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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科70巻11号

2015年10月発行

雑誌目次

増刊号 消化器・一般外科手術のPearls&Tips—ワンランク上の手術を達成する技と知恵

著者: 宮崎勝

ページ範囲:P.3 - P.3

 本特集“消化器・一般外科手術のPearls & Tips—ワンランク上の手術を達成するための技と知恵”では,外科専門医研修をほぼ終え,外科専門医取得後のセカンドステップの外科医に向けて,ワンステップ上のレベルの消化器および一般外科手術を手際よく巧くこなすための手術のコツを,その道のエクスパート達にわかりやすく解説してもらっている.外科手術というのは手術術式が同じでも,その難易度は症例によりまったく異なってくることは,本特集を手にしている外科医の先生方はすでによくご承知のことと思う.また,同一の手術術式をいくらこなしても,自分自身では無難に手術を行うことができたと思っていても,まだまだその先にはより質の高い外科手術があるものである.本特集では各術式において,自分自身が何とかこなしうると思っている一歩先の困難な症例に対してどのような戦略で立ち向かっていけばよいか,そのポイントと手技上の秘訣について,多数の困難例を経験し尽くしたエクスパートらが真の要点を見事に明快に述べてくれている.外科手術を研修し始めた頃には見えてこなかった外科手術を行う際のポイントが,まさに“目からうろこが落ちる”ように解説されていることに読者は気づくであろう.もしここに述べられている“Pearls & Tips”の意味が十分理解されないようであれば,その読者はまだこのセカンドステップ以前の修練が十分でないと言えよう.
 外科手術において困難な,あるいは手技的に難解な症例に遭遇するということは,若い外科医にとって良い意味での試金石であり,その困難性,難解性のもつところを十分認識することで,外科医としてさらなるステップアップができるものである.また,術前にこれから行う手術の難易度を十分予測していくことで,その手術経験がさらに活きてくるのである.そこには外科手術の知恵が蓄えられていくものであり,その知恵が多ければ多いほど,外科医としての真の能力がグレードアップし,成長していくものである.質の高い外科手術を行うためには単なる技量,いわゆるskill-upをめざすだけではだめであり,さまざまな症例ごとにバリエーションの多い実臨床では,skillとともに術前・術中・術後を含め,外科医としての的確かつ精緻な判断を行いうるための知識と知恵が必要となってくるのである.

①食道

頸部食道癌手術

著者: 中島康晃 ,   川田研郎 ,   東海林裕 ,   千葉哲磨 ,   宮脇豊 ,   星野明弘 ,   岡田卓也 ,   太田俊介 ,   了徳寺大郎 ,   藤原直人 ,   齋藤賢将 ,   藤原尚志 ,   小郷泰一 ,   久米雄一郎 ,   奥田将史 ,   松井俊大 ,   河野辰幸

ページ範囲:P.6 - P.11

バリエーションと留意点
 食道原発巣口側進展範囲,気管浸潤に伴うバリエーション:喉頭温存手術か,下咽頭喉頭合併切除か
 食道原発巣肛門側進展範囲に伴うバリエーション:頸部食道切除か,食道全摘か

胸部食道癌手術

著者: 宗田真 ,   酒井真 ,   宮崎達也 ,   桑野博行

ページ範囲:P.12 - P.16

 食道癌の外科治療においては手術手技や麻酔法,輸液法,栄養法および呼吸器管理法などの周術期管理の進歩に伴い,手術成績が著しく向上している.また,食道癌根治における手術療法の役割は,安全で質の高い局所制御に尽きる.補助療法が進歩しても,局所制御能の劣る手術療法では意味がなく,安全性の許す限り質の高い郭清が必要である.
 しかしながら,稀に解剖学的変異を有する場合があり,これを把握していなかったために手術のqualityが下がったり,血管や神経損傷による合併症が患者の生命予後を脅かす可能性があることから,こういった食道癌手術時に留意すべき変異については十分理解しておくことが大切である.

胸部下部食道癌手術

著者: 村上健太郎

ページ範囲:P.17 - P.21

 本稿では「胸部下部食道癌」を対象とする.胸腔鏡下手術に関しては別項に譲り,本項では開胸開腹手術手技を中心に述べていく.

胸腔鏡下左側臥位食道癌手術

著者: 村上雅彦 ,   大塚耕司 ,   五藤哲 ,   有吉朋丈 ,   山下剛史 ,   伊達博三 ,   茂木健太郎 ,   加藤礼 ,   広本昌裕 ,   斉藤祥 ,   青木武士

ページ範囲:P.22 - P.28

 当科では,1996年より食道癌根治術に対して,低侵襲性を追求した左側臥位胸腔鏡下完全鏡視下食道癌根治術を導入し,約750例に実施してきた1〜5).経験例に基づいた手術手技の留意点につき解説する.

