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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科7巻4号

1952年04月発行

雑誌目次

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宿題報告「血管外科」報告要旨

著者: 木本誠二

ページ範囲:P.157 - P.158

I 血管移植
 動脈の欠損部に対する接続法として自家静脈を使用するよりも同種動脈移植の方が遙かに成績が良好であり,又安全性の高いことは昨年度の本会で報告した通りであるが,長期に亘る犬の腹犬動脈への移植成績も良好である.しかし実地臨床上これを行うことは,適当な材料を完全に無菌的に得難い点,並に保存期間に制限のある点から極めて困難である.この意昧で吾々はアルコール内に固定保存した動脈片移植を研究した.
 犬に於ける実驗でこれが殆ど新鮮同種動脈片移植に劣らぬ成績を得ることを確かめた上,臨床的に数例に就て実施した.この際感染が起れば失敗に終ることは新鮮同種動脈片の場合と同様であるが,感染が起らなければ充分に成功し得ることを経驗した.

胸部手術に対する硬膜外麻痺法

著者: 後藤淸太郞

ページ範囲:P.159 - P.162

硬膜外麻痺法は脊髄硬膜外腔に麻痺液を注入する事によりその部を通過する脊髄紳経を麻痺させ,その支配領域の手術に應用せんとするものである.麻痺液の注入を行う硬膜外腔の部位により脊髄硬膜外麻痺(Spinal epi—dural anesthesia)と尾部硬膜外麻痺(Caudal epiduralanesthesia)とに分けられる.前者は腰髄麻痺と同じ要領で腰椎又は胸椎間より硬膜外腔に麻痺液を注入する方法であり,主として腹部手術又は胸部手術に利用せられる.後者は尾鞍帯を通してその部の硬膜外腔に注入する方法であり,両者共に硬膜外腔に麻痺液を注入する事は同様であり唯部位を異にするだけである.後者は主として会陰部附近の手術に利用されるものである

Nitrogen-Mustardの局所的應用に関する研究

著者: 山田四郞

ページ範囲:P.163 - P.170

I.緒言並に概要
 最近における外科学の進歩はまことに目覚しいものがあるが,創傷治癒に関する一般の関心は比較的うすく,從来より手術創瘢痕を出来るだけ美化縮小しようとする試みは日常なされているけれども,これに関する積極的系統的研究に至つては,全く皆無の状態である.患者にとつては,手術の疼痛と瘢痕の大小は最も大きな関心事で,これに対する研究は常になされなければならない.極言すれば無瘢痕手術は外科医の悲願である.
 手術創瘢痕は創傷の再生機轉の終末像で,その形成には多くの要素が関與する.この機轉に主役を演ずるのは纖維母細胞である.瘢痕縮小には種々の要素並に方法が考えられるが,既に形成された瘢痕の縮小を策るよりも例えば再生機轉の過程で増生する纖維母細胞を,治癒を障碍しない程度で抑制することなどの方法が容易且合理的であるのはいうまでもない.

胆汁性腹膜炎

著者: 久保田重則 ,   北條孝文

ページ範囲:P.171 - P.174

 胆汁腹膜炎は1893年Bardelbenが始めて報告して以来欧米では既に相当数の報告があるが,本邦に於ては未だ少く,比較的稀な疾患とされている.私共は昭和21年以来本症の8例を経驗したのでここに報告して諸賢の御教示を得たいと思うのである.

戰時中蟲垂炎は減少せりや

著者: 佐藤七郞 ,   岩沢千代吉

ページ範囲:P.175 - P.177

 今次大戰前後の各種疾病の発生頻度は,食糧事情の逼迫其の他の條件により明かに変動を示した.即ち発生の増加したものに肺結核,栄養失調症,寄生虫病,急性傳染病等あり,之に反し循環器病,糖尿病,泌尿器病,血液病,内分泌腺病等に減少を見た1).我々は,終戰前後における虫垂炎の発生頻度に関し,東北各地の病院に就いて若干の統計を試みたので茲報告する.
 元来虫垂炎に関する卸見は既に余すところなく究明せられ,1000をを起す統計的観察の本邦業績も略々20を算える.しかし之等は凡で戰前のものであつて,戰後における多数例の統計,殊に終戰前後の比較統計は見受けられない.我々が調査したのは第1表の如く,昭和16年1月より昭和26年8月迄の東北各地から選んだ9ヵ所の病院であつて,総計10,645例の虫垂炎に就き次の3項目を調査した.

