文献詳細
症例
文献概要
單純性炎症性腫瘍は腹部では腹膜,大網等に発生せる例もあるが,最も多く好発するのは回盲部であつて,同部の癌,結核、アクチノミコーゼ等との鑑別診断が甚だ困難のことがあり,これ等の病名のもとに手術され,組織檢査により始めて発見されることが多い.本外科に於ても本症に関し,以前今泉の詳細なる報告がある.(臨床医学第25年4,5月号昭和12年)一般に本症は粘膜下組織,筋層に結合織増殖、細胞滲潤等を起すもので,限局性である.その表面は概ね平滑で中心部に屡々壊死又は膿瘍空洞を作る.本症の原因としては,第1に異物,化学物質細菌毒素等による持続的慢性刺戟,第2に個体並びに組織の特種反應,第3にリンパ鬱滞等が拳げられる.臨床上発病及び経過は常に潜行性慢性で,自覚症状のないもの多く,時には回盲部の疼痛等を訴えることもあるが,偶然の機会に右下腹部の腫瘍を発見されることが多い.こゝに述べるのは蛔虫卵を核として生じたる慢性炎症性腫瘍の1例であつて比較的稀なものと思い報告する次第である.
掲載誌情報