胸腔鏡下腹臥位食道癌手術

著者: 小澤壯治 ,   小熊潤也 ,   数野曉人 ,   山碕康 ,   二宮大和 ,   谷田部健太郎

ページ範囲:P.29 - P.33

 食道癌の内視鏡手術は体壁破壊を最小にして手術侵襲の軽減を期待する手術であり,1992年にCuschieriら1)が最初に報告して以来,世界中に普及した.日本胸部外科学会の学術調査によると,内視鏡手術の割合は年々増加し,2012年には表在癌49%,進行癌28%,全体では33%にまでなった2).患者体位は1990年代には左側臥位が主流であった.手術手順の観点から,開胸手術からの移行が容易で,小開胸も併用することにより鉗子や器具の動作制限を少しでも軽減し,また緊急時に通常開胸操作に移行しやすいなどの利点があった.しかし,2006年にPalaniveluら3)が腹臥位手術を報告すると,わが国でも徐々に腹臥位を採用する施設が増加した.体位と気胸併用のため,術中の出血や滲出液が手術野である後縦隔に貯留しにくく,また鉗子などによる肺の圧排操作が不要であり,さらに術者は脇を開けずに両腕を保持したまま手術操作が可能,すなわち術者にとって人間工学的に優れた体位であるなどが利点である.
 当教室では2009年9月〜2015年5月に200症例以上に本手術を施行してきた.手術適応は,概念として腫瘍学的リスクが低いこと,外科的リスクが低いことを考慮し,胸腔鏡下手術では胸膜癒着が高度でない症例,深達度T1b〜T3の症例,術前化学放射線療法(50 Gy以上)を受けていない症例としている.本稿では,東海大学式の腹臥位胸腔鏡下食道癌手術の手技について解説する.

食道アカラシア手術

著者: 片田夏也 ,   森谷宏光 ,   山下継史 ,   三重野浩朗 ,   細田桂 ,   菊池史郎 ,   渡邊昌彦

ページ範囲:P.34 - P.40

バリエーションと留意点
 術前の食道造影で拡張型が直線型(St)であるかシグモイド型(Sg)であるかにより,食道の縦隔側への剝離範囲が異なる.
 筋層切開に際し,筋層が比較的厚い症例と薄い症例がある.筋層が厚い症例では食道側で食道粘膜と筋層の間の層に入る際,少しずつ層を確かめながら剝離を進める.胃側の筋層切開では筋層を両手の鉗子で引き合い,筋肉を引き裂くようにすると良い場合もある.

腹腔鏡下GERDおよび食道裂孔ヘルニア手術

著者: 中島政信 ,   百目木泰 ,   高橋雅一 ,   室井大人 ,   菊池真維子 ,   加藤広行

ページ範囲:P.41 - P.45

バリエーションと留意点
 GERDの治療は生活習慣の改善から始まり,制酸剤などの投与による薬物治療がその中心をなしているが,薬物治療によっても症状の改善が得られない場合や,高度の食道裂孔ヘルニアを伴う場合には手術が考慮される1).GERDおよび食道裂孔ヘルニアの手術は,ほぼ似たような手術をすること多いが,その主体が逆流防止手術なのか,ヘルニアの修復なのか,あるいはその両者であるのかによって重点を置くポイントが異なる.
 ヘルニアがないか軽度の滑脱型ヘルニアが存在し,逆流症状の抑制が主目的の場合,縦隔内での食道の剝離よりも,逆流防止機構の再建の方法が重要である.

②食道胃接合部

経裂孔的食道胃接合部癌根治術

著者: 黒川幸典 ,   瀧口修司 ,   森正樹 ,   土岐祐一郎

ページ範囲:P.47 - P.52

バリエーションと留意点
 食道胃接合部癌のリンパ節転移頻度は高く,縦隔側と腹側の両方向のリンパ流が存在しているため,縦隔リンパ節と腹腔内リンパ節の双方を郭清しなくてはならない.腹腔内リンパ節を郭清するためには胃全摘もしくは噴門側胃切除が通常行われるが,これらの術式の詳細については他稿をご覧いただきたい.縦隔リンパ節を郭清するために用いられるアプローチ法としては,右開胸アプローチ,左開胸アプローチ,経裂孔アプローチの3種類あるが,本邦で実施されたランダム化比較試験によって左開胸アプローチの意義は否定されたため1,2),現在では右開胸アプローチと経裂孔アプローチの2種類が通常用いられる.右開胸アプローチは通常の食道癌に対する根治術と同様であるため,本稿では経裂孔アプローチでの術式について解説する.
 経裂孔的な下部食道切除を行う際に想定されるバリエーションと留意点としては,特に以下の3点が挙げられる.