外科的野兎病に就て

著者: 大原甞一郞

ページ範囲:P.178 - P.180

(1)外科的野兎病の意義
 野兎病は各科領域に亘る各種の症状を呈し,それによつて臨床的に淋巴腺型,潰瘍淋巴腺型,眼淋巴腺型,扁桃腺淋巴腺型,鼻淋巴腺型及び類チフス型の6型に分けられる.之等病型の内,表在淋巴腺の腫脹を伴う5型は本病と同一疾患たるTularemiaのBubonic typeに相当するもので,ChristopferのA Textbook of Surgeryその他を見てもその治療方針はあくまで内科的に行い,外科的処置は極力避ける可きことを強調し抗生物質によつて敗血病を防止し得ると考えられる最近でも尚,此の病的淋巴腺の外科処置には愼重過ぎる程消極的である.之れに反し野兎病では,その踵脹淋巴腺を積極的に剔出することを1924年以来根本方針としている処から私は之等5病型を総称して外科的野兎病と呼んだ.
 臨床外科医が遭遇する自然感染例の大部分は此の外科的野兎病である.

第5回汎太平洋外科学会に出席して

著者: 東陽一

ページ範囲:P.181 - P.183

 汎太平洋外科協会の第5回学会は1951年11月7日から19日まで13日間という滅法長い時間に亘りハワイのホノルルで開催せられた.私は不肖の身をもつて日本外科学会の代表者として日本学術会議から派遣され,この学会に出席する欣びと光栄を担うことが出来た.広島医科大学の河石九二夫教授と東京女子医科大学の榊原什教授もまたこれに参加せられた.吾等3人とも演説を申込んでいたが,快く受入れられ,先ず無事朗読を全うした.
 汎太平洋外科協会というのは太平洋岸諸國の外科医が3年目毎に開催されるこの度のような学会に出席し,互に外科の知識や技術を示し会い,意見を交換し,その際自然に結ばれる親交は結局その人達の属する各國民間に親睦を結ぶ機縁ともなることを目的としている.

乳幼兒腸重積症に就て

著者: 稻田潔

ページ範囲:P.184 - P.186

第1章 緒言
 腸重積症は全腸閉塞中約10.3%(Flesch-Thebesius)に当り,殊に小兒期に於ては腸不通症の大部分を占め,成人に比し遙に頻発し,而も幼兒就中乳兒が主として侵され,其の突発的発来,劇烈な臨床症状及び経遇等極めて特異且つ重篤な疾患である.私は昭和4年より同23年に至る20年間に,岡山医科大学津田外科教室に於て経驗された腸重積症殊に乳幼兒腸重積症に就き,種々な観点より統計的観察を行つた.同年間に於ける全腸閉塞症は345例(急性症195,慢性症150)で,その中腸重積症は67例(急性52,慢性15)で,成人32,小兒35である.小兒35中急性34,慢性1,此の中5歳以上の小兒4例を除き,5歳以下の乳幼兒31中慢性症1を除いて30例に就き観察した.

ロスアンジエルス市に於けるA.M.A. 臨床医学会

ページ範囲:P.190 - P.190

 American Medical Ass ociationはCline会長主宰の下に去る12月4日より同月7日まで4日間に亘つて臨床医学会をロスアンジェルス市で開催した.同時に勿論A.M.A.の運営に関する諸協議会なども行われているが我々に興味のある臨床医学に関係した事項には講演,報告,天然色テレビジョン及び展示等外科に関するものが多数ある.それ等に中の主なものる拳げると,次の樣である.

