腫に因る疼痛を緩解するための脳下垂体移植,他

著者:

ページ範囲:P.153 - P.154

 著者は約2年間に既に慢性疾患で劇甚な疼痛のある患者118名に仔牛の脳下垂体の移植をした経驗を持つている.この移植は仔牛が屠殺されてから30分間以内に実施されなければならない且つ脳下垂体を仔牛の頭から取り出す時にも保温状態でなければならないとしている.それは屠殺後約1時間を経た脳下垂体を移植した数例の場合には術後にプロランの分泄が証明出来なかつたことがあつたからである.即ちその移植が無効であつたことを意昧するものと考え得るからである.この報告は轉移のある癌腫のため劇しい疼痛を有する患者49名にこの移植手術を施した結果を述べている.この49名中9名は早期に死亡した.又3名に於ては移植脳下垂体は膿潰してしまつた.残りの37名中33名はその疼痛から死亡するまで或は生存している現在も免れている.それ等の患者の癌腫の種類は胃癌,直腸癌,気管枝癌,鼻咽腔部癌,乳癌,前立腺癌でホヂキン氏病も含まれている.
 1例では3ヵ月間も移植が有効に作用した.又新しく移植を繰返せば矢張有効に働く.脳下垂体移植によつて疼痛が緩解されるばかりでなく,患者は治癒しつゝある様に感じる.食慾及び体重は増加する.2,3の例ではその生存期間も延長された様に見えた.この移植の効果が無くなる時には患者の衰弱が著明に現れて間も無く死亡する.4症例に於ては腫瘍の播種及び蔓延の進行が防がれた.脳下垂体移植は凡ての手術不能癌腫患者に施すべきものである.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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