③胃

幽門側胃切除術

著者: 小寺泰弘

ページ範囲:P.53 - P.58

バリエーションと留意点
 腹腔鏡下アプローチ
 cStage Ⅰであれば日常診療における選択肢であり,推奨しうるアプローチである.cStage Ⅱ以上では開腹手術が標準治療となる.

胃全摘術

著者: 深川剛生

ページ範囲:P.59 - P.63

バリエーションと留意点
 脾摘について
 胃上部に存在する進行胃癌に対する標準術式は,かつては膵尾部切除・脾摘であったが,その後,膵温存・脾摘術式が標準となり,脾摘の有無を問う無作為比較試験(JCOG0110)が行われた.

噴門側胃切除術

著者: 山下裕玄 ,   瀬戸泰之

ページ範囲:P.64 - P.68

バリエーションと留意点
 食道切離線が横隔膜脚よりも縦隔側の胸部下部食道の場合,食道との吻合部が吸気時に陰圧になりやすく,逆流対策が必須である.
 食道切離線が横隔膜脚よりも胃側の腹部食道の場合,吻合部が腹腔側となるために食道胃吻合でも構わない.

腹腔鏡下幽門保存胃切除術

著者: 速水克 ,   布部創也 ,   清川貴志 ,   辻浦誠浩 ,   古川陽菜 ,   熊谷厚志 ,   大橋学 ,   比企直樹

ページ範囲:P.69 - P.74

バリエーションと留意点
 幽門保存胃切除術(PPG)の適応となる早期胃癌に対しては,当院では積極的に腹腔鏡下手術を行っている.
 術後stasis予防のため,幽門下動脈だけでなく幽門下静脈を温存する.

④十二指腸・小腸

十二指腸腫瘍に対する手術

著者: 江坂和大 ,   神田光郎 ,   中尾昭公 ,   小寺泰弘

ページ範囲:P.75 - P.79

バリエーションと留意点
 原発性十二指腸腫瘍には,十二指腸癌,消化管間質腫瘍(GIST),神経内分泌腫瘍(NET)などがある.
 腫瘍の局在に加え,腫瘍学的特性(悪性度)に基づいたリンパ節郭清の必要性を考慮して術式を決定する必要がある.

小腸腫瘍に対する手術

著者: 山野智基 ,   野田雅史 ,   塚本潔 ,   吉村美衣 ,   濵中美千子 ,   馬場谷彰仁 ,   松原長秀 ,   冨田尚裕

ページ範囲:P.80 - P.84

 小腸腫瘍は十二指腸〜空腸〜回腸に発生する腫瘍であり,これらを含めて論じられることが多い.しかしながら,小腸腫瘍の診断法や術式は十二指腸と空腸・回腸では大きく異なるため,本稿では十二指腸腫瘍と,空腸〜回腸までの小腸腫瘍に分け,本稿ではこの分類による小腸腫瘍について述べる.

クローン病の小腸・十二指腸病変に対する手術

著者: 中山吾郎

ページ範囲:P.85 - P.90

 クローン病(Crohn's disease)は,小腸・大腸を中心とした消化管全域に発生しうる炎症性腸疾患であり,難治性の狭窄や瘻孔を生じる難病である.人口対10万人の有病率は約27人であり,2013(平成25)年度医療受給者証交付件数は39,799人で年々増加傾向にある1)
 外科的治療によりクローン病が治癒することはなく,その役割はあくまで対症的である.すなわち,内科的治療でコントロールができない消化管の狭窄,瘻孔,膿瘍形成などに対して腸管切除などを行うことでQOLに影響を及ぼす病変を「リセット」し,寛解維持のための内科的治療へ橋渡しすることが外科的治療の目的である.

⑤結腸

腹腔鏡下虫垂切除術

著者: 石田文生 ,   日高英二 ,   澤田成彦 ,   向井俊平 ,   前田知世 ,   島田麻里 ,   和田尚人 ,   大竹由美子 ,   工藤進英

ページ範囲:P.91 - P.98

 開腹による急性虫垂炎手術すなわち虫垂切除術は多くの消化器外科医が初めて執刀医として経験する手術であることが“常識”であるが,一方で,術中に様々なバリエーションが生じて新人を苦しめてきたことは多くの外科医が認めるところであろう.腹腔鏡下虫垂切除術(以下,LA)について必ずしも同じ状況ではないにしろ,術中の所見によって様々な操作のバリエーションが要求される.したがって研修医も指導医も,バリエーションに対応した解決手段を習得あるいは確認しておきたい.これらについて項目を挙げてまとめた.対象疾患は急性虫垂炎を前提として本稿を進める.