Current American Surgery

ページ範囲:P.191 - P.193

SURGERY
 Vol. 30. No. 6. December. 1951.

第52回日本外科學會總會日程

ページ範囲:P.196 - P.199

昭和27年4月1,2,3日の3日間
京都市左右区吉田本町(市電東一條下車)

京都大学法経第1教室に於て開催する

第1日(4月1日,火曜日)午前8時開会
開会の辞 会長 靑柳 安誠

一般演説(○印演者)
1.炎症に対する外科処置の再檢討(8分)
榊原 什,織畑 秀夫,大田八重子,岸本 頼子,永瀬 十郎,飯川 豊彦,松浦 潔,中川 耕作,勝原幾視子,根本雅樂子

東京女子医大外科 
追加 外科領域に於けるFluorescein-Natriumの應用
 第1報 試験管内に於けるFluorescein-Natriumの各種細胞の親和性に関する研究(5分)
  札幌医大外科 ○大生定,大塚礼子

第8回日本脳・神経外科學會次第

ページ範囲:P.199 - P.201

日時 昭和27年4月4日午前8時
 会場 京都大学医学部丙科講堂
開会の辞    会長荒木千里
       演  説
1.人工血管血漿片の実験的研究第(1報)(5分)
          名大今永外科服部保次

第25回日本整形外科學會總會目次

ページ範囲:P.201 - P.205

会期 昭和27年4月4(金)5(土)6(日)日
会場 大阪市立中央公会堂
第一日(4月4日 金曜日)午前8時開会
開会の辞 会長 淸水源一郎
演  説
1.胎生初期に於ける股関節の発育過程(第1報)(5分)
 名大分院整形 小菅 眞一,加藤 晃,木村 光男

第25回日本内分泌学会プログラム

ページ範囲:P.206 - P.207

第25回日本内分泌學會總會順序
  会場 大阪大学医学部附属病院東講堂
  期日 昭和27年4月1・2・3日
     開 会  午前8時
     第1日 午前之部
1.開場挨拶    会長 布施信良
1.会務及び会計報告   角本永一
1.演 説
    1.演説時間一題6分以内
    1.追加討論 2分以内
注意 1.演説原稿又は演設要旨は演説終了後直ちに      係員に渡されたし
    1.演説並に追加討論者は会員に限る
    1.会場にはライカ版幻燈器を準備す

最近の外國外科

血栓及び塞栓症の予防法,他

著者:

ページ範囲:P.187 - P.189

 著者たちは内科患者,外科患者何れを問わず血栓及び塞栓症の頻発を広汎な予防法の採用によつて防ぐことを必要と考えている.そして手術前外科患者には次の処置を原則的に施すべきであるとしている.即ち(1)身体肥満がある場合には体重を減ずるようにする.(2)外部から見得る静脈瘤が存在するときはその手当をする.(3)心臓に異常の有無を内科的に檢査し且つ処置する.(4)貧血にも治療を加える.(5)含水炭素及びビタミンを豊富に含む食餌を攝取させる.又術後の処置としては,(1)早期離床 (2)病床上の脚体操励行 (3)腓腸部静瘤脈の圧迫を避ける (4)脚に静脈瘤のあるものには彈力性靴下を穿せる (5)血液擬固防止剤を使用する.これ等の中で著者たちは徐々に吸牧されるヘパリン剤を使用することが最も適当としている.その理由は投與法が簡單で,作用が迅速且つ作用期間が長い.又藥物用量の安全性の範囲も広い.その上研究室的諸檢査の必要も比較的少いからである.この血液擬固防止剤によつて出血性傾向が強化される患者及び長期間病床に臥して離床出来ず血栓塞栓症を惹起する危險のある者にのみ予防的の靜脈結紮法を施すことが認められる.術後の予防的処置を実施すべき患者は次の様なものである.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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