icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床外科7巻6号

1952年06月発行

雑誌目次

--------------------

電気肺臟

著者: 高木健太郞

ページ範囲:P.265 - P.266

 從来の人工呼吸の方法は,胸部を圧迫するとか,あるいは空気をポンプで肺の中へおくりこむような,自然の呼吸の機序とは全く異つた方法か,自然に近いものといえば鉄の肺のような大がかりのものであつた.
 最近の外國の文献1)によると,横隔神経に電気的の刺激を與えて横隔膜を收縮させることによつて人工的に呼吸させる方法を,既に臨床方面で應用していることが述べられている.しかしこれらの文献によつても,装置に関しては精しい説明が見当らなかつたので,独自の考えからこの装置を設計,試作し,また2,3の実驗をしたので報告する.

経靜脈性脂肪輸入に関する研究

著者: 日笠賴則 ,   麻田栄 ,   財津晃 ,   塚田朗 ,   仲田淸尚 ,   菊地宏文

ページ範囲:P.267 - P.271

 吾々は術前,術後の非経口的栄養補給のうち,脂肪のそれのみが殆ど研究されて居ない点にかんがみ,京都大学理学部物理化学教室帰山亮教授指導のもとに,靜脈内注入も安全な脂肪乳化剤の作製に努めた結果,15〜20%脂肪乳化剤の作製に成功した.然し乍らこの吾々自らが作製した乳化剤が靜脹内書注入された場合果して如何なる過程を経て利用されるかという点が問題である.併し乍ら吾々はこの点に就て現在猶討究中であるから,此処に述べる報告も今日迄に判明した点のみに限る.
 本剤を家兎の耳靜脈から注入すると第1図の如く注入脂肪は速やかに血中から消失するが,吾々の行つた組織顯微化学的檢査によれば血中から消失した脂肪球は第1図の如く肺臟の所謂肺胞貪食細胞である肺胞壁組織球,肺胞上皮細胞,及び毛細管内皮細胞に攝取される.(SudanIV脂肪染色法)次いで肺細胞内に攝取された脂肪球は第2図書示す様にSmith-Dietrich氏リポイド染色法を施しますと明らかに脂肪酸及びリポイドに変化して居る事が判る.

慢性関節リウマチに対する副腎皮質移植

著者: 田辺嘉夫

ページ範囲:P.272 - P.274

緒言
 Selyeの研究を基礎として,Kendall, Henchの慢性関節リウマチに対するACTH又はCortisoneの應用が驚異的な効果を有する事が報告されて居るが,我國に於ては現在これを入手することが殆ど不可能に近い.それで諸富博土はACTH注射の代りに牛脳下垂体移植により勝れた成績を挙げていられる.この成績は欧米に於けるACTH,又はCortisone注射療法の成績に比して,むしろより良好な成績が挙げられているとさえ考えられる.
 我々も亦一昨年以来,Cortisoneの効果を期待して牛副腎皮質移植を行い,約100症例に達したのでその成績を報告したいと思う.その大要は,本年の日本整形外科学会総会に於て発表したが,此処に再び詳述して諸家の御追試を御願いする.

肺結核外科における出血量

著者: 西純雄

ページ範囲:P.275 - P.279

 近時肺結核外科療法の普及と共に手術手技,術後諸種合併症の対策として又一般状態の維持回復のために出血量,補液量の問題は極めて重要となつてきた.特に肺切除のような大量の出血が予想されるものにおいては,その必要性を痛感する.私は國立療養所山陽荘において肺切除20例,胞廓成形術64例,肋膜外合成樹脂充填術10例を対象とし,主として前二者について檢討を加え,いささか得る所があつたので,その成績を報告する次第である.

胆嚢炎時に於けるチアミン代謝

著者: 近藤達平

ページ範囲:P.280 - P.282

 ビタミンB1は汎く臨床的に使用せられており,神経性疾患の場合の外に肝臟機能障碍に際しても葡萄糖,ビタミンC,Kインシュリン等と併用して屡々用いられるが,各種疾患時に於けるその作用機轉は未開の点多々あり,殊に外科的治療の対照となる疾患に於ては殆んどその研究を見ない.
 脚気の場合に肝障碍の認められる事は以前から臨床的にも観察されている事であるが,沢田は肝障碍時に焦性葡萄酸排泄が多いと述べ,肝臟及び胆道疾患時に沢田尿脚気反應が94%陽性に出ると言つている.かくの如く一般に脚気の場合に肝障碍が見られ又肝障碍時に焦性葡萄酸排泄の多い事より考えて肝障碍とビタミンB1との間に深い関係がある事を予想しうると思う.更にB1を大量に攝取するとその1/4以上が肝に貯えられる事,又肝におけるB1の附燐が著大な事よりしても肝臟とビタミンB1とが深い関係にある事は明かである.又大橋,三宅教授等はB1は胆汁分泌を亢めヒヨール酸が多量に出現すると述べB1欠乏は胆石成因に関係が深いと言つた.