腹腔鏡下右半結腸切除術

著者: 加藤健志 ,   賀川義規

ページ範囲:P.99 - P.105

バリエーションと留意点
 十二指腸は損傷すると重篤な合併症に至るが,解剖学的バリエーションが少なく,本術式において最も重要な目印となる.
 上行結腸と大網,大網と肝胆道系は生理的に癒着することが多く,肝彎曲部の位置を誤認する可能性がある.

腹腔鏡下横行結腸切除術

著者: 奥田準二 ,   田中慶太朗 ,   近藤圭策 ,   山本誠士 ,   細野俊介 ,   鱒渕真介 ,   内山和久

ページ範囲:P.106 - P.113

 本稿では,横行結腸切除のなかでも難易度の高い横行結腸中央から左側の進行癌に対する腹腔鏡下結腸左半切除術(D3郭清)について,手術手技の要点を述べる.

腹腔鏡下下行結腸切除術

著者: 福永正氣 ,   福永哲 ,   李慶文 ,   吉川征一郎 ,   永仮邦彦 ,   勝野剛太郎 ,   大内昌和 ,   平崎憲範 ,   東大輔 ,   小浜信太郎 ,   野本潤

ページ範囲:P.114 - P.119

 下行結腸癌に対する腹腔鏡手術(LAP)では,下腸間膜動脈(IMA)領域の中枢側リンパ節郭清における繊細な操作と左結腸曲の広範な剝離・授動操作が必要で,さらに上腸間膜動脈(SMA)領域のリンパ節郭清操作が必要な場合があるために手技的に難度が高い1〜3).この部位のLAPを安全に遂行するための要点とコツを概説する.

腹腔鏡下S状結腸切除術

著者: 白下英史 ,   衛藤剛 ,   猪股雅史 ,   白石憲男 ,   北野正剛

ページ範囲:P.120 - P.125

 大腸悪性腫瘍に対する腹腔鏡下手術はわが国で年間2万例以上に行われており,なかでも腹腔鏡下S状結腸切除術は年間4千例以上で最も頻度が高い術式である1).また,日本内視鏡外科学会の技術認定制度で大腸領域の対象術式となる基本的な術式である.しかしながら,患者の体型や解剖学的特性,腫瘍の位置によりいろいろなバリエーションが生じうる術式でもある.本稿では,腹腔鏡下S状結腸切除術において生じうるバリエーションとその対応法について解説する.

⑥直腸

腹腔鏡下低位前方切除術

著者: 清松知充 ,   石原聡一郎 ,   渡邉聡明

ページ範囲:P.126 - P.133

バリエーションと留意点
 左結腸動脈(LCA)を温存した上方向郭清における血管走行variationとその処理.
 中直腸動脈(MRA)の走行variationに留意したTotal mesorectal excision(TME).

腹腔鏡下直腸切断術

著者: 山岡雄祐 ,   絹笠祐介 ,   賀川弘康 ,   塩見明生 ,   山口智弘 ,   山川雄士 ,   沼田正勝 ,   村田飛鳥

ページ範囲:P.134 - P.138

バリエーションと留意点
 直腸癌の手術では,癌の根治性と機能温存を両立させることが重要である.
 温存すべき自律神経と直腸周囲の膜構造の理解が必要である.

腹腔鏡下ISR

著者: 福井雄大 ,   黒柳洋弥 ,   的場周一郎 ,   森山仁 ,   戸田重夫 ,   花岡裕 ,   富沢賢治 ,   建智博

ページ範囲:P.139 - P.145

 従来,肛門に近い下部直腸癌に対してはその進行度にかかわらず,腹会陰式直腸切断術(APR)が行われてきたが,1994年にSchiesselら1)により内括約筋を切除し結腸肛門吻合をするISR(intersphincteric resection)が報告され,肛門に近い癌に対してsurgical marginの確保が可能となり,肛門温存の適応が広がった.
 直腸癌に対する腹腔鏡下手術は大腸癌治療ガイドライン2)において標準治療としての位置づけではないものの,開腹手術と比較し狭い骨盤内でも良好な視野を確保でき,また拡大視効果により正しい剝離層での手術が可能になるため,当院では積極的に腹腔鏡下手術を行っている.

