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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科7巻5号

1952年05月発行

雑誌目次

宿題報告

血管外科

著者: 戶田博

ページ範囲:P.209 - P.223

 血管外科は最近目覚しき進歩を示し殊に胸部大血管,心臓に対する外科的治療の飛躍的発展は外科学に循環器外科なる新しき分野を開拓した.從来外科的推進の暗礁は血管に対する侵襲を未だ自由に行い得ない事であつて若しもこの問題が解決されるならば外科手術の様相は随分変化するであろう.私は数年来多数の教室員と共に血管外科の研究に從事し第52回日本外科学会総会の宿題「血管外科」を担当報告する事になつたので茲に研究成績の概要を述べようと思う.

宿題報告要旨

外科的疾患に於けるビタミン代謝

著者: 星川信

ページ範囲:P.224 - P.230

 ビタミンの本体,作用機構などが基礎的に近年とみに明らかにされてきたのであるが,この研究は外科的疾患においてビタミソがどのような代謝状態にあるかをしらべ,ビタミンの利用のわるい原因を求めその作用を発揮せしめるための手がかりを得ようとしたものである.こゝに研究の対象としたビタミンはB群ビタミンのうちB1,B2ニコチン酸,B6でこれらについてその代謝を追求し,疾患としては低蛋白状態,惡性腫瘍,消化管の癌とくに胃癌,肝硬変,肝癌など肝疾患および胆道疾患,その他肝機能障碍時と,特殊な物質代謝異常とともに組織臓器の機能の急激な低下をきたすシヨック,イレウスについて実瞼的臨床的両方面から吟味した.葉酸とB12は主にその應用の上で作用効果を檢索した.
 檢討した事項はこれを大きくわけると,1)ビタミンの体内分布と掛泄,2)ビタミンの燐酸エステル化の問題ビタミンの代謝異常と組織呼吸との関係,4)ビタミンのいわゆる分解ないし不活化の問題,5)ビタミンの應用の問題である.

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膵頭十二指腸切除の経驗

著者: 梶谷鐶 ,   星野智雄

ページ範囲:P.231 - P.235

緒言
 小範囲の膵頭十二指腸切除による十二指腸乳頭部癌治驗例は1909年既にKausch1)により報告されているが,当時の医学を以てしては本格的な膵頭十二指腸切除は侵襲が過大で,又胆道或は膵と腸管の蓮絡部に縫合不全が起り易く,甚だ困難な手術であり,且つ膵、十二指腸の機能に関する認識も不充分であつたから,暫く一般から敬遠されていた.本手術が膵頭十二指腸部の癌に対し本格的な根治術式として採用され得るに至つたのはWhi—pple等(1935)2)の功績である.Brunschwig3)は1937年既に膵頭と共に十二指腸を全別出する徹底的術式に到達している.当時の手術成功の鍵は斯る大侵襲を二時的に行うこと,膵の外分泌を遮断するも生命の保持は可能であると云う事実に基いて,遺残膵を腸管に連絡しないで断端を閉鎖したまゝ放置することにあつたと報じられている.又膵や十二指腸の欠如も人体に著明なる障碍を起さず,或は起しても障碍は比較的容易に克服されることが認織され,本術式は漸く一般化し,Bartlett4).Whi—pple5),Waugh6),Cattell7)8),等により多数本手術の経驗が報告されるに至つた.現在では黄疸に対する対策,抗生物質の使用,ショックの予防等により本手術の直接死亡率は著しく低下し,從つて手術方法にも亦可成り変革が齎された.

骨折の髄内固定法

著者: L.F.Friend

ページ範囲:P.236 - P.239

 19世紀以来骨折の固定に金属が使用されて来た.釘や螺子や接合板や金属線を使つて長管状骨々折の解剖学的整復固定が行われたが其の結果は屡々満足すべきものでなかつた.
 金属の周囲の骨吸牧に伴う石灰消失のため固定が駄目になるのが普通であり,仮関節,骨髄炎がよく合併症となつた.