マイアネシンについて

著者: 橋本義雄 ,   神谷喜作

ページ範囲:P.283 - P.286

 マイアネシンが我が國に詔介され市販に供されるよらになってから約1年である.我々は既に昭和25年4月より徳島大学藥学部奥村教授の合製されたマイアネシンについて臨床的並に実驗的研究を行つている.最近マイアネシンに関する報告は数多くみられるが主として筋弛緩についてのものであり,それ等のうちには我々の見解と可成り異つた報告もあるので,こゝに我々はマイアネシンの作用の全般についての我々の考え並びに文献的考察を行い本剤には筋弛緩作用の他に局所麻痺作用,血液凝固促進作用もあり,これ等の作用も亦臨床的に價値のあることを述べ併せて本剤が益々多く利用されんことを願うものである.

急性虫垂炎と胃液酸度について

著者: 植田忠 ,   村上正統

ページ範囲:P.287 - P.291

 急性虫垂炎は廻盲部疼痛,廻盲部皮膚過敏症,廻盲部腹壁筋緊張等の他胃部疼痛,胃痙攣,上腹部痛,臍周囲痛,惡心,嘔吐,食慾不振,呑酸,嘈囃,胃部膨満等色々な胃症状を伴つて発病する者が多い.
 之等虫垂炎の際に起る胃障碍に関しては,1910年B-G. A. Moynihanによつて始めてThree gastric stigmataの命名のもとに発表されてより,種々の実驗的及び臨床的研究がなされてきた.即ち之等胃障碍の起る原因として,泰西ではSante Solieri(1919)Gallassi Augusto(1930)Mac. Lean(1932)等は神経反射を以つて説明し,B. G. A. Moynihan(1910)Preusse(1932)等は淋巴管の連絡によつて説明し,又Vorschütz(1922)Marsch(1922)等は淋巴管を経て先づ大腸神経節が罹患し,次いで該神経の支配下にある胃に種々の症状を起すに至ると説明している.我國に於ては,後藤七郎教授が腹部三主徴として多数の例を報告せられたのを始め,綿織(1912)南(1927)田代(1929)友田(1931)益子(1936)池辺(1937)古森(1937)小堀(1949)白石(1951)等各氏に依つて報告せられ,特に益子氏は其の成立機轉を次の如く説明している.即ち1;虫垂胃反射によるもの.2;内臟交感神経節が2次的に犯され,其の支配下の胃に病変を生ずる.

胃のLinitis plastica

著者: 飯田茂 ,   白山隆

ページ範囲:P.293 - P.294

 胃壁の著明なる肥厚と萎縮とを主体とするLinitisplasticaは最初Lutherに依り,"Verhärtung undVerengerung des Magen"として報告せられ,1859年Brintonに依りLinitis plastica hypertrophicaと命名されたが,その原因に就ては種々なるものが挙げられ,今日尚議論の対象となつて居るものである.本邦に於ては,大正4年(1915)須藤が硬性癌による1例を報告したのが最初にして,其後約16氏により或は癌腫性病変に,或は梅毒性病変に因るLinitis plasticaが報告せられて居る.私は膠様癌によつて起つた胃のLinitis plasticaなる例を経驗したので,茲に報告する.

逆轉症虫垂炎

著者: 東都宏

ページ範囲:P.294 - P.296

 内臟逆轉症の頻度は報告により区々で大体0.002〜0.1%に存在すると云われている.米國最近の剖檢例や集團檢診の結果は大体一致して6000〜8000に1名即ち0.017%〜0.0125%となつている.しかし之が虫垂炎に罹患し,手術処置を受ける率は更に極めて稀有なものである.私は最近その1例を経驗したので文献的考察と共に報告したい.