⑦肝切除術

開腹肝葉切除

著者: 有泉俊一 ,   片桐聡 ,   山本雅一

ページ範囲:P.146 - P.151

バリエーションと留意点
 肝門部脈管処理
 肝癌に対する肝葉切除(片肝切除)は,肝門部で脈管処理を行う.脈管処理には,3つのバリエーション(intra-fascial access,extra-fascial access,fissural access)がある1〜3)

開腹区域切除

著者: 杉岡篤 ,   加藤悠太郎 ,   香川幹 ,   竹浦千夏 ,   辻昭一郎 ,   所隆昌 ,   棚橋義直

ページ範囲:P.152 - P.164

Glisson鞘に対するアプローチ法のバリエーション
 肝区域切除は,葉切除と同様に概念としては確立された肝切除術式であるが,その手技はいまだ標準化されているとは言いがたい.その理由は,肝区域切除を行ううえで必須の手技であるGlisson鞘一括処理や主肝静脈剝離・露出の手技が標準化されていないためである.
 Couinaudは,Glisson鞘に対するアプローチ法として,「鞘内到達法(intrafascial approach)」「鞘外到達法(extrafascial approach)」「鞘外および裂開放法(extrafascial and transfissural approach)」を提唱した1).「鞘内到達法」はいわゆる脈管個別処理法のことであり,「鞘外到達法」がGlisson鞘一括確保法である.「鞘外および裂開放法」とは,主門脈裂あるいは左門脈裂に沿った比較的大きな肝実質切離を先行したうえでGlisson鞘を一括確保する方法である.「鞘外到達法」は,さらに肝実質破壊を伴う肝内法と,伴わない肝外法に分けられ,「鞘外および裂開放法」は肝内法に含まれる.

開腹系統的亜区域切除

著者: 山本訓史 ,   長谷川潔 ,   國土典宏

ページ範囲:P.165 - P.168

 Couinaudの分類では肝臓を9 segment(区域)に分類しており1),それをもとに原発性肝癌取扱い規約2)では8 segment(亜区域)と定義している.そのため,本邦ではCouinaudの区域切除を亜区域切除と呼び,本稿でもそれに従って解説する(図1).

腹腔鏡下肝外側区域切除,部分切除

著者: 伴大輔 ,   伊藤浩光 ,   光法雄介 ,   松村聡 ,   藍原有弘 ,   落合高徳 ,   工藤篤 ,   田中真二 ,   田邉稔

ページ範囲:P.169 - P.177

バリエーションと留意点
 腹腔鏡下肝外側区域切除は,腹腔鏡下肝切除のなかで最も定型化された術式である.しかし,ステイプラーの一括離断は肝臓の厚さの影響を受ける.
 腹腔鏡下肝部分切除はきわめて多様な術式である.切除する腫瘍の大きさ,占拠部位によって体位,ポート位置などの工夫を要する.

腹腔鏡下肝葉切除,区域切除(外側区域切除以外)

著者: 中村和徳 ,   峯田章 ,   坂本承 ,   水谷知央 ,   若林剛

ページ範囲:P.178 - P.184

 腹腔鏡下肝切除術(部分切除,外側区域切除)は,2010年の保険収載を契機に,徐々に普及してきている.2014年10月に岩手県盛岡市で開催された第2回腹腔鏡下肝切除術国際コンセンサス会議では,腹腔鏡下肝切除(部分切除と外側区域切除:minor hepatectomy)は標準治療の1つとされ,術後合併症や入院期間は開腹肝切除術よりも優れるなど,腹腔鏡下肝切除の現状と今後の方向性が示された1).一方,昨今のマスコミ報道によると,無理な適応拡大が不幸な結果に繋がる可能性もあり,手技の習得にあわせ段階的で慎重な適応拡大が必須と思われる.本稿で扱う腹腔鏡下肝切除(区域切除や肝葉切除:major hepatectomy)は現時点で保険未収載であり,倫理委員会での承認や肝臓内視鏡外科研究会によるオンライン症例登録の重要性を強調したい2)
 また,最初に知っておきたいこととして,腹腔鏡下肝切除の利点3)には,尾側からアプローチできること(図1),流入血管の遮断と気腹圧による肝静脈系出血の軽減により,無血術野で肝離断ができることなどがある(図2).肝臓外科の基本は,肝内の脈管を確実に露出して処理することであり,無血術野が望ましい.また腹腔鏡下肝切除では,体位により肝静脈圧を下げ,出血を軽減することもできる(図3).したがって,ワンランク上の腹腔鏡下肝切除をマスターすれば,より質の高い肝切除を行えるようになる.本稿に記載された術式が広く安全に行われるようになり,患者に優しい腹腔鏡下肝切除が肝切除の主流になることを願っている.