前後式胸廓成形術々式

著者: 武田義章 ,   隅本彰

ページ範囲:P.241 - P.244

 肺結核外科的療法の主軸をなして居る胸廓成形術は手術患者の予後が学者に依つて大差の在つた時代には,各種の手術々式が考按されて居た.然し1936年Sembが筋膜外肺剥離を併せ行う上部肋骨亞全切除法を発表して以来.Sauerurhchの側脊桂肋骨切除法は影をひそめ,專らSemb氏手術が広く行われる様になつた.その原因はSauerbruch氏手術は肋骨切除が長さに於て不充分である事.肺剥離を行わない爲に肺虚脱が不充分になり易い事,虚脱肺の再膨脹が早期に起る事等に在つたと思われる.勿論此の間に於ける適應樹立や後療法に進歩改善の在つた事は否めないが,Sauerbruchの最初の318例では35%,1922年の507例では33%,1942年1924〜1938間の世界各國の1600例に於いては40.6%は喀痰を無菌化せしめた(恐らくは塗抹陰性)と報告されて居る.Sauerbruch法を改良したGraf法は79%,Co—ryllos法は71%,Holst法は60%,Monaldiは64%Sembは64%,Iselinの行つたSemb法は80%を無菌化せしめた等と報告して居る.
 吾々の症例では判定を月1回培養1年後の成績としてSemb法1回(4〜5本切除)では50%,補成々形術を行つて61.1%を陰性化せしめたに過ぎなかつた.

岡山第一外科教室に於ける最近10ヵ年間の骨より発生した肉腫の統計的観察

著者: 間野淸志 ,   壺井富士男

ページ範囲:P.245 - P.249

 吾が國に於ける惡性腫瘍中,癌腫の統計的観察は多数の人により発表せられているが,肉腫特に骨より発生した肉腫のそれについての報告は阪本,久保,藤巻,藤原の諸氏のみで,欧米に於てはSimon, Theilhaber, Budy,Piperata, Schoeneckeの諸氏にすぎない.從つて私共は,今回吾が岡山第一外科教室に於て昭和16年〜昭和25年の間入院加療した患者中臨床所見,レ線所見,組続学的検査により診断の確定した39例の患者に就て,統計的観察を試みたので以下此の事について御報告し度く考える.

睾丸壊死の1例

著者: 金上幸夫

ページ範囲:P.250 - P.251

 精系捻轉症なる疾患は,1885年Nicoladoniニコラドニー氏に依り初めて詳細を報告され一般の注目を惹くに至り,其の後次第に報告の数を増して来たが,未だ稀有なる疾患とされている.又此の疾患は,嵌頓鼡蹊脱腸及び副睾丸炎と誤診され易い爲,特に興味あり注意すべき疾患とされて居る.最近当外科に於て精系捻轉に依る睾丸壊死の1例を経驗したので,茲に報告する次第である.

腸管蜂窩織炎の1治験例

著者: 円山一郞 ,   高橋猪三郞

ページ範囲:P.251 - P.252

緒言
 腸管蜂窩織炎,或は急性局所性腸炎は Rokitanski(1824)により始めて報告されてから,内外より相次いで報告せられているが,まだ比較的稀な疾患とされている.その原因に就いては尚諸説が唱えられて居るがまだ定説はない.余等も最近1例を経験したので茲に報告する次第である.

大腸癌を思わせた腸管ポリポージスの興味ある1例

著者: 高橋末広 ,   笠松茂

ページ範囲:P.253 - P.255

緒言
 腸管ポリポージスに関する文献は枚挙に遑がない程である.大体ポリープは何れの腸管にも発生するもので,殊に直腸に多い.主として孤立性に或は時には多発性に生ずるものである.本例は惡性腫瘍に因る大腸狭窄と想像せられ,開腹術施行し,その切除標本により横行結腸に於ける多発性ボリポージスなることを認め,尚その簇生した各ポリープが炎衝性に癒着し一つの管腔をなし,恰も二重腸管を形成したるが如き観を呈せる興味ある且稀有なる症例である.茲に之を報告し,諸賢の御批判を乞うものである.