脳卒中及び脳外傷に対する頸部交感神経節「ブロック」療法

著者: 天瀨文藏

ページ範囲:P.296 - P.298

 「プロカイン」による交感神経節「ブロック」が單にその麻醉効力持続期間内にのみ限定されず以後尚長く生体に一定の影響を與え,同時に又一定の疾患に対して好影響を及ぼすことに就てはも早疑うことは出来ない(天瀬1))余は最近更に脳卒中6例,脳外傷2例に星状神経節「ブロック」を,各1例に頸動脈周囲交感神経「ブロック」を行い好結果を得,未だ尚将来に残された問題も多々あるが,これによつてこの種疾患に向つて早期に積極的な処置をとることより,永続的後遺症を或る程度未然に防止し得ると確信するに至つたので茲に報告する.

腸管嚢腫様気腫の1例

著者: 阿部義郞

ページ範囲:P.298 - P.300

 我が國で今日迄約70例の本症が報告されている.而してその原因に関しては種々の説が述べられている.

慢性骨髄炎手術患者の2死亡例について

著者: 菅原克彥

ページ範囲:P.300 - P.302

 一般に慢性骨髄炎の手術は四肢の他の疾患に対する手術と同様に小手術として扱われ患者の全身状態にあまり考慮がはらわれずに行われている傾向がある.吾々はこの2年間に慢性骨髄炎の手術による死亡例を2例も経驗しているので,その死因を追及すると共に更に最近8年間に於ける該患者85例の統計的観察を試みたのでこゝに報告する次第である.

71歳の高齢者に発生せる急性化膿性恥骨々髄炎の1治驗例

著者: 富川四郞

ページ範囲:P.303 - P.304

 化膿性骨膜骨髄炎は発育期の男女に最も多く,しかも長管状骨に頻発する疾患でありその病理,症候,治療学的研究の報告は枚挙にいとまも無い程であるが骨盤骨髄炎に就ては東西の文献を散見するもその例多しとしない。
 就中,恥骨々髄炎に至つてはその数は甚だ少い.私は71歳になる老婦人に外傷を誘因とし,同時に糖尿病を合併しておつた恥骨々髄炎の興味ある一治驗例を得たので報告する.

幼児に見られた巨大脂肪腫の1例

著者: 武井包夫

ページ範囲:P.304 - P.305

 脂肪腫は,脂肪組織より発生し,巨大となる傾向のある腫瘍である点は,周知の事である.最近,予は先天性に発生した幼児の巨大脂肪腫を,経驗したので,先輩諸民の報告に追加致します.

蛔虫卵性慢性膵臟炎の症例

著者: 鍬塚登喜郞

ページ範囲:P.306 - P.307

 近来蛔虫寄生率が激増した爲に,蛔虫による各種の外科的疾患が報告されている.特に蛔虫の胆道迷入は種々論議されているが,最近我々は蛔虫卵による慢性膵臟炎の2例を経驗したので報告する.

強力ネオミノファーゲンCの関節痛等に対する使用成績

著者: 宮本銈造 ,   新井田覚太郞

ページ範囲:P.308 - P.309

 從来強力ネオミノファーゲンC,アルツス現象,シュワルツマン反應等,動物実驗の成績より其の抗アレルギー性を認められ,且つその成分たる,グリシン,シスチィン等SH系化合物,解毒消炎作用を認められているが,曩に熊大加来は臨床的に腰痛等に,又,森平は毒素に因る本神経の炎症に有効に作用すると報告している.

尿管S状結腸吻合術及び全膀胱剔除術施行症例

著者: 薄場元 ,   登米正 ,   舟生富壽

ページ範囲:P.309 - P.310

 膀胱の全剔除術そのものは,外科側からは難かしい手技ではないが,本手術に必然的に起る尿路の処置は難問題であつた.尿路の処理の方法としては 1)創面内放置,2)尿道吻合術,3)膣吻合術,4)皮膚移植術,5)脳瘻形成術,6)腸吻合術等が行われた.此の中には原始的な方法で近代外科からは問題にならぬものもあるが,然し多数の先人の苦心の跡は充分窺われる.即ち尿管皮膚移植術或は腎瘻形成術は死亡率が最も低いが,体表に尿が流出する欠点がある.尿管腸吻合術,殊に尿管S状結腸吻合術は尿失禁を残さぬ点で最も優れているが,残念乍ら不成功例が少くなかつた.本法の危険性は術直後の縫合不全と遠隔成績に於ける吻合部の狭窄と腸内容の尿管内逆流による尿路上行感染である.
 然し此の問題もMayo,Hendrichus及びCoffey等の方法の出現によつて解決した.我國に於ても杉村名誉教授は20年前に矢吹博士をして動物実驗1)により此の問題を解決せしめた許でなく,実際に尿管腸移植の臨床例を発表されている2).現在の化学療法を併用し,之等の術式に依つて移植すると,不成功例は絶無と云っても過言でないので,術式は既に20年前に完成されていたと考えられる.当時之等の術式が広く普及されていなかつたのは,不成功例もあつた爲と考えられるが,之は術式の罪ではなく,化学療法が発達しなかつた爲と思われる.