⑧胆道

胆道癌に対する拡大肝右葉+胆管切除

著者: 島田和明 ,   江崎稔 ,   岸庸二 ,   奈良聡

ページ範囲:P.185 - P.192

 近年,尾状葉を含む肝門部領域の外科解剖の理解と,周術期管理の向上により,拡大肝右葉+肝外胆管切除の安全性は向上した.肝門部胆管癌,肝門浸潤を伴う肝内胆管細胞癌,右肝動脈に浸潤する胆囊癌に対する標準術式となっている1,2).症例ごとに脈管走行のバリエーションがあり,術前に予想していた外科解剖が術中に的確に認識できない場合もあり,依然難易度の高い手術といえる3)

胆道癌に対する肝左葉+胆管切除

著者: 上坂克彦 ,   杉浦禎一 ,   岡村行泰 ,   伊藤貴明 ,   山本有祐 ,   蘆田良 ,   絹笠祐介 ,   坂東悦郎 ,   寺島雅典

ページ範囲:P.193 - P.197

 肝左葉・尾状葉切除,肝外胆管切除は,肝門部領域胆管癌の標準術式の1つであり,主にBismuth type Ⅲb1)の肝門部領域胆管癌が適応となる.本術式の手順はほぼ定型化されている2)が,門脈,肝動脈,胆管のそれぞれの分岐様式には個人差が大きく,なかには特別に注意を要する解剖学的バリエーションも存在する.本稿では,肝左葉・尾状葉切除,肝外胆管切除の手順と,注意すべき解剖学的バリエーションについて概説したい.

胆囊癌に対する肝中央下+胆管切除

著者: 松山隆生 ,   森隆太郎 ,   遠藤格

ページ範囲:P.198 - P.203

バリエーションと留意点
 癌の転移が大動脈周囲リンパ節で陽性の場合には非切除としている.
 腫瘍が膵頭十二指腸部へ直接浸潤する場合やリンパ節転移が膵実質へ節外浸潤している場合には膵頭十二指腸切除術(PD)を併施する.

胆管切除+胆管空腸吻合

著者: 中川圭 ,   大塚英郎 ,   森川孝則 ,   元井冬彦 ,   内藤剛 ,   海野倫明

ページ範囲:P.204 - P.209

バリエーションと留意点
 肝十二指腸間膜内から肝門部にかけての動脈・門脈・胆管の走行は,まさしく多種多様である1〜3).胆管切除術の施行時においても下記の点を中心として留意が必要である.

胆道癌に対する肝右三区域+胆管切除

著者: 水野隆史 ,   江畑智希 ,   梛野正人

ページ範囲:P.210 - P.216

バリエーションと留意点
 左肝動脈外側区域枝(A2+3)には走行上の変異(バリエーション)が多いため,術前画像での詳細な評価が重要である.特に,A2+3が左肝動脈内側区域枝(A4)と共通して門脈臍部右側より流入する場合や,門脈臍部左側より流入しA4の枝を分枝する場合では,温存されるべきA2+3を損傷しないよう,慎重な動脈の剝離・結紮が必要である.
 左外側区域胆管の枝が門脈臍部尾側(肝下面側からみて門脈臍部の手前側)を走行する解剖学的変異が存在しており(infraportal bile duct),かかる症例では門脈臍部頭側を走行するその他の左外側区域胆管枝と2孔で胆道再建を行う必要がある.

胆道癌に対する肝左三区域+胆管切除

著者: 加藤厚 ,   清水宏明 ,   大塚将之 ,   吉富秀幸 ,   古川勝規 ,   高屋敷吏 ,   久保木知 ,   高野重紹 ,   鈴木大亮 ,   酒井望 ,   賀川真吾 ,   宮崎勝

ページ範囲:P.217 - P.224

バリエーションと留意点
 右後区域胆管の合流形態は,手術術式の選択の際に重要であり,胆管切離の際の手術操作においても注意を要する.
 右後区域肝動脈の走行経路は多岐にわたるため,手術前の画像により走行を確認することが重要である.