巨大膀胱結石による膀胱膣瘻の1例

著者: 田中信吾 ,   志水政純 ,   飯田忠夫

ページ範囲:P.255 - P.257

 膀胱結石は小兒にも老人にも出来るが,40歳〜5O歳代が一番多い.又尿道の解剖学的関係その他からその発生頻度は男子に多く,女子は遙かに少い.膀胱結石の数は1個又は数個,時には100以上に及んだ報告もある.
 大さは砂粒大より,いわゆる巨大と称する程度まで種々あるが,統計的にみて1〜30gの重さのものが最も多い.然して50g以上のものは,はるかに減じ100g以上のものは本邦文献で調べて50例に充たないほどである.外國では久保山,杉山氏の論文に依れば1000〜2860gに及ぶ巨大なものがあつたというが,本邦では久保山氏の676gが最大のようである.

最近の外國外科

脳腫瘍とその好発部位年齢及び性別との関係,他

著者: J. Zülch.

ページ範囲:P.258 - P.259

 著者は脳及び脊髄に発生する凡ての腫瘍は中枢神経系統の何れの部位にも無差別的に発生するものでなく,それぞれ一定の好発部位に発生し,更に或種の腫瘍は一定の年齢に最も多く生ずることも一般に認められている.從つて一生涯中の各時期に於て或る一定種類の腫瘍が起り且つその腫瘍は脳組織の一定の好発部位に発生する.その上腫瘍の種類は男女性別とも関係する.以上の様に脳腫瘍の発生とその好発部位,年齢及び性別との関係はこれをPathoclisisと云う言葉で云い表わせるとしている.そして著者はこの考えから3000例の脳腫瘍を調査分類した結果を表にして見た.この様な現象の原因は,しかし,説明することは出来ないが,脳腫瘍に前述のPathoclisisなる現象を認め得られるもので,この事実は臨床的診断上に重要な補助手段となり得るものであると述べている.(Deutsche Zeitschrift für Nervenheilkunde. Bd. 166, Nr. 2, S. 91, 1951).

外科と生理

その11

著者: 須田勇

ページ範囲:P.260 - P.262

3:4換氣に對する酸素及び炭酸ガスの影響
 A.肺胞酸炭ガス張力と換気量
 3:3で述べたように炭酸緩衝系に変動があると呼吸運動が変つて炭酸ガスの気相への散出が調節されることが特徴の1つであつた.例えば,食後で胃酸の分泌が旺盛になると,血液の重炭酸は増加して,呼吸は抑制されて肺胞炭酸ガス分圧は上昇することが認められる.同様の現象は重曹を経口的に輿えた場合にも認められるし,反対の現象は酸や塩化アンモニウムを投與した時に現れる.塩化アンモニウムのアンモニアは尿素となるため,この物質は塩酸を與えた場合と同じ効果を及ぼすものである.斯る呼吸運動の変化が如何にして起るかの議論は後に呼吸調節の問題を述べる時に触れることにして,ここでは炭酸ガス分圧の変化と実際に起る呼吸量の変動に就いて述べることにする.
 この問題を定量的に取上げたのはHaleane&Peiesley(J. Physiol. 1905, 22:225〜266)もであつた.第3:4A図はGray(1949)によるもので10名の正常人に種々の割合に炭酸ガスを混ぜた空気を呼吸させた場合の換気量の増減を,空気呼吸の場合を1としてその倍数で示したものである.図の実線の如く肺胞分圧と換気量の間には直線関係が認められ,2.5mmHgの上昇で換気量は2倍になつている.換気に変化が起る最小の分圧変動は0.1mmHg程度である.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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