集談会

ページ範囲:P.311 - P.311

第48回 東海外科集談会 27.1.27
 1) Myanesinの整形外科領域に及ぼす治療成績
          名大整形 木村光男
 其の長期間使用書よりSpasmusを主症状とする所謂維体路疾患書対する運動練習書他の手術的療法と併用すれば良効があり,手術時使用書より止血的効果あるため手術時間を短縮しうる.又整形外科的非観血療法(索引法)に際して重錘力増加疼痛の軽減が得られる.

人事消息

ページ範囲:P.314 - P.314

 ◇塩田 広重氏 日本医大学長,日本学術会議第7部長 の氏は文部省の私立学校振與会法書よる私立振與会設 立委員に私立医大を代表して任命された.なお氏は文 部省における昭和27年度科学研究費等分割案議会委 員に推さる.
 ◇小沢 凱夫氏 文部省昭和27年度科学研究費等分割 案議会委員に推さる.

最近の外國外科

肺結核に対する肺切除と胸廓整形手術とを同時施行した成績,他

著者:

ページ範囲:P.312 - P.314

 著者たちは38名の年令15〜57歳の肺結核患者に対して肺切除と胸廓成形手術とを同時に施した,これ等の患者の大部分は病変が相当進んだ両側肺結核患者で,約3分の2は既に肺虚脱療法も受けておつた.手術としては38名中6名には片側全肺切除,29名には上葉切除,12名には区域肺切除のみ或はこれに肺葉切除を合併したものを施した.上葉切除及び胸廓成形術を施した32名中で術後死亡者は1名あつた.又片側全肺切除及び胸廓成形術を施した6名には術後死亡者は1名もなかつた.
 術後の胸膜気管枝痩形成は2名にあつた.又1名は術後早期書反対側の上葉に結核病変の蔓延を来たしたが,それは抗生物質剤療法で迅速に好轉した.1名の肋膜及び肺臟を全く切除した患者には左側喉頭の反回神経麻痺が起つた.しかし,この2つの手術を同時に合併して施しても概して患者はその手術書よく堪える樣であり,又術後の合併症発生の頻慶も大ではなかつた.著者たちの症例の追求調査は遠隔成績を決定する程の長い期間に至つてないが,27名の生存患者に就てその術後の短期成績は極めて顯著であつた.1名喀痰中に菌陽性のものがあつたが,これは術前から存在した他側の肺の病巣に起因するものであつた.36名(95%)には喀痰中の菌は陰性で,疾患全治の可能性がある樣であつた.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

78巻13号(2023年12月発行)

特集 ハイボリュームセンターのオペ記事《消化管癌編》

78巻12号(2023年11月発行)

特集 胃癌に対するconversion surgery—Stage Ⅳでも治したい!

78巻11号(2023年10月発行)

増刊号 —消化器・一般外科—研修医・専攻医サバイバルブック—術者として経験すべき手技のすべて

78巻10号(2023年10月発行)

特集 肝胆膵外科 高度技能専門医をめざせ!

78巻9号(2023年9月発行)

特集 見てわかる! 下部消化管手術における最適な剝離層

78巻8号(2023年8月発行)

特集 ロボット手術新時代!—極めよう食道癌・胃癌・大腸癌手術

78巻7号(2023年7月発行)

特集 術後急変!—予知・早期発見のベストプラクティス

78巻6号(2023年6月発行)

特集 消化管手術での“困難例”対処法—こんなとき,どうする?

78巻5号(2023年5月発行)

特集 術後QOLを重視した胃癌手術と再建法

78巻4号(2023年4月発行)

総特集 腹壁ヘルニア修復術の新潮流—瘢痕ヘルニア・臍ヘルニア・白線ヘルニア

78巻3号(2023年3月発行)

特集 進化する肝臓外科—高難度腹腔鏡下手術からロボット支援下手術の導入まで

78巻2号(2023年2月発行)

特集 最新医療機器・材料を使いこなす

78巻1号(2023年1月発行)

特集 外科医が知っておくべき! 免疫チェックポイント阻害薬

icon up
あなたは医療従事者ですか?