⑨膵臓

膵頭十二指腸切除(門脈合併切除を含む)

著者: 尭天一亨 ,   水野修吾 ,   出崎良輔 ,   種村彰洋 ,   栗山直久 ,   安積良紀 ,   伊佐地秀司

ページ範囲:P.225 - P.233

 膵頭十二指腸切除術(PD)は,1935年にWhippleらが報告して以来,様々なアプローチ方法,血管合併切除・再建法,消化管再建方法などの改良を加えながら確立されてきた.しかしながら,術後合併症発生率は40%(特にGrade B,Cの膵液瘻の発生率は13.2%),術後30日以内の死亡率は1.2%,入院死亡率は2.8%と,他の消化器外科手術と比較していずれも高いのが現状である1).特に,局所進行膵癌では,血管合併切除を伴った拡大手術が必要となることが多いが,血管走行や癌の進展範囲によっては,術者の多彩な経験や高い技術が要求される.また,PD特有の合併症として膵液瘻が挙げられるが,それを回避すべく各施設で様々な取り組みが行われている.
 本稿では,PDにおける血管処理,膵空腸吻合におけるバリエーションをいくつか提示し,標準術式とともにその対策について解説する.

尾側膵切除

著者: 平野聡 ,   岡村圭祐 ,   土川貴裕 ,   中村透 ,   田本英司 ,   野路武寛 ,   中西喜嗣 ,   七戸俊明

ページ範囲:P.234 - P.240

バリエーションと留意点
 膵体尾部癌に対する尾側膵切除術では,局所進展の様式から以下のバリエーションが存在する.

膵中央切除

著者: 山田豪 ,   藤井努 ,   小寺泰弘

ページ範囲:P.241 - P.245

 膵中央切除は,病変が膵頸部や膵体部を主座とする場合に膵中央部を切除し,頭側および尾側膵を温存する術式である.一般的に,定型的な膵頭十二指腸切除や膵体尾部切除と比較して,術後膵内外分泌機能が良好に温存される術式と報告されている1)
 一方,膵切離面が頭側と尾側の2か所となるため,頭側膵においては断端処理,尾側膵においては膵消化管吻合による再建が必要となる.したがって,膵瘻などの合併症が発生するリスクが高く,術中だけでなく術後管理においても,十分な配慮が求められる術式でもある.

慢性膵炎に対するFrey手術

著者: 村瀬貴昭 ,   竹山宜典

ページ範囲:P.246 - P.250

バリエーションと留意点
 時として遭遇する以下の場合について,後述の「症例特性に応じた手術を行うためのポイント」で詳記する.

膵全摘術

著者: 川井学 ,   山上裕機

ページ範囲:P.251 - P.259

バリエーションと留意点
 膵全摘術(total pancreatectomy:TP)は膵臓全域にわたる膵癌あるいは主膵管上皮内進展を示す主膵管型膵管内乳頭粘液腫瘍(IPMN),神経内分泌腫瘍,転移性膵癌の膵臓全体への多発転移症例に対して行われる1).しかし,対象疾患によって切除範囲や郭清範囲が大きく異なる.

⑩脾臓

開腹・腹腔鏡下脾摘術

著者: 河地茂行 ,   千葉斉一 ,   高野公徳

ページ範囲:P.260 - P.265

 脾臓摘出術(脾摘術)の適応は様々であり,特発性血小板減少性紫斑病(ITP)のような良性疾患から,悪性リンパ腫などの悪性疾患,肝硬変に伴う脾腫,ABO血液型不適合移植における免疫制御のための脾摘など多岐に及んでいる(表1).脾摘術自体は再建を伴わない手術であり,難易度が高い手術とは一般的に考えられていないが,肝硬変などの門脈圧亢進症に伴う巨脾症例などは,視野の展開が難しいうえに,脾腎シャントなどの側副血行路が背側に存在しており,難易度の高い手術となる.
 本稿では一般的な脾摘術の手技(開腹・腹腔鏡下)を概説し,その後にワンランク難易度の高い脾摘術に対する手技的な工夫を解説する.

⑪ヘルニア

鼠径ヘルニア・大腿ヘルニア修復術〈前方アプローチ法〉

著者: 野村務 ,   松谷毅 ,   萩原信敏 ,   内田英二

ページ範囲:P.266 - P.271

 成人の鼠径・大腿ヘルニアに対する前方アプローチ法には,従来法,tension free法を含めてさまざまな術式がある.鼠径ヘルニアに対しては基本的にはtension free法であれば,どの術式を選択しても問題ない.本稿では,これらのうち当施設で主に行っているLichtenstein法,direct Kugel法について述べるとともに,個々の症例によって生じるシチュエーションに対して筆者らがどのように対応しているかを解説する.また,大腿ヘルニア手術に関しても同様に述べる.

鼠径ヘルニア修復術〈腹腔鏡手術〉—TAPP手技のコツ

著者: 徳村弘実 ,   野村良平 ,   西條文人

ページ範囲:P.272 - P.278

バリエーションと留意点
 腹腔鏡下ヘルニア手術は,鼠径部切開法と比べ利点が多い1〜5).本稿では経腹的腹膜前鼠径ヘルニア修復術(TAPP)について述べる.しかし,TAPPにバリエーションが多く手技的に容易でないものが少なくない.具体的には以下などが挙げられる.

閉鎖孔ヘルニア修復術〈腹腔鏡手術を中心に〉

著者: 谷島雄一郎 ,   兼平卓 ,   柏木秀幸 ,   矢永勝彦

ページ範囲:P.279 - P.283

 閉鎖孔ヘルニアは高齢で痩せ型の女性に多く発症する比較的稀な疾患である.文献的には全鼠径部ヘルニアのうち約0.073%1)の頻度とされているが,最近は画像診断の発達により比較的容易に診断を得ることが可能となってきた.そのため,来院時に腸管が嵌頓していても,還納後に待機手術に臨むことも最近は少なくない.
 本稿では,閉鎖孔ヘルニアに対する手術法の解説と症例に応じた手術法の選択を解説する.

⑫肛門

痔核根治術

著者: 岡本欣也 ,   岩垂純一

ページ範囲:P.284 - P.293

 痔核は肛門疾患の約半数を占める最も頻度の高い疾患で,手術となる症例も一番多い.痔核手術の基本は結紮切除術であり,すべての痔核に対して応用がきく基本術式であるため,必ず習得すべきである.本稿では結紮切除術の標準的な手術の手順を踏まえるとともに,要所,要所での様々なバリエーション,それに対する対処法を示した.

痔瘻根治術

著者: 松田好雄 ,   松田大助 ,   大高京子 ,   大沢晃弘

ページ範囲:P.295 - P.306

 痔瘻の成因は,肛門小窩(anal crypt:以下,crypt)から侵入した細菌が内肛門括約筋周辺に存在する肛門腺に初期感染を起こし,炎症を惹起させるとするcrypt glandular infection theory1)が定説である.
 痔瘻は自然治癒することは稀なため,基本的には外科治療が必要である.根治のためにはcrypt,肛門腺および瘻管をすべて切除する必要がある.

⑬末梢血管

下肢静脈瘤手術

著者: 成田裕司 ,   古森公浩

ページ範囲:P.307 - P.309

 下肢静脈瘤治療は,以前はストリッピング手術が主流であったが,レーザー焼灼術,ラジオ波焼灼術が保険承認され,日本でも普及している.本稿では下肢静脈瘤の治療の現況について解説する.

1200字通信・84

手術の神様

著者: 板野聡

ページ範囲:P.46 - P.46

 外科医であれば手術を行い,その成功を謙虚に祈ることは,かのパレ先生の言葉を持ち出すまでもなく当然のことですが,手術が予想以上に上手くいったときなど,これ以上の手術はないなどと不遜な気持ちになることがありました.そして,得てしてそういうときに限って起こるはずがない(と思っていた)トラブルが発生し,慌てることになるものです.
 以前,ラパ胆で癒着の激しいカローの三角部をなんとか処理し,意気揚々と肝床部の切離を進めていたとき,肝臓から直接入る動脈に気付かず切断してしまい,一瞬にして画面が真っ赤になり視野を失ったことがありました.吸引と洗浄を繰り返して止血に成功し,無事手術を終えはしましたが,気を緩めるなと誰かに叱られたような気がしたものでした.

ひとやすみ・130

手術室での語録

著者: 中川国利

ページ範囲:P.151 - P.151

 28年間外科医として勤めた病院を辞める際に,手術室スタッフから特製の湯呑みを頂いた.そこには手術室での私の語録が列記されている.
 左手が死んでるぞ:人は利き腕である右手の動きにだけ集中し,左手が遊んでいることが多い.上手い術者の手術では右手が主要なる動きをするが,左手も右手と連動して視野展開などの重要な役を担っている.

昨日の患者

人を引き付ける魅力

著者: 中川国利

ページ範囲:P.278 - P.278

 人を引き付ける魅力としては,豊かな知識と経験,そして人徳とされている.中でも人徳が重要で,その人の為なら損得を超えて尽くしたいと思う人がいるものである.
 赤十字血液センターに異動し,少子高齢社会に伴う献血者減少に直面している.そこで私が献血推進に苦労していることを知った元受け持ち患者のNさんが,自分の永らく培った人脈を紹介してくれることになった.

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原稿募集 私の工夫—手術・処置・手順

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出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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